船乗りクプクプの冒険

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船乗りクプクプの冒険』(ふなのりクプクプのぼうけん)は、北杜夫1962年に発表した最初の児童向け小説。主人公の男児が小説の中の世界に入り込んでしまい、主人公である「クプクプ」となって船に乗り、仲間たちと奇想天外で様々な冒険を繰り広げる。

「クプクプ」とは、マダガスカルの言葉で、「蝶々」を意味する。彼の船医としての体験[1]をもとにしたと思われる描写が随所に見られる。

あらすじ[編集]

嫌々ながら宿題をしていた勉強嫌いの主人公、タロー君がふと手に取ったキタ・モリオ作の小説「船乗りクプクプ」という本は、作者がとんでもない怠け者だったため、本文・まえがき・あとがきを含めて4ページしか書かれていないインチキ本だった。ところが、タローはいきなりこの本の中に吸い込まれてしまい、気が付くとアラブの原住民の子供のような、主人公のクプクプになっていた。わけが分からないまま、大男で一見怖そうだが気は優しくて力持ちのヌボーに出会って小さな帆船の給仕として乗船し、旅に出る。意地悪だが本当は気の小さい船員のナンジャとモンジャ、パイプ好きで気難しい老船長など個性豊かな仲間たち。意地悪をされて落ち込むクプクプに、ヌボーはさりげなく助け船を出し、人生を説いたりする。

そうして旅を続け、タローはクプクプとしての生き方にも慣れてきた。ところが、ある島に上陸した時、現地人が書きかけの原稿用紙を持っているのを見つける。それは『船乗りクプクプ』のもので、キタ・モリオ氏の書き残しだった。キタ・モリオ氏が冒頭部分しか書かなかったため本が売れず大損をした出版社の編集者が、キタ・モリオ氏をひどい目にあわせてやろうと追いかけて来るので、彼は自分の小説の世界にまで逃げ込んでいたのである。タローが元の世界に戻るには、原作者を探し出して物語の続きを書いてもらえばいいのだ。この広い世界でそんな事が出来るだろうかと不安になりながらも、クプクプは新たな船旅に出る。

また別の島に上陸したクプクプたちは、凶暴な原住民に襲われて、仲間たちは捕らえられたが、クプクプとナンジャとモンジャがかろうじて助かって、うまい具合にキタ・モリオ氏に出会う事ができた。キタ・モリオ氏は空威張りして、文化の低い原住民など手品を見せて脅かしてやると言うが、逆に原住民の奇術師のすごい技で手玉に取られ、全員捕まってしまった。原住民は、文化が低いどころか最高度の文明を築いていたのだ。このままでは食べられてしまう。クプクプたちは何とか逃げ出そうとするが、ことごとく失敗、ついに最後かと観念した時、原住民らは皆を解放し、自分たちが大自然と平和を愛する友好的な種族であることを明らかにする。凶暴そうに見えたのは、裸の原住民と見れば程度の低い人間だと勝手に思い込む差別的な人々をこらしめるための芝居だった。

親切な原住民に囲まれていささかの安堵感を取り戻したクプクプは、元のタローに戻るためキタ・モリオ氏に原稿の続きを書いてくれるよう頼む。やっと重い腰を上げてキタ・モリオ氏が書きだしたとたん、彼を追いかけて来た鬼より怖い編集者が現われる。キタ・モリオ氏はモーターボートに乗って逃げ出してしまった。せっかくの機会を逃したクプクプだが、すっかり海の冒険に慣れ親しみ、キタ・モリオ氏を追いかける新たな船の旅に希望を膨らませて進む。

解説[編集]

全体としてはユーモア小説の形を取り、読者を笑わせながら、さりげなく文明批判や人間のあるべき姿なども挿入されており、児童文学の名作として評価が高い作品である。

松岡洋子主演でミュージカル化された。

1982年には、NHK教育テレビジョンで「船乗りクプクプのぼうけん」のタイトルで全6回の人形劇として放送された[1]。 また、作家井上ひさしは、角川文庫版「船乗りクプクプの冒険」の解説の中で、NHKの連続人形劇ひょっこりひょうたん島」の初期のエピソードのいくつかは、この作品が原案になったと述べている。

参考資料[編集]

  • 船乗りクプクプの冒険 集英社文庫 1998年(第22刷)

脚注[編集]

  1. ^ 水産庁の調査船の船医として航海した経験により、1960年に『どくとるマンボウ航海記』を出版した。