秘抄金瓶梅

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秘抄金瓶梅
著者 山田風太郎
発行日 1959年
発行元 講談社
ジャンル 推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
前作 妖異金瓶梅
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秘抄金瓶梅』(ひしょうきんぺいばい)は、山田風太郎連作時代・伝奇推理小説。中国の「四大奇書」のうちの『金瓶梅』に題材をとりながら、オリジナルの物語で進む推理小説である[1]。『妖異金瓶梅』の続編である。

主な登場人物[編集]

西門慶(せいもん けい、さいもん けい)
清河県の生薬を商う裕福な商人。大勢の夫人や美少年らを屋敷に同居させている。
応伯爵(おう はくしゃく)
西門慶の友人で義兄弟の誓いを結んだ仲。本作の探偵役。
潘金蓮(はん きんれん)
西門慶の第五夫人で「金瓶梅」の「金」に相当。
龐春梅(ほう しゅんばい)
潘金蓮付の女中(小間使い)。「金瓶梅」の「梅」に相当。西門慶と妾の関係にある。
呉月娘(ご げつじょう)
西門慶の正夫人。元・第二夫人だったが正妻が死んで第一夫人になった。一家の取りまとめ役。
李嬌児(り きょうじ)
西門慶の第二夫人。元は廓(遊郭)の歌い手。
孟玉楼(もう ぎょくろう)
西門慶の第三夫人。呉服屋の未亡人だった。
孫雪娥(そん せつが)
西門慶の第四夫人。もとは龐春梅のような女中あがり。
劉麗華(りゅう れいか)
前作「妖異金瓶梅」の李瓶児(「金瓶梅」の「瓶」に相当)に替わり、第六夫人となった新顔。美しい瞳を持つ。
葛翠屏(かつ すいへい)
同じく、宋恵蓮に替わり、第七夫人となった新顔。
香楚雲(こう そうん)
同じく、 鳳素秋に替わり、第八夫人となった新顔。
来旺児(らい おうじ)
西門慶の屋敷の門番。
棋童(きどう)
西門慶が寵愛する美少年。
李桂姐(り けいそ)
西門慶が贔屓にしている歓楽街の廓(遊郭)の芸妓。
葉頭陀(よう とうだ)
西門慶が破滅させた恋敵の富豪。
ゾオラ姫(ぞあらひめ)
原作には出てこない。大食(アラビア)の姫君。金髪碧眼。
アル・ムタッツ(ある むたっつ)
ゾオラ姫についてきた僧侶。峻厳な性格。
武松(ぶ しょう) 
梁山泊の豪傑。魔星は天傷星。席次は14位。あだ名は「行者」。
武大(ぶ だい) 
武松の兄。
燕青(えん せい) 
原典には登場しない『水滸伝』の登場人物の豪傑。席次は36位、天巧星の生まれ変わり。弓の名手で絶世の美青年。
孫二娘(そん じじょう) 
原典には登場しない『水滸伝』の登場人物の男装の女豪傑。地壮星の生まれ変わり。あだ名は「母夜叉」。

内容[編集]

中国はの時代。清河県の生薬商・西門慶は、妻と7人の妾を同居させていた。その西門家で怪事件が連発し、西門慶の友人・応伯爵が前作『妖異金瓶梅』に続いて謎を解き明かしていく。

収録作品[編集]

  • 「妖瞳記」(初出:『別冊宝石』1954年11月号)
  • 「邪淫の烙印」(初出:『読切小説集』1956年5月号)
  • 「黒い乳房」(初出:『講談倶楽部』1957年4月号)
  • 「凍る歓喜仏」(初出:『講談倶楽部』1957年8月号)
  • 「女人大魔王」(初出:『講談倶楽部』1957年11月号)
  • 「蓮華往生」(初出:『講談倶楽部』1959年1月号)
  • 「死せる潘金蓮」(初出:『講談倶楽部』1959年4月号)
    • 番外「人魚燈籠」(初出:『読物娯楽版』1955年4月号)[2]

書誌情報[編集]

『秘抄金瓶梅』は1959年4月に講談社から単行本で出版。その後、東都書房の「山田風太郎の妖異小説」(1964年9月)などで出版され、桃源社の『妖異金瓶梅(全)』(1967年10月)以後の刊本からは『妖異金瓶梅』との合本となる[3]

  • 『妖異金瓶梅』角川書店角川文庫〉、1981年6月、ISBN 978-4-04-135628-9
  • 『妖異金瓶梅』廣済堂出版〈廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全〉、1996年5月、ISBN 978-4-331-60521-9
  • 『妖異金瓶梅』扶桑社〈扶桑社文庫・昭和ミステリ秘宝〉、2001年10月、ISBN 978-4-594-03264-7
  • 『妖異金瓶梅』角川書店〈角川文庫・山田風太郎ベストコレクション〉、2012年6月、ISBN 978-4-04-100343-5

脚注[編集]

  1. ^ 「四大奇書」は『金瓶梅』に替えて『紅楼夢』を入れる場合もある。
  2. ^ 「邪淫の烙印」の原型。前半はほぼ同じだが、後半はまったく違った展開になっている。
  3. ^ 「編者解題」『妖異金瓶梅』角川書店〈角川文庫〉、2012年、593-596頁。ISBN 978-4-04-100343-5