示談金

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示談金(じだんきん)とは、示談の際に加害者から被害者に支払われる「慰謝料」である。

示談[編集]

示談とは、和解の一種であり、双方間で事件が解決したことを確認する。示談の際には、一般的に「示談書」という契約書を結び、証拠とする。

示談が成立すると、軽犯罪など罪状によっては被害者が被害届を取り下げることで、警察検察は起訴を取りやめたり、裁判においても「和解」として扱われる場合もある。刑事裁判において示談成立がされているかは、裁判官裁判員の心証を左右するものであり、判決に大きな影響を与える。

損害賠償だけでなく、被害者感情や加害者の更生など「事件の真の解決」を考える場合に、示談の成立による解決は当事者双方にとっても、社会的にも望ましいものと言える。逆に、被害者側が刑事裁判での厳罰を望み、示談を拒否して示談金を受け取らず、民事裁判で損害賠償の請求がなされる場合も少なくない。

示談金[編集]

示談の際に、加害者から被害者に支払われるのが、示談金である。示談金は基本的に、示談成立と同時に支払いが行われるが、高額な場合には分割で支払う場合もある。

示談金は、実際に被害者が受けた損害を「賠償」することが基本であるが、多くの場合は迷惑をかけた謝罪としての「慰謝料」を加えた額となるのが通例である。被害の小さな軽犯罪であれば10~30万円程度であるが、入院が必要な暴行・性犯罪・交通事故などになると高額になる場合もある。

金額について
示談金は、双方が納得すれば、基本的にはいくらでも構わない。被害者が納得するならば0円でも構わないし、加害者が支払えるのであれば100万円~1000万円以上でも成立する。しかし、あまりに高額になれば、加害者側が支払えず示談が成立しないため、結果的に「相場」が罪状ごとに算出されることになる。
双方が合意で決める
被害者が加害者に対して、示談金の金額を提示することは法律上の問題はない。しかし、示談金の支払いを強要することは、恐喝になる場合があるため、注意が必要である。あくまで双方合意の上で、事件を解決し支払いをする必要がある。
加害者が示談金の支払いができない場合、金額に納得できず支払いを拒否した場合には、示談は不成立となる。示談成立後に、加害者が示談金を支払わなかった場合にも、契約内容にもよるが基本的に不履行になり、示談書は契約破棄となる。

示談金の意味[編集]

1. 損害賠償
基本的に示談の際には、最低限の「被害者の被った損害」を賠償する必要がある。物損であれば、その物の評価額(販売価格-減価償却)を賠償する必要がある。交通事故などで亡くなった場合には、その人が残りの人生で稼いだであろう賃金の合計を支払う必要がある。
2. 慰謝料
損害賠償以外にも、被害者が被った「精神的な被害」に対して、一定額の支払いをする必要がある。
不法行為については民法第709条、精神的損害の賠償を請求する場合は民法第710条、遺族から請求する場合は民法第711条、契約行為に関する慰謝料については民法第416条が根拠となる。
3. 懲罰としての側面
基本的に示談金は、被害者への「賠償」と「謝罪」の名目で支払うことになるが、犯した罪に対する「罰」としての側面もある。刑事罰や社会的制裁を受ける代わりに、当事者間での「罰金」を支払うことにより内々に処理することで、罪を軽減して解決を図るのである。その意味において、あまり金額が少なすぎると罰にならないため、罰金刑を下回らない範囲で、平均的な相場を踏まえた上で、収入・資産などに応じた適切な金額設定が望ましいと言える。
4. 口止め料
示談内容にもよるが、基本的に示談が成立した場合には、被害者側はその事件内容・示談内容について、一定の守秘義務が生じる。事件について第三者に口外することは、示談契約に違反する場合があるので注意が必要である。
また例外を除いて、基本的に一度成立した示談は、後で取り消したり示談をやり直すことは出来ない。よって、示談による解決を図ることで、加害者側は後で事件を蒸し返されることがなくなるメリットがあると言える。

示談金の検討材料[編集]

下記は、被害者に示談金を提示する際に、提示金額を検討する場合に考慮すべき事項である[1][2]

犯行の内容
痴漢は数十万円程度が示談金提示の相場になるが、より悪質で被害の大きい強姦・強制わいせつの際には、収入・資産がない状況にあっても示談金として数十万円以上で提示しないと、被害者感情を逆撫でしてしまうことになる。
被害者の精神的損害
慰謝料は、被害者の精神的損害に対して謝罪するためのお金であり、被害者が受けた「恐怖感・不安感・不信感」、双方の「性別・年齢・社会的地位」などを考慮し、示談金額を設定する必要がある。
被害者の経済的な損害
怪我の治療が必要だった場合、治療・療養のために仕事を休まざるを得なかった場合、物を壊したり盗んだりした場合で実損が生じていれば、被害弁償ということで最低限の考慮をする。
被害者の傷害の程度
交通事故の場合、入通院期間を基礎とした「慰謝料の相場」があるので、慰謝料の算定にあたって参考にする。
示談不成立のリスク
仮に示談できなかった場合、罰金や民事裁判での解決になることも想定されるため、その場合の見込みも参考する。示談不成立になった場合には、被害者が厳罰を求めることで執行猶予が得られなくなったり、数十~数百万円の罰金刑が課される場合もある。また、被害者が民事裁判を起こして損害賠償を求めてくれば、賠償金だけでなく裁判費用も必要になる。そうした刑事罰や前科がつくこと、民事請求などのリスクを回避するためには、それに見合った示談金を設定する必要がある。
加害者の資産・収入状況・社会的地位
示談金には「懲罰的な意味合い」もあるので、加害者本人・家族の「資産・収入状況・社会的地位」によっては、相応の額を支払う必要もある。
逮捕後の収入
逮捕され拘置された場合、会社を休職・辞職しなければならなくなり、収入は途絶える。そうなれば、月給だけでも数十万円の損失になるだけでなく、生活を維持することも難しくなる。無罪・執行猶予を勝ちとっても、無職から再スタートしなければならない。
裁判費用
逮捕前の示談であれば、裁判に必要な弁護士費用も考慮すべきである。担当弁護士・事件内容により大きく異なるが、裁判費用は被害が小さくシンプルな事件でも、相談料30分で5000円、初期費用30万円以上、成功報酬30万円以上、諸経費は別途かかる(一般に、裁判すれば100万円とも言われる)。刑事事件だけでなく民事事件として被害者に訴えられれば、さらに裁判費用の負担は増える。
罰金
逮捕前・起訴前の示談であれば、仮に有罪になり「罰金刑」になった際の推定額も、一つの参考になる。懲罰的な意味からも、予想される罰金額を下回らない範囲であることが望ましい。

示談金の相場[編集]

当事者が納得する金額であれば、決まった金額はない(法テラス)。

下記は、弁護士による一般的な「示談金の相場」である[3][4]。ただし、事件内容や被害額により、この金額は前後することに注意が必要である。

また、加害者の「初犯・再犯・執行猶予の有無」や、加害者の「反省態度・謝罪・再犯の可能性」や、加害者の「経済状況・支払い能力」、被害者が最終的に示談内容や謝罪に納得するか、弁護士などの代理人の働き……などにより、示談金の金額は大きく影響される。そのため、事件ごとにケースバイケースであり、本質的には「相場」を出すこと自体が難しいと言える。

罪名 示談金の相場 説明
暴行罪 10~30万円程度 怪我の程度により、大きく異なる。
10~30万円程度が多い。
傷害罪 10~100万円程度 怪我の程度により、大きく異なる。
10~50万円程度が多い。
窃盗罪
(被害額が少額の場合)
被害額~プラス20万円程度 万引き・置き引き・自転車盗は、10~30万円程度。
常習犯・悪質性が高いと、高額になることもある。
窃盗罪
(被害額が少額の場合)
被害額~プラス40万円程度 空き巣・車上狙い・すり・ひったくりは、30~50万円程度。
常習性・計画性・悪質性が高いため、高額になりやすい。
詐欺罪
(被害額が少額の場合)
被害額~プラス20万円程度 経済事犯は、被害額・示談額も高額になる場合が多い。
横領罪
(被害額が少額の場合)
被害額~プラス20万円程度 経済事犯は、被害額・示談額も高額になる場合が多い。
恐喝罪
(被害額が少額の場合)
被害額~プラス20万円程度  
強盗罪
(被害額が少額の場合)
被害額~プラス50万円程度  
強姦罪 100~200万円程度 事件内容・被害程度により、大きく異なる。
数十万円で済む場合もあれば、500万円を超すこともある。
痴漢 (迷惑条例違反)
(衣類の上から触った場合)
10万円~30万円程度 事件内容・被害程度により、大きく異なる。
通常20~30万円程度が多いが、100万円を超すこともある。
痴漢 (強制わいせつ罪)
(下着の中に手を入れた場合)
10万円~50万円程度 事件内容・被害程度により、大きく異なる。
通常50万円程度が多いが、100万円を超すこともある。
自動車運転過失致死傷罪
危険運転過失致死傷罪
相場はない 下記参照のこと
自動車運転による重大事故
自動車による死亡事故など重大事件については、被害が高額になるため、示談金の平均的な「相場」というものは算出できず、被害者の受けた傷害・後遺障害・死亡という結果について、民事上の責任が算定される。自動車保険の任意保険が適用される場合は、保険会社から保険金が被害者に支払われる。なお、飲酒運転や無免許運転などにより、自動車保険の「免責条項」に該当する場合は保険が適用にならない。他の財産から賠償できないと、求刑・判決は一気に重くなる。

通報前における示談[編集]

被害者は、殺人など重犯罪の場合を除き、必ずしも警察に通報する義務はない。加害者・被害者間で穏便に問題解決ができる場合には、警察・裁判所などを通さずに事件を解決することが出来る。

ただし、警察に通報しない場合には、生命保険・損害保険などの保険が適用されない場合があるため、注意が必要である。示談の際には、それらを考慮して示談金を設定する必要がある。

上記の節で挙げられている「示談金の相場」は、警察に逮捕された場合や、刑事事件として裁判になった際などに、判決への情状酌量を得るために示談する場合の示談金額である。警察へ通報せず、内々に示談するような場合には、この金額から上乗せした金額になる場合が多い。特に「示談成立により執行猶予が得られるか」という緊迫した状況では、高額になるケースが少なくない。

外部リンク[編集]

引用元
法テラス「示談・損害賠償」http://www.houterasu.or.jp/service/jiko_songaibaishou/jidan/faq2.html

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 和解と示談”. アオヤギ行政書士事務所 (2014年3月30日). 2014年3月30日閲覧。
  2. ^ 窃盗で示談”. アトム法律事務所 (2014年3月30日). 2014年3月30日閲覧。
  3. ^ 刑事弁護 Q&A【示談金相場】”. みずほ中央法律事務所 (2014年3月30日). 2014年3月30日閲覧。
  4. ^ 示談金の相場”. 東京弁護士法律事務所 (2014年3月30日). 2014年3月30日閲覧。

関連項目[編集]