「ダクテッドファン」の版間の差分
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多くの場合エンジンから離れた場所にファンがあり、[[ギア]]と[[シャフトドライブ|シャフト]]を介した駆動系が必要なため整備性の低下や専用部品によるコスト増加が避けられない。RFB ファントレーナーは[[ターボシャフトエンジン]]の軸出力でファンを駆動させている。 |
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[[ホバークラフト]]等ではプロペラが露出して回転すると危険なので防護壁を兼ねている場合もある。また、[[ヘリコプター]]のテールローターでも[[フェネストロン]]として使用される。 |
2019年8月5日 (月) 12:58時点における版
ダクテッドファンとは、円筒形のダクトやナセルの中にプロペラ状のファンを据え、それを回転させることによって推力を生み出す推進器の一種である。もともと航空機用に研究されてきたが、量産航空機での採用は2例しかなく、むしろホバークラフトやラジコン飛行機[1]の推進器としてよく採用される。
仕組み
プロペラ状のファンに円筒状の覆い(ダクトまたはナセル)を被せたような構造が特徴であり、推進力を得る基本的な仕組みは通常のプロペラと大差ない。
メリット
通常のプロペラ推進では進行方向だけでなく、それと直交する平面内にもプロペラ端から気流が発生している(渦流)。これは推力とならないため、エネルギーの無駄になってしまうばかりか、衝撃波となって騒音の原因にもなっている。プロペラの外側を筒で覆ってやればプロペラ先端部から発生する気流を全て進行方向側に整流することができ、エネルギー効率が上がると同時に衝撃波の発生を抑えて騒音を減らすこともできる。
円筒状のナセルをうまく使うことでさらなる効果を得られる。このナセルは空気取入れ口が排出口に比べて広い、“ハ”の字型の断面をしていることが多いが、このようにしてさらに円筒壁面の断面形状(翼形)を工夫するとナセル自体が進行方向側に揚力を生み出すようになる[2]。また、ナセルを偏向させることで気流の向きを変え、ある程度の推力偏向能力を持たせることも可能である。
上記の特徴から固定翼機に採用した場合、操縦特性は『出力が低いターボファンエンジン機』に類似している。このためジェット機のパイロットを養成する初等練習機としてRFB ファントレーナーが開発された。
デメリット
デメリットとしてはナセルによる抗力が大きく、高速化に適さないことが挙げられる。ただし、抗力は速度に比例して大きくなるため、低速のホバークラフトなどにおいては問題とならない。
多くの場合エンジンから離れた場所にファンがあり、ギアとシャフトを介した駆動系が必要なため整備性の低下や専用部品によるコスト増加が避けられない。RFB ファントレーナーはターボシャフトエンジンの軸出力でファンを駆動させている。
ホバークラフト等ではプロペラが露出して回転すると危険なので防護壁を兼ねている場合もある。また、ヘリコプターのテールローターでもフェネストロンとして使用される。
なお、共振を防ぐためにファンのブレード数は奇数であることが多い。
利用例
航空機
航空機用としてはスティパ・カプロニ、VTOL機向けに研究されてきたアメリカのベル X-22のように実験の域を出ることはあまりなく、実用機として販売されたのはエジレイ オプティカとRFB ファントレーナーのみである。ただし普及している高バイパス比ターボファンエンジンのファンは一般にダクテッドファンの一種とも言える。
電動航空機とすることで複雑な駆動系を廃し電線に置き換えることが可能である。エアバスはダクテッドファンを電動機で直接駆動するAirbus E-Fanを開発した。またLilium(リリウム)GmbHが開発中の『Electric Jet Engines』は電動ダクテッドファンであるが、ターボファンエンジンのように空気を圧縮するとしている。
スカイカーのMoller M400 Skycarは4機のダクテッドファンの向きを偏向することでVTOLが可能となっている。
飛行船ではダクテッドファンであれば、プロペラについた氷が遠心力で飛ばされた際に、船体を破る危険が極めて小さくなる。
ラジコン飛行機用の小型推進器としては比較的ポピュラーな存在である。特にモデルとした実機がジェット機である場合に、プロペラが外から見えないようにするため、小型かつ安価なモデルでは模型用ジェットエンジンの代わりに搭載される。電動モーター駆動のファンの後に燃料噴射装置とバーナーを備えた燃焼室を設け、ジェット排気による推力を付与するものもある[3]。
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Airbus E-Fanのダクテッドファン
船舶
船舶用としてはホバークラフト用の推進器がある。
類似の機構としてスクリュープロペラの周囲を整流板(ノズル)で囲うノズル・プロペラ(ダクトプロペラ)が砕氷船、タグボート、潜水艦、魚雷、深海潜水艇に使用されている。プロペラの先端から生じる渦流が減少するため静粛化に貢献し、プロペラが覆われるため破損の危険性が低下する。一方で、ノズルの分だけ重量が増加し、プロペラのメンテナンスにはダクトを外す必要があるなどのデメリットがある。
1934年に登場したコルト式ノズル・プロペラ(Kort nozzle)は低速高加重での大推力が得られ、推力が30-45%増大するが、キャビテーションの発生が激しくノズル側面に穴が開くなど問題もあるため、砕氷船を除けばあまり採用されない傾向がある[4]。