「世説新語」の版間の差分
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2008年3月18日 (火) 13:22時点における版
世説新語(せせつしんご)とは、中国南北朝の宋の劉義慶が編纂した、後漢末から東晋までの著名人の逸話を集めた小説集。今日『四部叢刊』に収めるものは上中下三巻に分かつが、テクストによってその巻数は二、三、八、十、十一等の異同がある。『隋書』経籍志によれば、もともと単に『世説』と称したようであるが、『宋史』芸文志に至ってはじめて『世説新語』の称が現れた。『世説新書』とも呼ばれる。
概要
宋の臨川王であった劉義慶は文芸を好み、多くの文学の士を集めては『集林』『幽明録』などの書物を編纂した。『世説新語』もその一つで、後漢末から東晋までの著名人の逸話を集め、その内容から三十六篇に分けて編纂したものである。それぞれの項目が「孔門四科」の徳行・言語・政事・文学を初めとしてジャンルごとに分類されている。基本的に小説集であり、史実とは言い難い話も少なくない。一方、この時代に生きた様々な人物の言動や思想を知り、同時代の世相を掴む上で貴重な書物と言え、取り上げられた人物が後代いかなるイメージを持たれていたかを推測することもできる。
成立の背景としては、後漢末期から行われるようになった人物評論が魏晋期の貴族社交界でも継承され、過去の人物に関する伝説を一書にまとめようとする機運が高まったことが挙げられよう。とりわけ中心的な主題となったのは「清談」である。いわゆる「竹林の七賢」に代表される老荘思想に基づいた哲学的談論が、当時の貴族サロンでもてはやされたことを裏付ける資料ともなっている。
『世説新語』が編纂されてから一世紀も経たないうちに、梁の劉孝標(劉峻)が注を付けている。劉孝標の注は、記述を補足し不明な字義を解説するだけではなく、本文中の誤りを訂正したり、また、現代では既に散逸した書物を多く引用したりしており、裴松之の『三国志』注、酈道元の『水経注』などと並び、六朝期の名注として高く評価されている。
日本への影響
『世説新語』はたいへんよく読まれ、その亜流も数多く出現したが、明代の中国において編纂された『世説新語補』が徳川期の日本へ紹介され、和刻本も出版された。秦鼎の『世説箋本』等、その研究も盛んに行われた。
主な登場人物
後漢・三国・西晋
東晋
各篇の名称
- 第一 徳行篇
- 第二 言語篇
- 第三 政事篇
- 第四 文学篇
- 第五 方正篇
- 第六 雅量篇
- 第七 識鑒篇(シキカン、人物の評価に関する話)
- 第八 賞誉篇
- 第九 品藻篇
- 第十 規箴篇
- 第十一 捷悟篇
- 第十二 夙恵篇
- 第十三 豪爽篇
- 第十四 容止篇
- 第十五 自新篇
- 第十六 企羨篇
- 第十七 傷逝篇
- 第十八 棲逸篇
- 第十九 賢媛篇
- 第二十 術解篇
- 第二十一 巧芸篇
- 第二十二 寵礼篇
- 第二十三 任誕篇(世俗にとらわれぬ人々の話)
- 第二十四 簡傲篇(ほぼ任誕篇に同じ)
- 第二十五 排調篇(他人を言い負かしたりやりこめたりする話)
- 第二十六 軽詆篇
- 第二十七 仮譎篇(カケツ、他人をうまくあざむいた話)
- 第二十八 黜免篇(チュツメン、左遷や免職に関する話)
- 第二十九 倹嗇篇(ケンショク、けちんぼの話)
- 第三十 汰侈篇(タイシ、ぜいたくに関する話)
- 第三十一 忿狷篇
- 第三十二 讒険篇
- 第三十三 尤悔篇
- 第三十四 紕漏篇
- 第三十五 惑溺篇
- 第三十六 仇隟篇(キュウゲキ)
関連書籍
翻訳は明治書院の「新釈漢文大系」版全3巻がある。これは注も翻刻してある。
日本語訳では、平凡社の「中国古典文学大系」に全訳がある。