コンテンツにスキップ

「サバ亜目」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Zorrobot (会話 | 投稿記録)
m ロボットによる 変更: ca:Escombroidi
Nelson(2006)の分類を適用、全般的に加筆
1行目: 1行目:
{{生物分類表
{{生物分類表
|名称=サバ亜目 Scombroidei
|名称 =サバ亜目
|色=pink
|色 = pink
|省略=条鰭綱
|画像=[[画像:Bluefin-big.jpg|250px]]
|画像=[[ファイル: Atlantic blue marlin.jpg |250px]]
|画像キャプション=[[タイセイヨウクロマグロ]] ''Thunnus thynnus''
|画像キャプション =ニシクロカジキ ''Makaira nigricans''
|界=[[動物]]界 Animalia
|亜綱 = [[新鰭亜綱]] {{sname||Neopterygii}}
|門=[[脊索動物]]門 Chordata
|上目 = [[棘鰭上目]] {{sname||Acanthopterygii}}
|亜門=[[脊椎動物]]亜門 Vertebrata
|目 = [[スズキ目]] {{sname||Perciformes}}
|綱=[[条鰭綱]] Actinopterygii
|亜目 = '''サバ亜目''' {{sname||Scombroidei}}
|上目=[[棘鰭上目]] Acanthopterygii
|下位分類名 = 下位分類
|目=[[スズキ目]] Perciformes
|下位分類 = <center>本文参照</center>
|亜目='''サバ亜目''' [[:w:Scombroidei|Scombroidei]]
}}
|下位分類=<center>諸説あり(本文参照)</center>}}
{{Wikispecies|Scombroidei}}
'''サバ亜目'''(さばあもく)、Scombroidei は、[[スズキ目]]の下位分類群の一つ。現生種では[[サバ科]]・[[タチウオ科]]・[[クロタチカマス科]]など、[[海]]生の大型遊泳性肉食魚を多く含むグループである。


'''サバ亜目'''([[学名]]:{{sname||Scombroidei}})は、[[スズキ目]]に所属する[[魚類]]の分類群の一つ。現生種として[[サバ科]]・[[タチウオ科]]・[[クロタチカマス科]]など、6科46属147種が記載される<ref name=Nelson2006>『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.430-434</ref>。[[マグロ]]・[[カジキ]]に代表される、遊泳性の大型肉食魚を多く含むグループである。
ただし亜目の構成種には諸説がある。[[カマス]]科、[[カジキ]]類2科(マカジキ科・[[メカジキ]]科)、[[ムカシクロタチ]]科(1種のみ)については、サバ亜目とする見解と、別亜目に分類する見解とがある。
==特徴==
成魚の全長は、20cm程度のサバ科魚類から4mを超すタイセイヨウクロマグロまで種類によって異なる。スズキ目の中でも比較的大型の魚が多く、全長1mを超えるものも珍しくない。


== 分布・生態 ==
成魚の[[顎]]は上下とも前方に尖り、種類による長短の違いはあるが[[吻]]が形成される。また、顎と[[唇]]は頭骨に固定され、前方に伸出することはできない。タチウオ科・クロタチカマス科・[[サワラ]]類など分類群によっては[[牙]]状の鋭い[[歯]]が発達する。また、[[目]]も大きく発達する。
サバ亜目の魚類はすべて[[海水魚]]で、沿岸から外洋にかけての表層、あるいは[[深海]]にまで分布する<ref name=Nelson2006/>。[[カマス|カマス科]]・[[サバ科]]の一部は[[汽水域]]に進出することもあるが、[[淡水]]域に入ることはごくまれである<ref name=Nelson2006/>。ほとんどの種類が世界各地で食用魚として利用され、[[サバ]]・[[マグロ]]など多量に漁獲される水産重要種も数多く含まれる<ref name=Nelson2006/>。


本亜目には非常に速く遊泳することができる魚種が多く、[[クロマグロ]]・[[メカジキ]]・[[バショウカジキ]]の遊泳速度は短時間ながら最高で時速60-100kmに達する<ref name=Nelson2006/>。マグロ類など一部の仲間は[[内温性]]を獲得しており、[[代謝|代謝熱]]によって比較的高い体温を維持することができる<ref name=Nelson2006/>。
体形は[[紡錘]]形で遊泳に適する。[[鱗]]は[[退化]]傾向にあり、小さな円鱗か櫛鱗、もしくは骨質変形鱗である。ただしタチウオ科では前後に細長く左右に平たいリボン状の体形となり、完全に鱗が消失する。


サバ亜目魚類の生態は[[科 (分類学)|科]]によって異なり、表層遊泳性のカマス科・サバ科・[[メカジキ科]]・[[マカジキ科]]、[[深海]]中層を遊泳する[[クロタチカマス科]]、深海[[底魚|底生性]]の[[タチウオ科]]に大きく分けられる<ref name=Nelson2006/>。
現生種の全てが海生で、沿岸から外洋・[[深海]]まで分布する。[[オニカマス]]やサワラ類など[[汽水域]]に入るものもいるが、純淡水域に入ることはまずない。

サバ科の仲間は季節的な[[回遊]]を行うものが多い。また、クロタチカマス科やタチウオ科の一部では昼は深海に潜み、夜間に海面近くに浮上する[[日周鉛直移動]]がみられる<ref name=Nelson2006/>。[[食性]]は一般に[[肉食動物|肉食性]]で、[[動物プランクトン]]・魚類・[[甲殻類]]・[[頭足類]]などを捕食する。

== 形態 ==
サバ亜目の仲間はサバ科のように遊泳に適した[[紡錘形]]の体型をもつものと、タチウオ科のように細長く側扁したリボン状のものに分けられる<ref name=Nelson2006/>。成魚の全長は、数十cm程度のサバ類から4mを超す[[タイセイヨウクロマグロ]]まで種類によってさまざま<ref name=FishBase>{{cite web |title= Perciformes|publisher = FishBase| url= http://www.fishbase.org/Summary/OrdersSummary.cfm?order=Perciformes|accessdate=12月12日|accessyear=2010年}}</ref>。[[スズキ目]]の中でも比較的大型の魚が多く、全長1mを超えるものも珍しくない。

成魚の[[顎]]は上下とも前方に尖り、種類による長短の違いはあるが[[吻]]が形成される。前上顎骨は固定され、上顎を前方に突き出すことはできない<ref name=Nelson2006/>。これは大型の獲物を捕食するために、二次的に獲得された[[形質]]であると考えられている<ref name=Nelson2006/>。[[歯]]は強固に直立し、[[クロタチカマス科]]・[[タチウオ科]]・[[サワラ]]類などでは [[牙]]のように鋭く発達する<ref name=Nelson2006/>。一般に[[目]]も大きい。[[鱗]]は[[退化]]傾向にあり、小さな円鱗か櫛鱗、もしくは骨質変形鱗である。

== 分類 ==
現生のサバ亜目は6科46属147種で構成される<ref name=Nelson2006/>。[[化石]]種のみの[[絶滅]]群として、Blochiidae 科([[始新世]])および Palaeorhynchidae 科の2科が知られ、前者は[[メカジキ科]]に近いグループであると推測されている<ref name=Nelson2006/>。

本亜目の構成には議論が多く、[[カマス科]]を独立のカマス亜目 Sphyraenoidei として除外する見解もある<ref name=Nelson1984>『Fishes of the World Second Edition』 pp.324-325</ref><ref name=Iwai>『魚学入門』 pp.45-46</ref>。また、[[カジキ]]類2科([[メカジキ科]]・[[マカジキ科]])については、単一の「メカジキ科」にまとめる場合もあるほか<ref name=Nelson1994>『Fishes of the World Third Edition』 pp.424-429</ref>、近年ではカジキ亜目 Xiphioidei としてサバ亜目から分離させる意見も多くなっている<ref name=Iwai/><ref name=Helfman2>『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.319</ref>。

[[ムカシクロタチ科]]と[[アマシイラ科]]はかつて本亜目に所属していたが<ref name=Nelson1984_2>『Fishes of the World Second Edition』 pp.361-365</ref>、両者が実際にサバ亜目の一員であるかについては見解が分かれている。ムカシクロタチ科は[[ムカシクロタチ]] ''Scombrolabrax heterolepis'' 1種のみで構成される[[単型 (分類学)|単型]]で、クロタチカマス科に類似した形態をもつ一方で[[スズキ亜目]]に近い部分もある<ref name=Nelson2006/>。Nelson(2006)の体系では独立のムカシクロタチ亜目 Scombrolabracoidei として分類されている一方で、サバ亜目の内部に位置付ける体系も存在する<ref name=Helfman2/>。また、カジキ類と近縁であると考えられていたアマシイラ科([[アマシイラ]] ''Luvarus imperialis'' のみを含む)は、近年の詳細な形態学的解析により[[ニザダイ亜目]]との関係が強く示唆されている<ref name=Nelson1994_2>『Fishes of the World Third Edition』 p.421</ref><ref name=Helfman>『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.12</ref>。

亜目内での分化については、沿岸性の原スズキ型魚類からまずカマス科・クロタチカマス科が分化し、クロタチカマス科からさらにタチウオ科とサバ科に分岐したと考えられている。

=== カマス科 ===
[[ファイル: Barracuda laban.jpg|thumb|right|[[オニカマス]] ''Sphyraena barracuda'' (カマス科)。世界中の熱帯域に分布する本種は「バラクーダ」とも呼ばれ、沿岸の表層で巨大な群れを形成することもある]]
'''[[カマス|カマス科]]''' {{sname||Sphyraenidae}} はカマス属 ''Sphyraena'' 1属のみからなり、[[アカカマス]]・[[ヤマトカマス]]・[[オニカマス]]など21種を含む。沿岸性が強く、浅海で[[群れ]]を成して泳ぐ。

体は前後に細長い槍型で、吻が長く尖る。大きい口には鋭い歯が並ぶ<ref name=Nelson2006/>。[[背鰭]]は2つで互いによく離れ、尾鰭の前に小離鰭はもたない。
* カマス属 ''Sphyraena''

=== クロタチカマス科 ===
[[ファイル:Longnose escolar.jpg|thumb|right|ハシナガクロタチ ''Nesiarchus nasutus''(クロタチカマス科)。本科魚類は長い背鰭と小離鰭をもつことが特徴である<ref name=Kaisuigyo>『日本の海水魚』 p.655</ref>]]
[[ファイル: Oilfish.jpg|thumb|right|[[バラムツ]] ''Ruvettus pretiosus'' (クロタチカマス科)。体に多量のワックス分を含むため、日本では食用としての販売は禁止されている]]
'''[[クロタチカマス科]]''' {{sname||Gempylidae}} には[[クロシビカマス]]・[[バラムツ]]・[[アブラソコムツ]]など16属24種が記載される。深海中層性だが、夜には浅海へ上がるものもいる。

背鰭は棘条部が前後に長く、腹鰭は退化的である<ref name=Nelson2006/>。背鰭は棘条部と軟条部に分かれ、尾鰭の前に小離鰭をもつ<ref name=Nelson2006/>。[[側線]]が体側の上下に分かれるものもいる。
* アオスミヤキ属 ''Epinnula''
* アブラソコムツ属 ''Lepidocybium''
* カゴカマス属 ''Rexea''
* クロシビカマス属 ''Promethichthys''
* クロタチカマス属 ''Gempylus''
* トウヨウカマス属 ''Neoepinnula''
* ナガタチカマス属 ''Thyrsitoides''
* ハシナガクロタチ属 ''Nesiarchus''
* バラムツ属 ''Ruvettus''
* フウライカマス属 ''Nealotus''
* ホソクロタチ属 ''Diplospinus''
* 他5属

=== タチウオ科 ===
[[ファイル: Trichiurus lepturus by OpenCage.jpg|thumb|right|[[タチウオ]] ''Trichiurus lepturus'' (タチウオ科)。漁業上きわめて重要な種類で、日本を含む世界各地で多量に水揚げされる]]
'''[[タチウオ科]]''' {{sname||Trichiuridae}} は[[タチウオ]]・タチモドキ・ヒレナガユメタチなど3亜科10属39種で構成される。深海底での生活に適応し遊泳力は比較的低いが、夜には浅海へ浮上するものもいる<ref name=Nelson2006/>。

体はリボン状で、背鰭は棘条部と軟条部が連続し、小離鰭を欠く<ref name=Nelson2006/>。腹鰭と尾鰭は退化傾向が強く、種類によっては消失する<ref name=Nelson2006/>。
* クロタチモドキ亜科 Aphanopodinae
** クロタチモドキ属 ''Aphanopus''
** タチモドキ属 ''Benthodesmus''
* オビレタチ亜科 Lepidopodinae
** オシロイダチ属 ''Eupleurogrammus''
** オビレタチ属 ''Lepidopus''
** カンムリダチ属 ''Tentoriceps''
** ナガユメタチモドキ属 ''Assurger''
** ユメタチモドキ属 ''Evoxymetopon''
* タチウオ亜科 Trichiurinae
** タチウオ属 ''Trichiurus''
** トゲタチウオ属 ''Lepturacanthus''
** ''Demissolinea'' 属

=== サバ科 ===
[[ファイル: Lanzardo 2.jpg|thumb|right|サバ属の1種 ''Scomber colias'' (サバ科)。本科には重要な食用魚が多数所属する。本種は西部大西洋に分布し、日本産のマサバとよく似た形態を有する<ref name=FishBase/>]]
[[ファイル: Bluefin-big.jpg |thumb|right|[[クロマグロ]] ''Thunnus thynnus'' (サバ科)。食用魚として最高の価値をもつ種類の一つ<ref name=Kaisuigyo2>『日本の海水魚』 pp.660-661</ref>。太平洋および大西洋産のものはそれぞれが亜種として扱われる]]
'''[[サバ科]]''' {{sname||Scombridae}} には[[マサバ]]・[[サワラ]]・[[カツオ]]・[[マグロ]]など多数の水産重要種が所属し、2亜科15属51種が記載される。沿岸から外洋にかけての表層から中層を遊泳して生活する。クロマグロの遊泳速度は非常に高く、メカジキやバショウカジキと並んで魚類の中でもトップクラスである<ref name=Nelson2006/>。

背鰭は2つに分かれ、尾鰭の前に小離鰭をもつ<ref name=Nelson2006/>。明瞭な鱗をもつウロコマグロ亜科([[ガストロ|ウロコマグロ]]1種のみ)と、微小な鱗しかもたないサバ亜科に細分される<ref name=Nelson2006/>。
* ウロコマグロ亜科 Gasterochismatinae
** ウロコマグロ属 ''Gasterochisma''
* サバ亜科 Scombrinae
** サバ族 Scombrini
*** グルクマ属 ''Rastrelliger''
*** サバ属 ''Scomber''
** サワラ族 Scomberomorini
*** カマスサワラ属 ''Acanthocybium''
*** サワラ属 ''Scomberomorus''
*** ニジョウサバ属 ''Grammatorcynus''
** ハガツオ族 Sardini
*** イソマグロ属 ''Gymnosarda''
*** ハガツオ属 ''Sarda''
*** 他2属(''Cybiosarda''、''Orcynopsis'')
** マグロ族 Thunnini
*** カツオ属 ''Katsuwonus''
*** スマ属 ''Euthynnus''
*** ソウダガツオ属 ''Auxis''
*** ホソガツオ属 ''Allothunnus''
*** マグロ属 ''Thunnus''

=== メカジキ科 ===
[[ファイル: Xiphias gladius1.jpg|thumb|right|[[メカジキ]] ''Xiphias gladius'' (メカジキ科)。大型で遊泳力の強いカジキ類は、スポーツフィッシングの対象としても需要が大きい]]
'''[[メカジキ科]]''' {{sname||Xiphiidae}} は[[メカジキ]] ''Xiphias gladius'' のみ、1属1種。世界中の[[熱帯]]・[[亜熱帯]]の外洋に生息する<ref name=Nelson2006/>。本科魚類はマカジキ科を含めた2科と合わせ「[[カジキ]]」と総称され、さまざまな[[形態学 (生物学)|形態学]]的特徴を共有する<ref name=Nelson2006/>。両グループが[[姉妹群]]の関係にあることは広く認められているが、1つの「メカジキ科」にまとめるか2科に分割するかは見解が分かれている<ref name=Nelson2006/><ref name=Ueno>『新版 魚の分類の図鑑』 p.98</ref>。

上顎が槍状あるいは剣状に著しく伸長し、吻は上下に平たい<ref name=Nelson2006/>。成魚は顎の歯・腹鰭・鱗を欠く<ref name=Nelson2006/>。
* メカジキ属 ''Xiphias''

=== マカジキ科 ===
'''[[マカジキ科]]''' {{sname||Istiophoridae}} は3属11種からなる。暖海の表・中層性で遊泳力が高く、全長1mを超える大型魚が揃う。詳細は[[カジキ]]を参照のこと。

吻は丸く筒状に伸び、成魚は顎の歯・腹鰭・鱗をもつ<ref name=Nelson2006/>。3属の分類は、背鰭前半部の高さと体高との関係に基づいている<ref name=Nelson2006/>。
* クロカジキ属 ''Makaira''
* バショウカジキ属 ''Istiophorus''
* マカジキ属 ''Tetrapturus''

== 出典・脚注 ==
<div class="references-small">{{Reflist|2}}</div>

== 参考文献 ==
{{Commons|Category:Scombroidei}}
{{Wikispecies|Scombroidei}}
* Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2006年 ISBN 0-471-25031-7
* Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Third Edition』 Wiley & Sons, Inc. 1994年 ISBN 0-471-54713-1
* Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Second Edition』 Wiley & Sons, Inc. 1984年 ISBN 0-471-86475-7
* Gene S. Helfman, Bruce B. Collette, Douglas E. Facey, Brian W. Bowen 『The Diversity of Fishes Second Edition』 Wiley-Blackwell 2009年 ISBN 978-1-4051-2494-2
* 岩井保 『魚学入門』 [[恒星社厚生閣]] 2005年 ISBN 978-4-7699-1012-1
* 上野輝彌・坂本一男 『新版 魚の分類の図鑑』 [[学校法人東海大学出版会|東海大学出版会]] 2005年 ISBN 978-4-486-01700-4
* 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 [[山と渓谷|山と溪谷社]] 1997年 ISBN 4-635-09027-2


== 外部リンク ==
生態は科によって異なり、遊泳性のサバ科・カマス科・カジキ類、中層・底層性のクロタチカマス科やムカシクロタチ、底生のタチウオ科といった傾向がある。代表的な3科の分化については、沿岸性の原スズキ型魚類からまずクロタチカマス科が分化し、クロタチカマス科から更にタチウオ科とサバ科が分化したと考えられている。
* [http://www.fishbase.org/Summary/OrdersSummary.cfm?order=Perciformes FishBase‐スズキ目] (英語)


{{デフォルトソート:さはあもく}}
サバ科などは季節的な[[回遊]]を行うものが多い。また、クロタチカマス科やタチウオ科では昼は深海に潜み、夜は海面や沿岸にやってくるという[[日周鉛直運動]]が見られる。食性は肉食性で、各種[[プランクトン]]・小魚・甲殻類・頭足類などの小動物を捕食する。
[[Category:スズキ目|*]]
==下位分類==
[[画像:Longnose escolar.jpg|thumb|240px|ハシナガクロタチ ''Nesiarchus nasutus''(クロタチカマス科)]]
;[[クロタチカマス科]] Gempylidae
:[[クロシビカマス]]・[[バラムツ]]・[[アブラソコムツ]]など16属23種を含む。背鰭は棘条部が前後に長く、腹鰭は退化している。尾鰭の前に小離鰭がある。[[側線]]が体側の上下に分かれるものもいる。深海の中・底層性だが、夜には浅海へ上がるものもいる。
;[[タチウオ科]] Trichiuridae
:[[タチウオ]]・タチモドキ・ヒレナガユメタチなど9属32種を含む。体はリボン状で、背鰭は棘条部と軟条部が連続する。腹鰭と尾鰭は退化していて、種類によっては消失する。小離鰭はない。深海に適応し遊泳力は比較的低いが、夜には浅海へ上がるものもいる。
;[[サバ科]] Scombridae
:[[マサバ]]・[[サワラ]]・[[カツオ]]・[[マグロ]]など15属51種を含む。背鰭は二つに分かれ、尾鰭の前に小離鰭をもつ。沿岸から外洋にかけての表・中層性で、遊泳力の高さはカジキ類や一部の[[サメ]]などと並んで魚類の中でもトップクラスである。
===分類に諸説があるもの===
;[[カマス]]科 Sphyraenidae
:カマス属 ''Sphyraena'' 1属のみからなり、アカカマス・ヤマトカマス・[[オニカマス]]など20種ほどが知られる。体は前後に細長い槍形で吻が長く尖る。大きい口には鋭い歯が並ぶ。尾鰭以外の各鰭は小さく、小離鰭はない。沿岸性が強く、浅海で群れを成して泳ぐ。
;ムカシクロタチ科 Scombrolabracidae
:[[ムカシクロタチ]] ''Scombrolabrax heterolepis'' だけで1科1属を構成する[[単型 (分類学)|単型]]である。サバ亜目とする以外に、[[スズキ亜目]]に組み込む見解や、1種のみで独立したムカシクロタチ亜目 Scombrolabracoidei とする見解がある。全長30cmほどで、体形はクロタチカマス科に似るが、胸鰭が長く発達するのが特徴である。全世界の熱帯・温帯海域に分布し、水深900mまでの深海に生息する。
;メカジキ科 Xiphiidae・マカジキ科 Istiophoridae
:メカジキ科は[[メカジキ]] ''Xiphias gladius'' のみ、マカジキ科は11種の現生種を含む。上顎の吻が槍状や剣状に長く伸びるこの2科は「カジキ」と総称される。2000年代にはサバ亜目ではないとする見解が主流となっており、その中には独立したカジキ亜目 Xiphioidei とする見解がある。暖海の表・中層性で、遊泳力が高く、全長1mを優に超える大型魚が揃う。詳細は[[カジキ]]を参照のこと。
==参考文献==
*[http://www.fishbase.org/Summary/OrdersSummary.cfm?order=Perciformes Perciformes] - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2008.[[FishBase]]. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version(09/2008).
*岡村収・尼岡邦夫監修『山渓カラー名鑑 日本の海水魚』 ISBN 4-635-09027-2
*岩井保『魚学入門』恒星社厚生閣 ISBN 4-7699-1012-6
{{CommonscatN|Scombroidei}}
[[Category:スズキ目|*さはあもく]]


[[ca:Escombroidi]]
[[ca:Escombroidi]]

2010年12月12日 (日) 11:38時点における版

サバ亜目
ニシクロカジキ Makaira nigricans
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : サバ亜目 Scombroidei
下位分類
本文参照

サバ亜目学名Scombroidei)は、スズキ目に所属する魚類の分類群の一つ。現生種としてサバ科タチウオ科クロタチカマス科など、6科46属147種が記載される[1]マグロカジキに代表される、遊泳性の大型肉食魚を多く含むグループである。

分布・生態

サバ亜目の魚類はすべて海水魚で、沿岸から外洋にかけての表層、あるいは深海にまで分布する[1]カマス科サバ科の一部は汽水域に進出することもあるが、淡水域に入ることはごくまれである[1]。ほとんどの種類が世界各地で食用魚として利用され、サバマグロなど多量に漁獲される水産重要種も数多く含まれる[1]

本亜目には非常に速く遊泳することができる魚種が多く、クロマグロメカジキバショウカジキの遊泳速度は短時間ながら最高で時速60-100kmに達する[1]。マグロ類など一部の仲間は内温性を獲得しており、代謝熱によって比較的高い体温を維持することができる[1]

サバ亜目魚類の生態はによって異なり、表層遊泳性のカマス科・サバ科・メカジキ科マカジキ科深海中層を遊泳するクロタチカマス科、深海底生性タチウオ科に大きく分けられる[1]

サバ科の仲間は季節的な回遊を行うものが多い。また、クロタチカマス科やタチウオ科の一部では昼は深海に潜み、夜間に海面近くに浮上する日周鉛直移動がみられる[1]食性は一般に肉食性で、動物プランクトン・魚類・甲殻類頭足類などを捕食する。

形態

サバ亜目の仲間はサバ科のように遊泳に適した紡錘形の体型をもつものと、タチウオ科のように細長く側扁したリボン状のものに分けられる[1]。成魚の全長は、数十cm程度のサバ類から4mを超すタイセイヨウクロマグロまで種類によってさまざま[2]スズキ目の中でも比較的大型の魚が多く、全長1mを超えるものも珍しくない。

成魚のは上下とも前方に尖り、種類による長短の違いはあるがが形成される。前上顎骨は固定され、上顎を前方に突き出すことはできない[1]。これは大型の獲物を捕食するために、二次的に獲得された形質であると考えられている[1]は強固に直立し、クロタチカマス科タチウオ科サワラ類などでは のように鋭く発達する[1]。一般にも大きい。退化傾向にあり、小さな円鱗か櫛鱗、もしくは骨質変形鱗である。

分類

現生のサバ亜目は6科46属147種で構成される[1]化石種のみの絶滅群として、Blochiidae 科(始新世)および Palaeorhynchidae 科の2科が知られ、前者はメカジキ科に近いグループであると推測されている[1]

本亜目の構成には議論が多く、カマス科を独立のカマス亜目 Sphyraenoidei として除外する見解もある[3][4]。また、カジキ類2科(メカジキ科マカジキ科)については、単一の「メカジキ科」にまとめる場合もあるほか[5]、近年ではカジキ亜目 Xiphioidei としてサバ亜目から分離させる意見も多くなっている[4][6]

ムカシクロタチ科アマシイラ科はかつて本亜目に所属していたが[7]、両者が実際にサバ亜目の一員であるかについては見解が分かれている。ムカシクロタチ科はムカシクロタチ Scombrolabrax heterolepis 1種のみで構成される単型で、クロタチカマス科に類似した形態をもつ一方でスズキ亜目に近い部分もある[1]。Nelson(2006)の体系では独立のムカシクロタチ亜目 Scombrolabracoidei として分類されている一方で、サバ亜目の内部に位置付ける体系も存在する[6]。また、カジキ類と近縁であると考えられていたアマシイラ科(アマシイラ Luvarus imperialis のみを含む)は、近年の詳細な形態学的解析によりニザダイ亜目との関係が強く示唆されている[8][9]

亜目内での分化については、沿岸性の原スズキ型魚類からまずカマス科・クロタチカマス科が分化し、クロタチカマス科からさらにタチウオ科とサバ科に分岐したと考えられている。

カマス科

オニカマス Sphyraena barracuda (カマス科)。世界中の熱帯域に分布する本種は「バラクーダ」とも呼ばれ、沿岸の表層で巨大な群れを形成することもある

カマス科 Sphyraenidae はカマス属 Sphyraena 1属のみからなり、アカカマスヤマトカマスオニカマスなど21種を含む。沿岸性が強く、浅海で群れを成して泳ぐ。

体は前後に細長い槍型で、吻が長く尖る。大きい口には鋭い歯が並ぶ[1]背鰭は2つで互いによく離れ、尾鰭の前に小離鰭はもたない。

  • カマス属 Sphyraena

クロタチカマス科

ハシナガクロタチ Nesiarchus nasutus(クロタチカマス科)。本科魚類は長い背鰭と小離鰭をもつことが特徴である[10]
バラムツ Ruvettus pretiosus (クロタチカマス科)。体に多量のワックス分を含むため、日本では食用としての販売は禁止されている

クロタチカマス科 Gempylidae にはクロシビカマスバラムツアブラソコムツなど16属24種が記載される。深海中層性だが、夜には浅海へ上がるものもいる。

背鰭は棘条部が前後に長く、腹鰭は退化的である[1]。背鰭は棘条部と軟条部に分かれ、尾鰭の前に小離鰭をもつ[1]側線が体側の上下に分かれるものもいる。

  • アオスミヤキ属 Epinnula
  • アブラソコムツ属 Lepidocybium
  • カゴカマス属 Rexea
  • クロシビカマス属 Promethichthys
  • クロタチカマス属 Gempylus
  • トウヨウカマス属 Neoepinnula
  • ナガタチカマス属 Thyrsitoides
  • ハシナガクロタチ属 Nesiarchus
  • バラムツ属 Ruvettus
  • フウライカマス属 Nealotus
  • ホソクロタチ属 Diplospinus
  • 他5属

タチウオ科

タチウオ Trichiurus lepturus (タチウオ科)。漁業上きわめて重要な種類で、日本を含む世界各地で多量に水揚げされる

タチウオ科 Trichiuridaeタチウオ・タチモドキ・ヒレナガユメタチなど3亜科10属39種で構成される。深海底での生活に適応し遊泳力は比較的低いが、夜には浅海へ浮上するものもいる[1]

体はリボン状で、背鰭は棘条部と軟条部が連続し、小離鰭を欠く[1]。腹鰭と尾鰭は退化傾向が強く、種類によっては消失する[1]

  • クロタチモドキ亜科 Aphanopodinae
    • クロタチモドキ属 Aphanopus
    • タチモドキ属 Benthodesmus
  • オビレタチ亜科 Lepidopodinae
    • オシロイダチ属 Eupleurogrammus
    • オビレタチ属 Lepidopus
    • カンムリダチ属 Tentoriceps
    • ナガユメタチモドキ属 Assurger
    • ユメタチモドキ属 Evoxymetopon
  • タチウオ亜科 Trichiurinae
    • タチウオ属 Trichiurus
    • トゲタチウオ属 Lepturacanthus
    • Demissolinea

サバ科

サバ属の1種 Scomber colias (サバ科)。本科には重要な食用魚が多数所属する。本種は西部大西洋に分布し、日本産のマサバとよく似た形態を有する[2]
クロマグロ Thunnus thynnus (サバ科)。食用魚として最高の価値をもつ種類の一つ[11]。太平洋および大西洋産のものはそれぞれが亜種として扱われる

サバ科 Scombridae にはマサバサワラカツオマグロなど多数の水産重要種が所属し、2亜科15属51種が記載される。沿岸から外洋にかけての表層から中層を遊泳して生活する。クロマグロの遊泳速度は非常に高く、メカジキやバショウカジキと並んで魚類の中でもトップクラスである[1]

背鰭は2つに分かれ、尾鰭の前に小離鰭をもつ[1]。明瞭な鱗をもつウロコマグロ亜科(ウロコマグロ1種のみ)と、微小な鱗しかもたないサバ亜科に細分される[1]

  • ウロコマグロ亜科 Gasterochismatinae
    • ウロコマグロ属 Gasterochisma
  • サバ亜科 Scombrinae
    • サバ族 Scombrini
      • グルクマ属 Rastrelliger
      • サバ属 Scomber
    • サワラ族 Scomberomorini
      • カマスサワラ属 Acanthocybium
      • サワラ属 Scomberomorus
      • ニジョウサバ属 Grammatorcynus
    • ハガツオ族 Sardini
      • イソマグロ属 Gymnosarda
      • ハガツオ属 Sarda
      • 他2属(CybiosardaOrcynopsis
    • マグロ族 Thunnini
      • カツオ属 Katsuwonus
      • スマ属 Euthynnus
      • ソウダガツオ属 Auxis
      • ホソガツオ属 Allothunnus
      • マグロ属 Thunnus

メカジキ科

メカジキ Xiphias gladius (メカジキ科)。大型で遊泳力の強いカジキ類は、スポーツフィッシングの対象としても需要が大きい

メカジキ科 Xiphiidaeメカジキ Xiphias gladius のみ、1属1種。世界中の熱帯亜熱帯の外洋に生息する[1]。本科魚類はマカジキ科を含めた2科と合わせ「カジキ」と総称され、さまざまな形態学的特徴を共有する[1]。両グループが姉妹群の関係にあることは広く認められているが、1つの「メカジキ科」にまとめるか2科に分割するかは見解が分かれている[1][12]

上顎が槍状あるいは剣状に著しく伸長し、吻は上下に平たい[1]。成魚は顎の歯・腹鰭・鱗を欠く[1]

  • メカジキ属 Xiphias

マカジキ科

マカジキ科 Istiophoridae は3属11種からなる。暖海の表・中層性で遊泳力が高く、全長1mを超える大型魚が揃う。詳細はカジキを参照のこと。

吻は丸く筒状に伸び、成魚は顎の歯・腹鰭・鱗をもつ[1]。3属の分類は、背鰭前半部の高さと体高との関係に基づいている[1]

  • クロカジキ属 Makaira
  • バショウカジキ属 Istiophorus
  • マカジキ属 Tetrapturus

出典・脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.430-434
  2. ^ a b Perciformes”. FishBase. 12月12日閲覧。accessdateの記入に不備があります。
  3. ^ 『Fishes of the World Second Edition』 pp.324-325
  4. ^ a b 『魚学入門』 pp.45-46
  5. ^ 『Fishes of the World Third Edition』 pp.424-429
  6. ^ a b 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.319
  7. ^ 『Fishes of the World Second Edition』 pp.361-365
  8. ^ 『Fishes of the World Third Edition』 p.421
  9. ^ 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.12
  10. ^ 『日本の海水魚』 p.655
  11. ^ 『日本の海水魚』 pp.660-661
  12. ^ 『新版 魚の分類の図鑑』 p.98

参考文献

外部リンク