消防無線

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消防無線(しょうぼうむせん)とは、消防が使用する業務無線の総称である。

日本の消防無線[編集]

固定局及び基地局と移動局からなり、固定局は消防本部同士や消防本部と中継所との通信、移動局には各種消防・救急車両に搭載されるものと、隊員が車両を離れる際等に用いられる携帯無線機によるものが存在する。変調方式はFM及びデジタルで、周波数帯は150MHz(千葉市消防局ではデジタル方式の360MHz帯、MCA無線)帯の割り当て周波数のうちのいずれか、又は複数を各自治体の消防本部が使用する。また、広大なエリアや山に挟まれた地域を管轄する消防本部では中継所を建て、150MHzや400MHz、マイクロ波等を利用しているところもある。

消防本部同士の通信又は、消防および救急における出場指令の送受や火災・救急出場時の連絡等、消防の各種活動の連絡に用いられる。周波数帯ならびに変調方式は先述の通りで、混信を避けるためにトーン信号、連絡の円滑化のために通話コードが併せて用いられることがある。統一された運用方法を持つ航空無線と異なり、その運用については自治体により様々である。

周波数の割り当ては消防と救急に分かれ、さらに大きな自治体等では地区毎に指令系統を分け、それぞれに周波数を割り当てることによって、通信の円滑化を図っている場合がある(小さい自治体であっても、周波数は複数割り当てられていることがある)。また、東京消防庁のように、通信用周波数以外に、消防団への伝令のみに使用される傍受専用周波数(例として東京消防庁受令系)が存在する。

割り当てられる周波数は概ね、区市町村波、都道府県内共通波、全国共通波(1~3)、防災相互連絡波、救急波、消防ヘリ連絡波、などが存在する。なお、消防の規模により、割り当てられる市町村波、救急波の数は異なる。一般には複数チャンネル保有していても、自本部専用割り当ては1波のみで、残りは輻輳および混乱に備えて都道府県共通波と全国共通波を兼用している場合が多い。


デジタル化[編集]

2005年7月15日消防庁次長より「将来的に複数の消防本部が概ね県域を単位として、消防救急無線を広域化・共同化し、また、指令業務も共同運用していくべき」として、各都道府県知事及び各指定市市長あてに「消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用の推進について」(平成17年7月15日付消防消第141号)が通知された。これは消防・救急デジタル移動通信システムと呼ばれている。

また、総務省より電波法で、平成28年5月31日までに260MHz帯デジタル方式に移行しなければならないとしている。

消防無線の仕様(デジタル)
パラメータ 仕様
変調方式 π/4シフトQPSK方式
アクセス方式 SCPC方式、又はTDMA方式
通信方式 複信方式、半複信方式、単信方式、同報通信方式
使用周波数帯 260MHz帯(超短波帯)

東京消防庁がTDMA方式を使用しているのに対し、他の消防本部のほとんどはSCPC(Single Channel Per Carrier)方式を導入したため、

東京消防庁も方式の変更に迫らせている。

両方式には互換性がないため、大規模災害時の支援の際、現場での意思疎通が出来なくなることが懸念される。デジタル無線に用意された周波数は260MHz帯となるため、現用のアナログ無線より通話エリアが3割程狭くなるといわれており、不感地帯解消のための基地局、中継局等の増設が必要となる。

車載型無線機については現行のアナログ無線機と同サイズの製品が開発されているが、携帯型無線機については30年程昔の製品と同サイズのため、「携帯」無線機とは、まだ言い難いレベルである。

デジタル化への移行期間中は、車両にデジタル・アナログ両方の無線機を積まなければならない状況が想定されるため、デュアル機を開発したメーカーもあるが、導入はあまり進んでいないようである。

アルインコではこれに伴い、「東京消防庁受令系」が廃止される可能性もあることから、消防関係者限定のデジタル受信機DJ-XF7(携帯型)とDR-XF7(車載型)を開発した。自治体を通じてのみ購入可能で、紛失の際には悪用を防ぐためにシステム消去信号を受信させ使用不能にする機能がある[1]。エーオーアールでも同様の受信機AR-F100を開発した[2]。いずれも消防庁からの指導により製品の販売に関しては原則、個人ユーザへの販売は出来ず、購入は消防本部また消防行政に関係する公官庁および納入業者と限られている。

デジタル化による消防団への弊害[編集]

 消防団所有(地方自治体管理)のポンプ車には、火災状況等を傍受するため受令機を積載していることが多いが、デジタル化に併せての機器更新計画はほぼ白紙に近い状態にある。また、デジタル化により消防団員個々の情報収集源として使われている市販の受信機等も使用できなくなる。なお、一部自治体ではデジタル化によるトラブルを回避するためアナログ波を残しているが、多くの自治体ではデジタル化と同時にアナログ運用を停止している。2013年9月現在、多くの消防無線がデジタルに移行されており、デジタル受令機が配備されていない消防団については情報収集が困難な状況となっている。一部自治体では消防団にデジタル無線機若しくは受令機を配備している所もあるが、その他の自治体では配備しない、もしくは団長・分団長等の役職者のみに配備する等、全ての団員が情報を収集出来ていないのが現状である。なお、札幌市議会の決算特別委員会における市の答弁において、消防団へのデジタル受令機の配備に関して予算が不足しているため購入できないこと、団員有志がデジタル受令機を購入する際の手続き(購入申請)の協力に関しては、個人情報が含まれる通信が受信できる機器であるため、市としては協力をしないことを明らかにした。この様に消防団への消防無線デジタル化への対応について、非協力的な自治体もある[3]

 一方、平成25年12月に「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が制定され、消防団員の加入促進、処遇の改善、装備の充実など、地域防災力の充実強化に向けた様々なことが定められた中で、通信に関しては比較的安価な特定小電力無線やデジタル簡易無線等のトランシーバーを導入する消防団が増えた。しかしながら、本来の消防無線とは用途が違い、簡易な無線通信業務が本来の用途であり、消防団としては活動中の連絡手段としての運用が主な用途となる。また、消防無線で行われる情報は共有できるものではないため、実質的な改善とはなっていない。デジタル簡易無線には免許局と登録局の二種類が存在し、免許局は鉄道・バス等の陸上交通業務や消防・防災・警備等の人命や財産を保護する業務などには使用できない(免許されない)。そのため、見回りや消火活動以外の通信を行う名目として運用している実態がある。登録局については免許局とは違い、登録申請のみで使用が可能で、特に使用目的も設けられていないが、広く一般的に使用されている無線であるため、一般の利用者が通話しており利用できなかったり、秘話機能が搭載されているものの、設定した秘話コードが一致した場合、一般の利用者にも傍受されることになる。

デジタル化に向けての電波伝搬調査[編集]

消防波のデジタル化に向け、各消防において伝搬調査が行われているが、調査内容の妥当性を疑問視する声[要出典]が聞かれ始めている。これは、多くの調査は、入札により業者が選定されるが、入札価格が試算の1/10という場合[要出典]もあり、議会で審議される案件が増えてきているためである。

消防本部毎に、個々に調査を行っているため、他消防への影響については不確定である(割り当て周波数が公表されていないため、D/U等について机上計算できていない)。

その他、香川県では2009年度より電波伝搬の本格的な調査を実施する予定[4]であるほか、大阪府などでも整備構想を推進中である[5]

デジタル無線機の維持、管理[編集]

従来のアナログ無線機とは異なり、機器の性能を測定するには、各メーカーが管理している専用のPCソフトが必要となる。このため、購入したメーカーの永続的サポートが必要となる。従来は無線設備を管理していた職員が、簡易的に不具合の状況を確認できたが、デジタル無線機においては、通話ができない状況が確認された場合、結果として軽微な不具合だったとしてもメーカーサポートに頼らなければならないため、維持管理費が増額する状況となっている。このため、機器の保守を年間契約とせず、オンコール対応とする消防本部が増えている。

消防車両の配置替えに際しての呼出名称の変更も、従来であれば総合通信局への届出のみで済んでいたのが、デジタル無線機では個々の無線機にIDが設定してあり、通信の相手方に自局名が表示されるため、メーカーに依頼しデータの書き換えをしてもらわなければならない。無償か有償かはメーカーサポートに依存するため不明となっている。

無線機の更新、追加購入において、他メーカーの製品を導入した場合、メーカー固有の機能の差による弊害が懸念されるが、現在のところ新規一括更新の状態のため不明。

脚注[編集]

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関連項目[編集]