水飲み鳥
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水飲み鳥(みずのみどり、英: drinking bird)は熱力学で作動する熱機関の玩具で、鳥が水場から水を飲む動きを模倣している。平和鳥(へいわどり)、ハッピーバードなど様々な名前で商品化されている。
構造と素材[編集]
水飲み鳥は2つのガラスの球を管(鳥の首)で繋いだ形をしている。管は下側の球の底近くに達しているが、上側の球の端までは達していない。内部には一般的に着色されたジクロロメタン(塩化メチレン)の液体が入っている。
空気は抜かれており、内部の空洞は気化したジクロロメタンで満たされている。上側の球には嘴が取り付けられ、頭部はフェルトのような材料で覆われている。多くの場合、目玉とシルクハットと尾羽で飾りつけられている。装置全体は首の回転軸で支えられており、軸のポイントは変えられる。
見た目は玩具であり実際そのように分類されるが、取り扱いには注意が必要である。初期の製品は可燃性の液体(エーテルなど)を用いたものが多い。新しいものは難燃性のジクロロメタンを用いている。ただしジクロロメタンは皮膚や肺にとっては刺激物であり、また長期間にわたり接触・吸引した場合肝毒性を持ち、発癌性の可能性もある[1]。水飲み鳥を破損させないよう、とくに子供や動物の近くに置かれている場合は気をつけるべきである。
物理的および化学的原理[編集]
水飲み鳥は以下に述べるような複数の物理法則の興味深い展示であり、そのため基本的な物理学や化学の教育で利用されている。
- ボイル=シャルルの法則によれば、体積一定の気体において温度と圧力は比例する。
- 理想気体の状態方程式によれば、体積一定の気体において物質量と圧力は比例する。
- マクスウェル分布によれば、ある体積・温度においては異なるエネルギー準位の分子が存在し、そのため一定温度下で複数の相(固体/液体/気体)の状態で存在しうる。
- 蒸発熱は物質が蒸発するときに吸収する熱である。
- トルクと重心の概念。
- フェルトの毛細管現象による水の吸収。
動作の仕組み[編集]
水飲み鳥は基本的には熱機関であり、温度差を利用して熱エネルギーを運動エネルギーに変換して仕事を行う。他の熱機関と同様に、水飲み鳥は熱力学的サイクルの繰り返しによって動く。系の初期状態は鳥の頭が濡れた状態で直立し、これが軸における初期振幅になる。
サイクルは以下のように働く。
- 頭部から水が蒸発する(マクスウェル分布)
- 蒸発により頭部の温度が下がる(蒸発熱)
- 温度の低下により頭部のジクロロメタン蒸気が凝集する
- 温度の低下と凝集により頭部の気圧が下がる(理想気体の状態方程式)
- 頭部と胴体の気圧差により管内の液面が上昇する
- 液体が頭部に流れ込むことで重心が上がり、前方へ傾く
- 傾くことで管の下端が液面より上に出る
- 蒸気の気泡が管を通って上昇し、液体は下降する
- 液体が胴体に流れ、頭部と胴体の気圧が平衡する
- 液体が胴体へ戻ったことで重心が下がり、鳥は元の直立状態に戻る
水を入れたコップ等が置かれ、嘴が降りたとき水に浸されるようになっていれば、水飲み鳥は水を吸収し続けてサイクルは繰り返され、頭部を湿らせるに足るだけの水がある限り動作は続く。ただし水が無くても、頭部が湿っているか、もしくは頭部と胴体の温度差が持続される場合にも動作は続く。蒸発熱なしで温度差を持続する手段としては、例えば胴体部を熱することで頭部との気圧差を作り出せばこの熱機関は駆動する。本質的なエネルギー源は周囲環境の熱であり、この玩具は永久機関ではない。
歴史[編集]
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出典[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
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※特記しない場合は英語サイトへのリンク
- 水飲み鳥の仕組み
- 水飲み鳥の歴史 (Rotten Library)
- 水飲み鳥の動画と画像
- 水飲み鳥のバリエーション
- 太陽エネルギーのみで動作する水飲み鳥への改造
- 芸術プロジェクト (Daniel Reynolds)
- マイルス・V・サリヴァンによる水飲み鳥の発明 - 特許番号2,402,463 1945年8月6日
- 水飲み鳥アヒル デモンストレーション(説明と動画)