水銀スイッチ

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水銀スイッチ

水銀スイッチ(すいぎん-)とは、水銀を用いたスイッチの一種である。ガラス製の容器の一端の内面に、解放された電気接点端子を設け、容器内に少量の水銀が封入されている。容器が傾くことで、重力によって水銀が移動し、端子と水銀が接触した場合通電状態となる。容器内の水銀の動きを利用して、転倒や傾きを検知する用途に用いられる。

水銀が持つ、常温において液体であるという性質から、電極によく密着し接触抵抗が非常に少なく、更にチャタリングが発生しないという特徴がある。現在一般的に使われる転倒スイッチには、水銀の代わりに金属球を使うもの等があるが、接触抵抗の面では水銀スイッチが傑出している。このため比較的大きな電力のスイッチングや、小型の電池など弱い電源装置を使用する場合に特に威力を発揮する。

水銀は、生物に対する強い毒性があり、環境に放出された場合には深刻な影響をもたらす。環境への配慮が広く認知された現在では、代替品が普及したこともあり、生産を行なうメーカーは(皆無ではないものの)ほとんど存在せず、一般の電子部品販売店等での扱いは非常にまれであり、店頭在庫のみの扱いとなっている。

かつて水銀スイッチを使用していた工業製品においても、水銀スイッチ排除の動きが見られる。例えばアメリカの自動車産業においては、2002年に水銀を含有するスイッチの使用を中止した他、アメリカ環境保護庁は2006年に「全国自動車用水銀スイッチ回収プログラム(National Vehicle Mercury Switch Recovery Program/NVMSRP)」を公表し、既存の自動車からの回収をスクラップ業者等に働きかけている。

サスペンス映画などにおいては、爆弾点火装置を構成する部品としてしばしば使われている。

かつては、その動作原理の単純さ、さらには動作の確実性などから、子供向けの電子工作の本等でも頻繁に登場しており、金属としては唯一、常温で液体であるという水銀の性質と相俟って、当時の子供の興味を引いていた。