殊勲章

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殊勲章(しゅくんしょう)は、各種団体が制定する表彰の一つ。衣服に着用して顕彰されたことを示す徽章が贈られる点が「殊勲賞」との違いである。消防機関地方機関の一部で、職員に授与される栄章として制定されている。

日本では、兵庫県神戸市が神戸市消防表彰規則施行規程において表彰記章のひとつとして殊勲章を制定しており、人命の救助又は救出若しくはその協力した消防職員火災、その他の災害又は事故等に際しての警防防除行動若しくはその協力をした消防職員を対象に消防殊勲章を授与している[1]

しかし、実際には日本でこの名称を有する表彰記章は多くなく、他国のものに当てられる訳語として使われることの方が多い。

殊勲章と訳される章[編集]

英語圏で、“Distinguished Service Order”(DSO)及び“Distinguished Service Medal”(DSM)と称される章が、日本語では“殊勲章”と訳されることが多い。しかし、特にDSMには、国家の勲章であるものから任意団体の表彰記章まであり、それぞれの価値は大きく異なる。また、同じ“国家の勲章”の範疇に入るものでも、DSOとDSMでは両者のは格式に大きな差がある。日本の書籍等では、“Medal”(メダル)は全般或はその一部が記章に分類されるもので、この区分けは著者によっても異なる。それに対して、受章者に勲位が授けられる“Order”(オーダー)は、例外なく勲章として扱われている。

DSCのようなクロス章(十字章)はオーダーとメダルの間に位置付けられる、日本には無い概念の章で、メダルと共にデコレーションの概念に分類される。イギリスの場合、通常の十字章は全オーダーの下位で全メダルの上位に位置付けられており、ヴィクトリア十字章ジョージ・クロスだけは例外的に全オーダーより上位に位置付けられている。一方、アメリカの場合、十字章の次に同じ名称のメダルが位置し、その下に別の十字章が置かれている。

アメリカ合衆国[編集]

アメリカ合衆国には制度上“Order”が存在しないので、“殊勲章”と訳されているものは何れも“Distinguished Service Medal”であり、様々な組織に同名の章が存在する。(en:Distinguished Service Medal (United States)参照)

関係では、陸軍 (en海軍 (en空軍 (en、及び沿岸警備隊 (enで制定されており、海兵隊の将兵には海軍のものが授与される。これらの章は同格とされ、その上位に国防総省の「ディフェンス・ディスティングシュドサービスメダル」(Defense Distinguished Service Medal)が置かれている。

殊勲章の授与基準は「責任ある重大な任務に於ける特別な功績」とされており、序列は最高勲章である名誉勲章及び各軍の十字章(殊勲十字章(陸軍)・海軍十字章(海軍・海兵隊及び沿岸警備隊)・空軍十字章)の次にディフェンス・ディスティングシュドサービスメダル、そしてその次に4軍の殊勲章となる。

参考資料[編集]

  • American Forces Information (1992).Armed Forces DECORATION AND AWARDS. Department of Defense.
  • 小川賢治 『勲章の社会学』 晃洋書房、2009年3月。ISBN 978-4-7710-2039-9

イギリス[編集]

イギリス軍には“Distinguished Service Order”(DSO)、“Distinguished Service Cross”(DSC)及び“Distinguished Service Medal”(DSM)があり、DSCは「殊勲十字章」と訳され、DSOとDSMが“殊勲章”と訳される。そのため、DSOは「殊功勲章」等と訳される場合もある。

DSOは、「敵前に於ける優れたリーダーシップにより抜群の功績を挙げたイギリス及びイギリス連邦諸国全軍の将兵」を対象としたオーダーである。1993年の栄典制度改正前は「抜群の戦果を挙げたイギリス及びイギリス連邦諸国全軍の将校、或は戦時に海軍へ徴用された商船の士官」が対象とされていた。授与条件である「戦果」には、ヴィクトリア十字章のような寄与の形態に関する条件が無く、あらゆる任務に対して贈られるため、優れた指揮官が多く受章している。制度上は下士官・兵も受章できるようになった現在でも、授与基準に「リーダーシップ」が加わったため、実際の受章者の殆どが上級将校である。

DSMは「戦闘海域に於いて抜群の武勲を挙げた下士官・兵」に贈られるメダルである。対象は当初イギリス及びイギリス連邦諸国の海軍及び海兵隊の下士官・兵のみが対象だったが、第二次世界大戦中に拡大され、海軍へ徴用された商船乗組員や海上任務の陸・空軍の下士官・兵へも授与されるようになり、これらに相当する外国人へも贈られた。1993年に廃止された。

1993年改正前のDSCは、「DSOに相当する程の功績ではないが、戦闘海域に於いて抜群の武勲を挙げた中佐以下の将校」に贈られていた。当初はイギリス及びイギリス連邦諸国の海軍及び海兵隊将校のみが対象だったが、第二次世界大戦中に拡大され、海軍へ徴用された商船の士官や海上任務の陸・空軍将校へも授与されるようになった。また、これらに相当する外国士官へも贈られた。

1993年の栄典制度改正によりDSMは廃止され、従来同章の対象となっていた下士官・兵にもDSCが授与されるようになった。そして、ヴィクトリア十字章に値する程ではないが、より大きな武勲を挙げた将兵を対象としたコンスピキュアス・ギャラントリー・クロスConspicuous Gallantry Cross(CGC))が新設された。同章に該当するケースとしては、従来DSOが授与されていたが、授与基準変更によって追加された「リーダーシップ」の条件には該当しない功績が挙げられる

イスラエル[編集]

殊勲章 (Medal of Distinguished Service)が、イスラエル国防軍第3位の勲章として1970年に制定され、2016年までに計601件の授与が行なわれている。

殊勲章の上位には武勇記章(Medal of Valor、最上位)、勇気記章 (Medal of Courage、第2位)が存在する。

その他の国[編集]

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • Ailsby, Christopher (1989). Allied Combat Medals of World War II vol.1 : Britain, the Commonwealth and Western European Nations. Avon: Haynes Publishing Group. ISBN 978-0-85059-927-5.
  • Duckers, Peter (2009). British Military Medals - A Guide for the Collector and Family Historian. South Yorkshire: Pen & Sword Books Ltd. ISBN 978-1-84415-960-4.
  • 小川賢治 『勲章の社会学』 晃洋書房、2009年3月。ISBN 978-4-7710-2039-9

関連項目[編集]