正統性

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正統性(せいとうせい、英語:legitimacy)とは、政治権力が最終的に支配として確立し、権威化されることを正当化する概念をいう。

概要[編集]

権力移譲などの場面においては、前政府体系の権力を引き継ぐ作業が行われ、被支配者向けに倫理的・道徳的に論理を準備することで、過去からの政治的支配の連続性や正当性が担保されるようにすることがある。歴史的な連続性に基づく正当性を示すために、たとえば中国史においては、新たな国が興るたびにその国の正統性を証明するために歴史書が編纂されている。また、法的手続きとして定められた正しい(合法的)手続きをとったかどうかという点で正統性が論じされることもある。具体的にはベトナム戦争イラク戦争では、国連決議に基づく正統性が問題となった。

支配の理念型[編集]

政治権力による実効性のある支配の背景には、突き詰めると暴力による強制力がある。服従者に暴力を見せつけなくても効率よく権力を行使できるようにするには、政治権力を持つものの正統性が必要になる[1]マックス・ヴェーバーは人々が正統性を信じ込むことによって内面的に支えられ、安定的に成り立っている秩序を「支配」と呼んだ[1]。独占的な暴力に対して常に支配され続ける人々の服従の根拠を「支配の内的な正当化」と呼び、伝統的、カリスマ的、合法的正当(統)性の三つの分類を提示して支配の特質を考察した[2][3]。 実際の支配形態は、これらの類型が混合する場合も多い[1]

伝統的支配
世襲相続など、歴史上の連続性を根拠として正当性を確立する事である。前近代社会や先例が重んじられる社会で多く見られる。
カリスマ的支配
軍事的英雄や民衆扇動家など、カリスマ的人物の権威により支配の正当性を確立する事である。現存する人物のみならず、歴史上の宗教的カリスマの権威に基づき支配を確立する事も含まれる。(ex イラン革命
合法的支配
人々が合法的だと信じる方法により支配を確立する事である。人々は権力者個人に服従するのでは無く制定された規則に服従する。例えば、民主主義社会では国民市民の総意を根拠として支配の正当性を確立する。官僚制による支配もこの類型に含まれる。

ハーバーマスは、情報操作によって人々が正統性を信じ込まされているだけの状態は正統とは看做さず、妥当性を論拠として真理を追究する状態が出現した場合のみ、本当の意味での正統性を確保した「理想的発話状態」であるとした[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 檜山雅人・加藤秀治郎『政治学の基礎』 一藝社 2001年 第2刷 ISBN 4901253212 pp.19-22.
  2. ^ 『政治学への道案内』(高畠通敏,三一書房,1995年) P64,P61 などを参照
  3. ^ 伊藤恭彦『政治哲学』 <ブックガイドシリーズ 基本の30冊> 人文書房 2012年 ISBN 97844090010805 pp.22-27.

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Dogan, M. ed. 1988. Comparing pluralist democracies: Strains on legitimacy. Boulder: Westview Press.
  • Habermas, J. 1973. Legitimation crisis. Boston: Beacon Books.
  • Sternberger, D. 1968. Legitimacy. in International Encyclopedia of Social Sciences. New York: Macmillan Free Press.
  • Weber, M. 1978. Economy and society, eds. G. Roth, C. Wittich. vol 1. Berkeley: Univ. California Press.