愛南町個人情報流出事件

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愛南町個人情報流出事件(あいなんちょうこじんじょうほうりゅうしゅつじけん)とは、愛媛県南宇和郡愛南町にて2007年に明るみに出た、外注業者の不注意により個人情報が多量に流出した事故のこと。

概要[編集]

2007年5月、総務省から愛媛県を通じて愛南町に個人情報の流出を照会して判明。平成の市町村合併に伴う電算データ統一作業の過程で、委託先のデンケン(愛媛県宇和島市)が納期遅れを恐れ、無断で山口電子計算センター(YCC社、山口県山口市)に再委託。YCC社の北九州市の事業所の元社員が担当したが、作業終了後、データを後日の照会等に備えて自宅に持ち帰り、私物のパソコンにコピー保存、その後、夫(同じく情報処理会社社員)がそのパソコンでファイル交換ソフトのウィニーを使用。4月になってウィルスに感染、流出したもの。

町は事情説明のため職員が手分けして全戸訪問し、委託会社であるデンケン社に対して損害を請求した。デンケン社は再委託先であるYCC社に損賠賠償を請求した。

流出したデータは住所や氏名、生年月日など住民基本台帳データや家賃の振替口座番号などが含まれている。住民票コード(4000人以上が変更した)や口座番号は変更可能だが、その他の氏名や生年月日などは変えようがなく、データ流出に対しては、架空請求など身に覚えのない請求に注意することくらいしか打つ手はなく、町民は不安を抱えている。

その後、愛南町だけでなく、秋田県北秋田市、山口県山口市、福岡県嘉麻市長崎県対馬市のデータも同様に流出していたことが判明した。

なお、デンケン社は宇和島自動車の関連会社。

経過[編集]

  • 2003年
    • 4月21日 南宇和郡合併協議会が、合併に向けたデータ移行などの業務をデンケンに委託。納期は2004年9月30日。
  • 2004年
    • 7月 工程遅れからデンケンは、業務完了保証人の日本電気(NEC)松山支店に支援協力を依頼。山口電子計算センター (YCC) を紹介される。
    • 8月5日 デンケンが合併協議会の承諾を得ないまま、YCCに業務を再委託。
    • 8月 デンケンがデータをCDにコピーし、YCC北九州事業所に郵送。この後、問題となるYCC社員が社有ノートパソコンにデータ保存。
    • 10月1日 合併により愛南町誕生。
    • 11月15日 業務完了・引き渡し。
  • 2005年
    • 8月頃 YCC社員女性に同社が、社有ノートパソコンの返却を指示。女性は自宅のパソコンにデータ保存。
    • 9月頃 YCC社員女性の夫が、自宅パソコンにファイル交換ソフト「ウィニー」をインストール。
  • 2006年
    • 3月 YCC社員女性、YCCを退職。
  • 2007年
    • 4月30日 元社員宅のパソコンにウイルスが感染、インターネット上に情報流出。
    • 5月13日 NECが情報流出を発見。
    • 5月14日 総務省が愛媛県を通じ、愛南町に情報流出を連絡。
    • 5月16日 愛南町が約4万2000件の情報流出を確認と発表。
    • 5月18日 愛南町が流出情報は約14万3000件と追加発表、その後愛南町職員が総出で、事情説明と謝罪のため全戸訪問を開始。
    • 8月13日 愛南町がデンケンに対応経費1453万円を請求、同27日支払い。
    • 9月23日 デンケンがYCCに1522万円の損害賠償請求を提訴。
    • 11月15日 YCCは争う姿勢を示す。
  • 2009年
    • 6月4日 山口地方裁判所で判決。事件番号平成19(ワ)331 事件名 損害賠償請求事件

問題点[編集]

  • 委託業者による無断業務再委託
  • 町の再委託についてのチェック体制
  • 電算処理会社への委託、再委託ルールが不明確
  • 情報処理事業者の従業員であり、情報管理に最も厳格なはずの社員がルールを無視してデータを持ち出したこと。
  • 委託会社のチェックが効かなかったこと
  • 念のため個人PCに控えとして個人情報を含むデータを保存したこと
  • 業務データを扱うPCを個人PCと共用していたこと
  • 危険性が指摘されていたウィニーを情報処理会社の社員が個人PCにインストール使用したこと。
  • 再委託が常態化している業界の実態

外部リンク[編集]