安部司

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安部 司あべ つかさ1951年 - )は、日本食品添加物評論家である。

人物・来歴[編集]

福岡県福岡市生まれ。NPO熊本県有機農業研究会JAS判定員。経済産業省国家資格水質第一種公害防止管理者。食品製造関係の特許4件取得。

山口大学文理学部化学科を卒業したのち総合商社の食品課に勤め、食品添加物のセールスマンとしてすぐれた成績を上げていたが、ある日、自宅の食卓に自分が開発に関わったミートボールを発見し、自分の子供たちに食べさせたくないものを自分が作っていたということに初めて気がつき、愕然とした[1]。ほどなく会社を退職。

2005年、『食品の裏側 - みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)を出版。現在は海外(中国、アメリカ、東南アジア)を拠点にした食品開発と、その輸入の仕事に携わっている。また年間150回を数えるほどの講演活動を日本全国で行っている。2009年、『なにを食べたらいいの?』新潮社)を出版。

活動[編集]

講演では、食品添加物やパウダー状の食品・香辛料を数十種類持ち込み、白い粉だけでできるインスタントラーメンスープや、清涼飲料水の合成を実演して見せる。インターネット配信番組『博士も知らないニッポンのウラ[2]でも同様の実演をし、ホストの水道橋博士宮崎哲弥を驚かせた。

グルメ漫画の『美味しんぼ[3]でも紹介された。また、インターネット配信番組『マル激トーク・オン・ディマンド』第262回[4]などのメディアで紹介されている。

スタンス[編集]

添加物の毒性を訴えるつもりはないという。「そんなことを言ったらすぐに食品会社に「その根拠を示せ」と突っ込まれます」「しかし、添加物が間接的にもたらす害を言うことは出来る」「まず糖分・塩分・油分の取りすぎです」(『美味しんぼ』第101巻より)

食品添加物のおかげで、「安い」「簡単」「便利」「美しい」「オイシイ」という現在の加工食品が成立している。これをメリットとして認めつつも、このことに無自覚で、人工的な味に慣れきっている消費者たちの自覚をうながそうとする(『なにを食べたらいいの?』)。

ウェブサイト(日経BP社『SAFETY JAPAN』)のインタビューでは以下のように述べている。

「(食品添加物を利用することで実現した)簡単で便利な生活もいいけれど、その代償として失っているものは確実にあります。それが何なのか、本当にこのままでよいのか。この辺りで立ち止まって、一度きちんと考えてみてはどうでしょうか。私の話がそのきっかけになるのであれば、それが一番うれしいことです。」

批判[編集]

フリー科学ライター松永和紀は著書『メディア・バイアス』[5]で、多くのメディア(テレビ・週刊誌など)がこの本に書かれていることを鵜呑みにして伝えたことを批判し、

  • 「プロの書き手、取材者であれば、著者が『食品添加物の神様と呼ばれた』と自ら書いていることに注目して本当かどうか検証し、添加物業界や日本食品衛生学会でこの著者を知るものが皆無であることに気付くべきでしょう」
  • 「情報の受け手は、著者の勤務先の電話番号まで入った本などめったにない、という事実を踏まえて提供されている情報を受け止め、真価を慎重に見極めるべきでしょう」

と書いている(この批判に対し『博士も知らないニッポンのウラ』に出演した際、「一般の主婦の方にも理解しやすいようにという考えから化学的論証を省略したため、誤解を招く点があったかも知れず、申し訳なかった。」という内容で番組内において謝っている[6])。

毎日新聞編集委員の小島正美も著書『誤解だらけの「危ない話」』[7]で、「それ(安部の主張)を聞いて、そのまま素直に記事にする記者たちの思考」や「安部氏を講演会に招いて、食品添加物の恐怖を伝えさせている地方自治体の思考」を問題にし、

  • 「安部氏が脚光を浴びたのは、添加物のリスクが高いという事実よりも、ニュース性があったからだ。ニュースを構成する『おもしろ要素』が揃っていたのが安部氏のケースなのだ」
  • 「そのニュース性を構成する要素や言葉は、『内部告発』『便利さへの代償(文明への批判)』『白い粉』『子どもや家族への愛』『複合汚染』である」
  • 「『危ない』だけを強調しているのではなく、文明の両面性を問うているという言い方で自分の身に逃げのオブラートをかぶせる。これが安部氏の特徴だ」

と書いている[8]

鈴鹿医療科学大学教授長村洋一は、2007年には自身が設立した健康食品管理士認定協会の会報上で、直接名指しはしないまでも、以下のように批判している[9]

  • 「(「食品」そのものの粉末を)『試薬瓶』に入れ、いかにも化学物質のように見せているわけである。化学に縁遠い人達からは、これらはすべてダイオキシンなどにつながる『怖い化学物質』のように見える」
  • 「この著者によって目から鱗が取れた人は、化学の専門家ではない人たちばかりである。何故かと言えば、講演を聴いて目を開かれた方々は皆『自分たちが食べている豚骨スープが、実は有機合成された化学物質の固まりだと認識して食品の見方が変わった』と言っておられるからである。化学の世界で天然物を抽出して『これは有機化学的に合成しました』と言えばいわゆるデータの捏造であり、一般社会でこのような行為のことを『だます』という」
  • 「食品添加物の安全性とその有用性についてまともな知識の人が読めば、気の毒にと感ずるようなことをしなければならないほどに業者はすでに追い込まれ始めている。このようなインチキ大道芸人のパフォーマンスの結果は一般の方々に不要な不安を与えるだけに、まさに、一種の詐欺行為または犯罪行為と言ってもよいほどあくどい行為である」
  • 「『白い粉』という麻薬のような表現を用いていることからも明らかなように、この本を読んだ人は最終的には『食品添加物は可能な限りなく排除しなければいけない』と確信をする。確信に至るまでの経過において、読者はこの著者は今までの『買ってはいけない』のような世の中の人に恐怖を煽り立てているわけではなく食文化を語っていると感じて共鳴しているだけに、この確信には精神的な基盤が大きく関与している」

また長村は、2010年にはWebサイト「FoodScience」(日経BP社)[10]の記事で実名を挙げて、公的機関である枚方市の消費生活センターが安部の講演会を開催することの問題点を指摘している[11]

著書[編集]

  • 『食品の裏側—みんな大好きな食品添加物』 東洋経済新報社、2005年 ISBN 978-4492222669
  • 『なにを食べたらいいの?』 新潮社、2009年 ISBN 978-4103135715

脚注[編集]

  1. ^ 『博士も知らないニッポンのウラ』
  2. ^ 2008年2月1日配信、ミランカ
  3. ^ 単行本第101巻、2008年3月5日初版。この回は雑誌掲載時(『ビッグコミックスピリッツ』2007年48号)には「添加物だけで豚骨スープが作れる」となっていたが、実際には香辛料や食品材料が使われていたため単行本では「これだけの材料で〜」と修正されている。
  4. ^ 2006年04月07日配信、ホストは神保哲生宮台真司
  5. ^ 光文社新書、2007年、ISBN 4334033989
  6. ^ 『博士も知らないニッポンのウラ』
  7. ^ エネルギーフォーラム、2008年、ISBN 9784885553523
  8. ^ 安井至による書評 「4次元エコウォッチング 環境の『危ない話』の報道の読み方(09/01/14)」
  9. ^ 会報 平成19年(2007年)発行 会報Vol.2 - 「食品添加物を巡る諸問題 その1 食品添加物に化学薬品的イメージを強調して行われるバッシング」 - 「その2 量を無視した危険論のナンセンス」 - 「その3 うまみ調味料は何が問題か」
  10. ^ 「FoodScience」(日経BP社)は食の機能と安全に関するWebサイト。2010年3月に閉鎖。過去記事には Food Watch Japan 、FOOCOM.NET などで読むことができるものもある。
  11. ^ FoodScience 多幸之介が斬る食の問題(長村 洋一) 枚方市はA氏の質問を真摯に受け止めて下さい(2010年2月3日) - 枚方市はA氏の質問にどう回答されたのか(2010年3月3日)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]