国王演説

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国王演説あるいは女王演説(こくおうえんぜつ、Speech from the Throne, Throne Speech)は、イギリスをはじめとする王国君主国)において、国王が議会の開会式で全議員を集め、今後の政府の方針を演説する儀式である。この場合、朗読するのは国王であるが、その原稿は時の政府がその方針のもとに作成したもので、国王は演説内容に対する裁量権を持たない。

国王演説後には、議会は国王が演説した政府の施政方針の内容について審議し、採決する。

各国の例[編集]

イギリス[編集]

イギリスの君主は、議会における女王(または国王)として、庶民院下院)および貴族院上院)とともにイギリス議会を構成する主体である。1952年以降のイギリス君主はエリザベス2世であり、女王であることから、国王演説は一般的には女王演説と呼ばれている。正式には「陛下の最も慈愛ある演説」(Her(またはHis) Majesty's Most Gracious Speech)。女王演説は毎年11月に議会開会式で、上院議場において上下両院の議員に対して行われる。

ローブを着用した上院議員が自席で起立する中で君主が入場し、君主が玉座に着席した後に君主の許しにより上院議員らが着席する。その後、下院議員を呼び出す黒杖官が使者として使者下院議場に向かうが、黒杖官が下院の扉の手前まで達すると一旦扉を閉ざし、黒杖官が扉を3度叩いて開けさせるという儀式が行われる。下院議場に入った黒杖官が呼び出しの旨を述べると、議員の一人が何らかの冗談を飛ばず習わしもある。この後、与野党の下院議員が上院議場に向かう際には首相と野党党首が肩を並べて歩き、言葉も交わされる。議場に達した下院議員らは首相に至るまで終始起立状態となる。下院議員は議長を除き平服である。演説中、君主はつとめて感情のこもらない口調で発声し、議員もその場では演説内容への態度表明を行わない。演説が終わると、議場の者が起立する中で君主が退場し終了となる。

翌日からはその演説で示された政府の施政方針について、両院で賛成・反対の立場から討論が行われる。君主による演説であることをはばかり、名目上は実質的な法的効果を持たないダミー法案の審議という形となる。数日間の審議を経て採決が行われ、下院で可決されれば内閣は信任されたことと見なされる。

なお、国王チャールズ1世が議会により処刑された経緯から、君主が議会に赴く際には下院議員1名が君主の人質となりバッキンガム宮殿に滞在するという慣習がある。現代では全く儀礼的な慣習であるが、この慣習によってベテランの議員1名は登院せず、宮殿においてテレビで演説を視聴し、君主が帰城するまで宮殿にとどまることとなっている。

イギリス以外の英連邦王国[編集]

イギリスと君主を共有する王国(英連邦王国)でも国王演説は行われるが、通常は総督により代行される。君主がその国を訪問しているときのみ君主自身により行われる。

またカナダオーストラリアでは、州議会でも副総督により行われる。エリザベス2世は、オーストラリアの州議会において自ら女王演説を行ったことがある。

英連邦王国以外[編集]

オランダ[1]ノルウェーにも国王演説の制度が存在する。タイにも存在するが、同国の国王は実権がないとまでは言い切れず、やや事情が異なる。

信任議決を伴わない類似例[編集]

日本では施政方針演説所信表明演説がこれに類似の制度であるが、ひとたび天皇の口から発せられた言葉に対して異議を差し挟むことがはばかられがちな日本では帝国議会以来、天皇は国会開会式で簡単な勅語戦後おことば)を発するのみで、施政方針は首相が演説するのが慣例である。また代表質問の対象ではあるが、議決の対象ではない。ルクセンブルクも君主国であるが、同様に首相による国政報告とそれに対する討論が行われる。

アメリカ合衆国一般教書演説)やロシアフィリピン南アフリカ共和国では、大統領による両院合同会議における演説が定例化されている。これらの国では大統領は議会に責任を負わないこともあり、議決はもとより質問や討論の対象でもない。

出典[編集]

  1. ^ [1]