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司法解剖

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

司法解剖(しほうかいぼう、: internal examination, judicial autopsy)は、犯罪性のある死体またはその疑いのある死体の死因などを究明するために行われる解剖

根拠法規

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刑事訴訟法168条1項「鑑定人による死体の解剖」、同法229条「検視」に基づいて、刑事事件の処理を目的に行われる。 なお、死体解剖保存法は司法解剖の根拠となる法律ではないが、死体の取扱については同法の規定を遵守する必要がある。

多くのケースでは被解剖者の遺族への心情的配慮から、その了承を得た上で解剖が行われているが、法律上は裁判所から「鑑定処分許可状」の発行を受ければ、遺族の同意が得られなくても職権で強制的に行うことが可能である。

施行

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司法解剖を行う者の資格について詳細な規定はなく、法的には、学識を有し、かつ捜査当局の嘱託を受けた者なら誰でも行えると解釈できるので、大学病院[1]から離れた地域においては、警察協力医などの臨床医によって行われるケースも存在する[2]

しかし、法医学の分野における科学技術が格段に進歩した今日では、解剖によって得られた情報が刑事事件の真相解明や犯人特定などに重大な影響を与えることから、事件発生現場や死体発見現場に最寄の大学病院において、高度な専門知識を持つ法医学者の手で執行するのが原則である[2]。この場合、執刀者は前述の「鑑定処分許可状」のもと、捜査を担当する検察官警察署長などの嘱託を受けて解剖を行う。

そもそも死体に対する解剖が医行為であるかどうかについても明確な判断が示されていなかったが、平成27年3月31日の参議院文教科学委員会における秋野公造参議院議員の質疑に対して、厚生労働省は死亡診断とそれに付随する死亡診断書および死体検案書の交付が医行為であることに触れて、医行為であることを明確にした[3]

運用

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犯罪被害死体の全てが司法解剖されるわけではなく、交通事故など受傷状況が明確で外表検査で死因も明らかにし得る場合は解剖せず、検視のみで終わる場合が多い。しかしいったん「解剖必要」との結論に至れば、死因や状況のいかんに関わらず解剖される運用となっており、遺族も事実上拒否できない。大規模事件・事故の際、この運用を指摘する新聞記事が掲載されることがある。

現状

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現状として、予算や医師不足などの理由から、警察の死体取扱い件数のほとんどが司法解剖されていない[4]。また、同様の事情により変死と思われるような状況でも、自殺事故心不全で片付けられることもあるともいわれている[5]。打開策としてオートプシー・イメージングが提案されているが、運用のための法案等システムが未だ整っていない。

1998年(平成10年)以降の死体取扱数とと解剖率[6][7]
年次 死体取扱数 解剖率
1998年 107,173 8.9%
1999年 114,267 9.0%
2000年 116,164 10.5%
2001年 119,396 9.7%
2002年 125,403 9.7%
2003年 133,922 8.9%
2004年 136,092 9.5%
2005年 148,475 9.1%
2006年 149,239 9.4%
2007年 154,579 9.5%
2008年 161,838 9.7%
2009年 160,858 10.1%
2010年 171,025 11.2%
2011年 173,735 11.0%
2012年 173,833 11.1%
2013年 169,047 11.3%
2014年 166,353 11.7%
2015年 162,881 12.4%
2016年 161,407 12.7%
2017年 165,837 12.4%
2018年 170,174 12.0%
2019年 167,808 11.5%
2020年 169,496 10.8%
2021年 173,220 10.4%
2022年 196,103 9.5%
2023年 198,664 10.1%
2024年 204,184 9.8%
2024年(令和6年)の都道府県別死体取扱状況[7]
都道府県警察 死体取扱数 検視官臨場  死体解剖
臨場数 臨場率 司法解剖 調査法解剖 その他 解剖総数 解剖率
北海道 9,522 8,854 93.0% 925 54 5 984 10.3%
青 森 2,345 2,232 95.2% 258 3 0 261 11.1%
岩 手 2,139 1,820 85.1% 133 21 0 154 7.2%
宮 城 3,674 3,360 91.5% 360 77 0 437 11.9%
秋 田 1,495 1,474 98.6% 185 34 1 220 14.7%
山 形 1,633 1,514 92.7% 194 79 0 273 16.7%
福 島 3,243 2,800 86.3% 135 16 1 152 4.7%
警視庁 25,667 15,987 62.3% 205 660 3,171 4,036 15.7%
茨 城 5,254 5,115 97.4% 391 56 30 477 9.1%
栃 木 3,594 3,369 93.7% 185 47 3 235 6.5%
群 馬 3,322 3,048 91.8% 128 20 1 149 4.5%
埼 玉 12,319 8,746 71.0% 331 49 17 397 3.2%
千 葉 11,389 11,255 98.8% 507 134 0 641 5.6%
神奈川 14,666 8,433 57.5% 751 681 1,810 3,242 22.1%
新 潟 3,402 2,320 68.2% 197 10 2 209 6.1%
山 梨 1,326 1,323 99.8% 56 9 0 65 4.9%
長 野 3,040 2,379 78.3% 207 0 0 207 6.8%
静 岡 4,896 4,426 90.4% 191 28 2 221 4.5%
富 山 1,609 1,553 96.5% 148 14 0 162 10.1%
石 川 1,737 1,679 96.7% 126 16 0 142 8.2%
福 井 1,297 1,232 95.0% 82 26 0 108 8.3%
岐 阜 2,451 2,096 85.5% 149 13 0 162 6.6%
愛 知 9,319 6,572 70.5% 274 180 0 454 4.9%
三 重 2,892 2,287 79.1% 136 14 0 150 5.2%
滋 賀 1,911 1,740 91.1% 133 28 0 161 8.4%
京 都 3,470 3,347 96.5% 211 87 15 313 9.0%
大 阪 17,449 13,630 78.1% 781 145 320 1,246 7.1%
兵 庫 7,753 7,319 94.4% 268 440 1,226 1,934 24.9%
奈 良 2,317 2,194 94.7% 204 23 0 227 9.8%
和歌山 1,713 1,610 94.0% 140 37 0 177 10.3%
鳥 取 1,041 1,041 100.0% 58 35 0 93 8.9%
島 根 1,034 978 94.6% 74 8 0 82 7.9%
岡 山 3,008 2,791 92.8% 117 58 0 175 5.8%
広 島 3,631 3,515 96.8% 65 5 0 70 1.9%
山 口 2,405 2,378 98.9% 77 25 0 102 4.2%
徳 島 1,144 1,129 98.7% 72 5 0 77 6.7%
香 川 1,784 1,206 67.6% 102 15 0 117 6.6%
愛 媛 2,282 2,248 98.5% 123 14 0 137 6.0%
高 知 1,277 1,272 99.6% 82 12 0 94 7.4%
福 岡 6,668 6,086 91.3% 333 31 0 364 5.5%
佐 賀 1,172 1,155 98.5% 86 18 0 104 8.9%
長 崎 1,848 1,550 83.9% 134 15 4 153 8.3%
熊 本 2,390 2,204 92.2% 120 9 0 129 5.4%
大 分 1,534 1,502 97.9% 121 20 0 141 9.2%
宮 崎 1,633 1,629 99.8% 67 17 0 84 5.1%
鹿児島 2,259 1,904 84.3% 163 27 0 190 8.4%
沖 縄 2,230 2,011 90.2% 126 191 21 338 15.2%
全国 計 204,184 168,313 82.4% 9,911 3,506 6,629 20,046 9.8%
都道府県警察 死体取扱数 臨場数 臨場率 司法解剖 調査法解剖 その他 解剖総数 解剖率
検視官臨場 死体解剖

他、神奈川県に於いては、司法解剖などをはじめとする解剖を横浜市開業医1人に事実上任せきりにし、この開業医が2012年度に1人で年3,835件の解剖を行っていたことが判明しており、解剖の質の低下と、それによる犯罪死の見逃しに繋がりかねないと懸念されている[9]

脚注

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  1. ^ 岩手県を除く全都道府県には国公立の大学病院を備える
  2. ^ a b 司法解剖』 - コトバンク
  3. ^ 参議院会議録情報 第189回国会文教科学委員会第3号 https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118915104X00320150331
  4. ^ 「病死」扱いの無念、犯罪被害者は2度殺される〜死因究明に不可欠な解剖が軽視される日本東洋経済オンライン2018年4月20日
  5. ^ Japan's police see no evil(Los Angeles Times/November 09, 2007)
  6. ^ 厚生労働省 (9 September 2022). 令和4年版死因究明等推進白書 第1 章 我が国における死因究明等の推進に向けた政府の取組 第1章図表のバックデータ 資1-1-1-2警察における死体取扱数等の推移 (Excel) (Report). 2022年9月11日閲覧.
  7. ^ a b 警察庁 (2024). 死体取扱状況 (PDF) (Report). 2025年7月20日閲覧.
  8. ^ デジタル大辞泉. “新法解剖”. コトバンク. 2021年3月20日閲覧。
  9. ^ 一條優太 (2014年4月3日). “横浜市の監察医:解剖、1人で年3835件…質確保に懸念”. 毎日新聞社. 2014年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月6日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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