副振動
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副振動(ふくしんどう、英語: secondary undulation)とは潮位の変化のうち潮汐や高潮、津波などによって発生する以外のものを指す言葉である。数分から数十分程度の周期の水面振動で湾や海峡においてはごく一般的に見られる現象。潮汐によって発生する潮位の変化を主振動と考えて、それに対する用語である。スイスのレマン湖で発生する同様の現象に対する言葉から「セイシュ」(Seiche)とも呼ばれる。また、気象現象が原因となっている副振動波は、気象津波とも呼ばれる[1]。
原因がはっきりとわからない潮位の異常を指す異常潮の一種にも分類される。異常潮にはもう1つ、数日程度持続する異常潮位というものがある。
現象[編集]
外洋で発生した津波や微気圧変動[2]、風の影響などによって発生し湾内に入り込んだ波と湾内の固有波が反射・共振することが要因として考えられている[3][1]が、原因不明のものもある。発生する場合の周期はその湾の地形などによって決定される固有振動数が影響し、振幅にも地形が影響する。大きな振幅の副振動が発生すると船舶や沿岸の建造物などに被害をもたらすことがある。
発生例と被害[編集]
北海、地中海沿岸地域での観測も報告されている[1]。
日本国内では鹿児島県・熊本県・長崎県にかけての九州西岸で見られる。特に長崎湾で発生する副振動が最大のものとして知られ、振幅が3メートルを超えることがある。長崎では「あびき」とも呼ばれ[4]、漁業用の網が流される「網引き」が語源であると考えられている。このあびきの原因は、東シナ海大陸棚上で発生した擾乱による気圧の急変が原因とされる[5]。
- 1979年3月31日に発生した副振動では長崎検潮所での観測で振幅 278cmを記録し[4]、湾奥では 470cm に達していたと推測されている。繋留ロープが切断された船が流出し、三菱重工業長崎造船所でドックのゲートが転倒するなどの被害を出している[4]。
- 2009年2月24日深夜から26日にかけ、長崎県から鹿児島県奄美地方にかけての沿岸部で副振動が観測された。観測された潮位は熊本県天草市で 197cm、長崎港(長崎市)で 157cm、枕崎港(鹿児島県枕崎市)で 143cm、鹿児島県上島甑島浦で 290cm[2]。天草市で住宅8棟が床上・床下浸水し、鹿児島県で係留されていた小型船など30隻が沈没、転覆するなどの被害が出た[6]。上甑島ではマグロの養殖場が被害をうけマグロが湾内に逃げ出した。[7]。
- 2011年に発生した東北地方太平洋沖地震の際には、箱根の芦ノ湖や富士五湖の西湖で通常の波浪とは異なった長周期の高波が観測され、地震が原因となってこの現象が起きていたと報告された[8]。
脚注[編集]
- ^ a b c 浅野敏之、山城徹、齋田倫範、田中健路:九州東シナ海沿岸で副振動災害を引き起こす気象津波の発生機構に関する研究 土木学会論文集B2(海岸工学) Vol.70 (2014) No.1 p.79-96
- ^ a b 2009年2月に上甑島で潮位副振動を発生させた気象場に関する解析 土木学会論文集B2(海岸工学) Vol.66 (2010) No.1 P181-185
- ^ 高橋將:石狩湾の津波と副振動 北海道大學工學部研究報告 1986年3月25日 130巻 p.17-32
- ^ a b c 九州西方沿岸域を襲う巨大波「あびき」の正体をとらえる 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻大気海洋科学講座
- ^ 長崎地方気象台 「あびき」とは
- ^ 副振動で30隻沈没・転覆、気圧急変 海面激しく上下 読売新聞(九州発) 2009年2月26日
- ^ 副振動による中谷水産株式会社への影響について 2009年2月26日
- ^ 鈴木猛康:2011年東北地方太平洋沖地震で発生した西湖のサイスミック・セイシュ 土木学会論文集A1(構造・地震工学) Vol.68 (2012) No.4 p.I_152-I_160
関連項目[編集]
- 異常潮位
- 津波 - 数十分程度の周期で潮位の上下を繰り返す、湾奥や海峡などの狭い海域で振幅が大きくなる、河川を遡上することがある、漁船など海岸付近に被害をもたらす、といった面で比較的似通った現象である。ただし発生メカニズム等は全く異なる
外部リンク[編集]
- 潮位の副振動 (PDF) 気象庁
- 気象庁 潮汐・海面水位のデータ 各年・各月の潮汐 解説
- 函館海洋気象台 潮汐の知識の解説(2)
- 神戸海洋気象台 異常潮について
- 長崎地方気象台 -あびき-
- 喜岡渉、柏原謙爾、相川久紀、田中正博:多方向不規則波による港内副振動の予測モデルとその適用性 海岸工学論文集 Vol.43 (1996) P196-200