沈没

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沈没(ちんぼつ)は、船舶・舟艇などが没すること。沈没した船は沈没船と呼ばれる。

定義[編集]

沈没がいかなる状態かという定義について学説は一致していない[1]

最も厳格な説では船体全部が海中に没していなければ沈没ではないとするものもあり、イギリスでは1886年のBryant & May v. London Assurance Co.事件で後部甲板が浸水したまま目的港に到着した船舶を沈没船とみるべきか論争になった[1]。この事件では多くの積み荷が濡損を生じ、原告は沈没に基づく損害賠償を請求したが、特別陪審官は一部の浸水であるとして沈没とは認めず被告に有利な判決を下した[1]

他方、完全に船体が海中に没入していなくても沈没に当たるという説や、必ずしも海底にまで沈降していなくても沈没に当たるという説もある[1]

現代の海上保険法上では船体の没入が全部か一部かは沈没の決定要素ではなく、浸水の結果、船舶が航行性を奪われたときは(木材等の浮力のある積荷の影響や浅瀬での事故など)船体の一部が海上に現れていても沈没と呼ぶべきとされている[1]

船舶のほか、固定した水上施設(石油プラットフォーム桟橋メガフロートなど)、航空機(水上に墜落不時着した後、あるいは水上機)などについても用いる。

潜水艦などについては、もちろん水中での運用は沈没ではなく、深度の制御が不能となり、自力で浮上できなくなった場合、「沈没」とされる。

要因[編集]

1994年にバルト海に沈んだエストニアのライフクラフト

船舶の沈没の要因としては、事故戦闘行為、廃棄などがある。

沈没に関する立法[編集]

沈没の立証[編集]

船舶が海難で沈没した場合、船員とともに海底に沈んでしまった場合や乗組員が退去して漂流船になったものが沈没した場合には沈没の事実を立証することが難しい[1]。そのため各国の立法は、一定期間、船舶が消息を絶ったときは何らかの海難によって全損したものとみなしている[1]

1744年のGreen v. Brown 事件の判決では、ノースカロライナからロンドンまでの航海に保険が付けられた船舶が、4年間消息を絶っていることについて沈没によって滅失したものと断定するのが当然とした[1]

1816年のHoustman v. Thornton 事件の判決では、サバンナからフランダースまで平均7週間とされた航海に出た保険が付けられた船舶が、9カ月消息を絶っていることについて沈没で行方不明になっていると判決が下された[1]

日本の法令[編集]

  • 日本船舶が沈没したときは船舶所有者はその事実を知った日から2週間以内に抹消登録し、遅滞なく船舶国籍証書を返還しなければならない(船舶法14条1項)。
  • 船長は船舶が沈没したときは国土交通大臣にその旨を報告しなければならない(船員法19条)。
  • 船舶が沈没した場合には船員の雇入契約は終了する(船員法39条1項)。
  • 船員保険において、船舶が沈没した際、現にその船舶に乗っていた被保険者若しくは被保険者であった者の生死が3か月間分からない場合又はこれらの者の死亡の事実が3か月以内に明らかとなったが具体的な死亡時期が分からない場合には、葬祭料、障害年金差額一時金、遺族年金、遺族一時金及び遺族年金差額一時金の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没した日にその者は死亡したものと推定される(船員保険法42条)。

比喩的表現[編集]

大辞泉によると、遊びに夢中になって仕事や用事を忘れてしまうこと。という意味があることから、長期間の海外個人旅行をしているバックパッカーなどが、旅行の本来の目的である観光を中断し、一つの街への滞在を目的としてしまうことを「沈没」と呼ぶ。1996年に「旅ときどき沈没」(著:蔵前仁一 ISBN 978-4938463380)が出版されていることから、1990年代から使われてきた。日本人旅行者には、主に東南アジアの都市で、宿泊施設や食事などの物価が安く、比較的治安が良く、ビザの取得が容易で、風光明媚な場所、日本人宿が存在する場所が好まれている。

「沈没」を目的として海外に長期滞在する人もおり外こもり(そとこもり、ひきこもりをもじった表現。)と呼ばれることもある。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i 橋本犀之助. “海上危険論(彦根高商論叢7)”. 滋賀大学. pp. 155-158. 2021年7月20日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]