付喪神

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付喪神つくも神(つくもがみ)[1]とは、日本に伝わる、長い年月を経た道具生物など)や自然物にや精霊(霊魂)などが宿ったものの総称である[2]

概要[編集]

「付喪神」という漢字表記は、室町時代絵巻物付喪神絵巻』に見られるものであり、道具は100年という年月を経ると精霊を得てこれに変化することが出来るとされている。また「つくも」とは「百年に一年たらぬ」との表記も同絵巻の詞書きにあり「九十九」(つくも)のことであるとされており、『伊勢物語』にみられる老女の白髪をあらわした言葉「つくも髪」を受けて「長い時間(九十九年)」を示していると解釈されている[2]。また「多種多様な万物(九十九種類)」をさすともされているが、「つくもがみ」という表現を文中に記している文献資料は多くは存在せず詳細は伝来していない。

絵画作品[編集]

室町時代の『百鬼夜行絵巻』(作者不詳)。道具の妖怪であることから一般に付喪神であると考えられている。

『付喪神絵巻』よりも先行していると見られる絵巻物にも、道具がモチーフとなっている妖怪を絵画で確認することは出来、『土蜘蛛草紙』には、五徳が頭についているものや、手杵に蛇の体と人の腕が2本くっついたものや、角盥(つのだらい)に歯が生えそのまま顔になっているものなどが描かれている。また、角盥がモチーフとなったとおぼしい顔は『融通念仏縁起』や『不動利益縁起絵巻』に描かれている疫神にほぼ同様のかたちのものが描かれている。ただし、いずれも道具だけではなく、動物や鬼のかたちをしたものと混成している。これは『付喪神絵巻』や『百鬼夜行絵巻』などにも見られる特徴である[3]

おなじく絵巻物である『化物草紙』では、銚子(ちょうし)などが化けた話、かかしが化けた話などが描かれている。

付喪神絵巻』では冒頭に「陰陽雑記に云ふ。 器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑かす、これを付喪神と号すと云へり」とあり、道具が変化することを「付喪神」としている(ただし『陰陽雑記』という書物の実在は確認されていない)[2]。本文中、それらの姿は「男女老少の姿」(人間のかたち)「魑魅悪鬼の相」(鬼のかたち)「狐狼野干の形」(動物のかたち)などをとっていると表現されている。

古い現存作品には室町時代のものも確認されている『百鬼夜行絵巻』は、道具の妖怪と見られるものが多く描かれている。現在ではこれら道具の妖怪たちは付喪神を描いたものであるとも考えられており、また、もともと『百鬼夜行絵巻』に描かれている行列の様子は『付喪神絵巻』に見られる妖物たち(年を経た古物)の祭礼行列の箇所を描いたものではないかとも考察されている[4]

道具をあつかった表現[編集]

道具を人格のある存在としてあつかっている作品には、他に『調度歌合』(ちょうどうたあわせ)という道具たちが歌合せをおこなうという形式をとったものも室町時代以前に存在しており、『付喪神絵巻』などで道具が変化する対象としてあつかわれている事と近い発想であるとも考えられる[2]

脚注[編集]

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  1. ^ 小松和彦は「器物の妖怪―付喪神をめぐって」(『憑霊信仰論』1982年 所収)において、江戸時代以前の年をへた生物を含めた広義のつくもがみを「つくも神」、道具由来の妖怪全般を「付喪神」と表記して文章を進めている。
  2. ^ a b c d 田中貴子『百鬼夜行の見える都市』新曜社 1994年、172-181頁。ISBN 4-7885-0480-4
  3. ^ 田中貴子『百鬼夜行の見える都市』新曜社 1994年、170頁。ISBN 4-7885-0480-4
  4. ^ 田中貴子「百鬼夜行絵巻はなおも語る」、『図説百鬼夜行絵巻をよむ』 河出書房新社、1999年、新版2007年)20-21頁 ISBN 978-4-309-76103-9

参考資料[編集]

関連項目[編集]