二重電子捕獲

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原子核物理学
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放射性崩壊
核分裂反応
原子核融合

二重電子捕獲(にじゅうでんしほかく、Double electron capture)は原子核崩壊形式。核子の数がA、原子番号がZである核種(A,Z)において、二重電子捕獲は、(A, Z-2)の核種の方が質量が小さい場合に限って可能である。

この崩壊過程では、原子核内の2つの陽子によって、軌道上にある2つの電子が捕獲され、中性子を生じる。また、2つのニュートリノが放出される。陽子が中性子に変化するので、中性子数は2つ大きくなり、陽子数は2つ小さくなる。そして、質量数Aは変化しない。二重電子捕獲によって陽子数が変わるので、核種は新しい元素に変化する。

たとえば、

{}^{78}_{36}\mathrm{Kr} + \mathrm 2e^- \rightarrow {}^{78}_{34}\mathrm{Se} + 
2\nu_e

この数式ではクリプトン78が二つの電子を捕獲し、セレン78と二つのニュートリノに変化している。

多くの場合、この崩壊過程は単一の電子捕獲のように、より発生する確率の高い現象に隠されてしまう。しかし、他の過程がすべて禁制されるもしくは強く抑制される時は、二重電子捕獲は崩壊の主な形式になる。天然の核種で二重電子捕獲を行うと予測されている元素は35種類も存在している。しかし観測されているのはバリウム130についてのみである。観測が難しい一つの理由として、二重電子捕獲の確率が非常に小さいことがあげられる。実際、この過程における半減期の理論予測はおおよそ1020年である。二つ目の理由として、二重電子捕獲に際して検出できる電磁波や粒子は、[1]励起原子核から生成放出される特性X線オージェ電子に限られることがある。これら粒子の持つエネルギーの範囲はおおよそ1から10keV以下であり、バックグラウンドノイズのレベルが高い。これらの理由から、二重電子捕獲の実験的検出は二重ベータ崩壊の検出よりも難しい。

母原子核と娘原子核の質量差が二つの電子の質量である1.022 MeVよりも大きい場合、陽電子放出電子捕獲の組み合わせのような他の崩壊過程でのエネルギーの解放の許可に十分である。それらは二重電子捕獲と競合し、分岐比は核の特性に依存する。質量の差異が四つの電子の質量である2.044 MeVよりも大きい時、また別の崩壊現象である二重陽電子崩壊が行われ得る。天然の核種でこれら三種類の崩壊現象が同時に可能なものは6つのみである。

無ニュートリノ二重電子捕獲[編集]

二つの電子を捕獲し、二つのニュートリノを放出する上記のような過程は双ニュートリノ二重電子捕獲とよばれるが、これは素粒子物理学の標準模型に許されており、レプトン数法則を含め、保存則に全く違反しない。しかし、レプトン数が保存されなければ、(あるいはニュートリノがニュートリノ自身の反粒子であれば)他の種類の過程が起こりうる。これは無ニュートリノ二重電子捕獲と呼ばれる。この過程では二つの電子が核に捕獲されるが、ニュートリノは放出されない。この過程でのエネルギーの解放は内部の制動放射ガンマ粒子に運び去られる。この崩壊現象は実験では一度たりとも観測されたことがなく、観測されたならば標準模型に矛盾することになる。

式に表せば以下のようになる。

{}^{78}_{36}\mathrm{Kr} + \mathrm 2e^- \rightarrow {}^{78}_{34}\mathrm{Se}

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 捕獲した殻電子がもたらす軌道間準位差の余剰エネルギーによる