ルナ10号

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ルナ10号
オービター(右側)と飛行ステージが結合した状態のルナ10号を再現した模型(ル・ブルジェ航空宇宙博物館)。
所属 ソビエト連邦
国際標識番号 1966-027A
カタログ番号 02126
状態 運用終了
目的 探査(周回)
観測対象
打上げ機 モルニヤロケット
(8K78M)
打上げ日時 1966年3月31日
軌道投入日 1966年4月3日(月へ)
通信途絶日 1966年5月30日
質量 全体:1597kg
オービター:245kg
周回対象
近点高度 (hp) 軌道投入時:349km
運用終了時:378km
遠点高度 (ha) 軌道投入時:1015km
運用終了時:985km
軌道傾斜角 (i) 軌道投入時:71.9°
運用終了時:72.2°
軌道周期 (P) 軌道投入時:2時間58分
搭載機器
ガンマ線スペクトル計 月面のスペクトルを観測
三軸磁力計 月の磁場を観測
流星物質検出器 流星物質を観測
放電カウンター 放電を観測
赤外線観測装置 赤外線を観測
X線検出器 X線を観測
荷電粒子検出器 荷電粒子を観測
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ルナ10号(ロシア語:Луна-10、ラテン文字表記の例:Luna 10)は1966年に打ち上げられたソビエト連邦無人月探査機4月3日に世界で初めての周回軌道に乗ることに成功し、その後2ヶ月に渡って月とその周辺の宇宙空間の観測を行った。

設計[編集]

ルナ10号は、月を周回するオービター(周回船)とオービターを月軌道まで届ける飛行ステージから構成されていた。飛行ステージの設計はルナ9号から受け継がれていたが、ルナ9号のランダーはオービターに置き換えられていた。

オービターは円筒にドームを被せたような形をしており、高さは1.2m、直径0.75m、質量は245kgだった。月を周回しながらの観測を行うよう設計され、観測機器としては、ガンマ線スペクトル計、磁力計、流星物質検出器、放電カウンター、赤外線観測装置、X線検出器、荷電粒子検出器の7種類を搭載していた。

飛行ステージの主な役割は、探査機を減速して月周回軌道に投入することだった(減速がなければ探査機は双曲線を描いて月を通過する)。このため、飛行ステージには強力な逆噴射用ロケットエンジンが搭載されている。ルナ9号の逆噴射エンジンはランダーを低速で着陸させるために使われたが、ルナ10号の場合は月軌道投入のために使われた。また、地球から月へ向かう途中で行う中間軌道修正や、逆噴射ロケットを噴射する際の姿勢制御も飛行ステージの役割だった。

飛行ステージも含めた探査機全体の質量は1597kgだった。電力はあらかじめ搭載されている化学電池によって供給されるため長期間の運用には制約があった。

ミッションの進行[編集]

1966年3月31日、ルナ10号はバイコヌール宇宙基地からモルニヤ8K78Mロケットによって打ち上げられた。探査機はロケットの第4段と結合したまま地球周回軌道に入り、続いて第4段のエンジンが噴射されへ向かう軌道へ投入された。不要になった第4段は切り離された。翌日の4月1日には、飛行ステージによって正常に中間軌道修正が行われた。

4月3日、月まで8000kmに迫った時点でルナ10号の逆噴射ロケットが点火された。この燃焼で探査機は減速され、月を周回する軌道に投入された。軌道投入当初の軌道は、最も月に近づいたときの月面からの高度が349km、最も月から離れたときの高度が1015kmという楕円軌道で、軌道傾斜角が70度あり、月の南北の極を通る極軌道に近かった。軌道投入から20秒後には役目を終えた飛行ステージの分離が行われた。

オービターは月を周回しながら観測を続け、次のことを明らかにした。

  • 月の磁場は存在しないか、きわめて弱い。
  • 月面の岩石は玄武岩に似ている。
  • 月にははっきりとした大気は存在しない。
  • 月の重力分布に地域的な偏りがある(重力異常)。

このように数々の成果を挙げたルナ10号だが、搭載されたバッテリーは次第に消耗していった。軌道投入から56日後の5月10日、ルナ10号は電力の不足により運用を終了した。運用終了までに月を周回した回数は460回だった。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Luna 10” (英語). NASA - NSSDC. 2008年5月25日閲覧。