ヤマドリタケ
ヤマドリタケ | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||
Boletus edulis Bull. | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ヤマドリタケ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
king bolete, true porcini |
ヤマドリタケ(山鳥茸[1]、学名: Boletus edulis)はイグチ目イグチ科ヤマドリタケ属の食用キノコ。香りが良く、「ポルチーニ」あるいは「ポルチーニ茸」[1]としてイタリア料理、ポーランド料理など、ヨーロッパでよく使われる。日本でふつうに発生するヤマドリタケモドキ(Boletus aestivalis (=B. reticulatus))と非常に似ており、しばらくは混同されていた。
特徴[編集]
北半球の主にトウヒなどの針葉樹林に分布しているが、ブナやクリ林などの広葉樹林にも分布しており、酸性土壌を好む菌根菌。晩夏から秋にかけて子実体が発生する。B. rubricepsやB. pinophilusなどの近縁種があるが、種内の遺伝的多様性は極めて低い。
傘の直径は5~30cm[2]。幼菌で半球状で、成菌で楕円状。頂部は栗褐色〜淡茶褐色で、縁が白い。湿潤環境では滑りと光沢を帯びる。管孔は均一に密で上生~離生の黄色。孔口は幼菌は白い菌糸で覆われているが、成菌でそれが無くなり管孔と同色の黄色、老菌で濃黄色に変化する。傘と菅孔は手で分離が容易。
柄は高さ6~20×幅4~8cm。幼菌は卵型だが、成菌で円筒形に近づき、上部から下部にかけて太く栗色が淡く、網目が不明瞭となる。肉は白くて硬く中実。
菅孔や柄を傷つけても色の急激な変化はない。
胞子は黄色みがかった紡錘形で、長さ14-20×幅4-6µm。[3]
産地[編集]
ヤマドリタケは栽培法が確立しておらず、現在でもすべてが天然物である。日本ではイタリア料理の普及とともにイタリア産が早くから輸入されており、イタリアが本場とされている。
ポーランドでヤマドリタケは「ボロヴィック・シュラヘートニィ(Borowik szlachetny)」とよばれ、これはポーランド語で「シュラフタ(ポーランド貴族)たちのポルチーニ」の意味である。ポルチーニ一般は「ボロヴィック」と総称される。ボロヴィックとは「針葉樹の森のキノコ」という意味がある。ヤマドリタケが豊富なポーランドでは昔からヤマドリタケを採取しポーランド料理にふんだんに使う習慣があり、ヤマドリタケのある生活が伝統である。ヤマドリタケはヨーロッパで広く珍重されるため、このきのこの採取は森の近くに住む田舎の人々にとって割の良い秋の収入源となっている。
なお、日本では北海道と青森県の針葉樹林で発生が確認されている[2]。
近縁種[編集]


近縁種には、ヤマドリタケモドキがある。ヤマドリタケとヤマドリタケモドキとの相違点は、
- ヤマドリタケは傘の表面に光沢があるのに対し、ヤマドリタケモドキの傘の表面はビロード状
- ヤマドリタケの柄には途中まで網目模様があるのに対し、ヤマドリタケモドキの茎には全体に網目模様がある
- ヤマドリタケはトウヒなど亜寒帯に生息するのに対し、ヤマドリタケモドキはブナなど温帯に生える
などの点から区別できるとされる。しかしヤマドリタケ属ヤマドリタケ節の分類は困難で、日本産種の位置付けも必ずしも確定的ではなく、アカヤマドリやヤマドリタケに似た未記載種も存在すると思われる。ヨーロッパや北アメリカにも、限られた専門家にしか識別できないほど類似した近縁種が複数存在する。
これらはイタリア語ではまとめてポルチーノ 伊: porcino (複数形はポルチーニ)と呼ばれ、アンズタケ、トリュフと並び珍重されている。ヤマドリタケはフランス語でセップ cèpe (de Bordeaux)、ドイツ語でシュタインピルツ Steinpilz などと呼び、近縁種のヤマドリタケモドキやススケヤマドリタケなどとともにヨーロッパ各地で食材として珍重されている。
なお近年になって本種とよく似た毒きのことしてウツロイイグチと強毒のドクヤマドリが発見されているので、注意を要する(後述)。また毒きのこではないが、ニガイグチも本種とよく似ているが、苦くて食べられない。
食用[編集]
「ポルチーニ」としてイタリアなどヨーロッパで広く食べられている野生キノコで、ポーランド産のものが多い[4]。肉質は味にくせがなく、傘・柄とも繊維がしっかりしていて歯ごたえがよい。生から調理してもおいしいが、乾燥させると独特の強い芳香を放ち、うま味も増す。独特の香りと味わいを活かし、肉料理のソース、パスタソース、リゾットの具、ソテー、マリネ、オイル漬けなどに使われる[1]。乾燥品を水でもどすと黄褐色のだしが出るのでこれも料理に利用できるが、味が濃いのでひかえめに使うのがよい。
類似の毒キノコ[編集]

類似の毒キノコには、ウツロイイグチ(Xanthoconium affine)と、強毒のドクヤマドリ( Boletus venenatus )がある。
ドクヤマドリは、美味であるといわれるが、下痢嘔吐などの激しい胃腸障害が長時間にわたって続き、場合によっては脱水症状などで生命の危険に陥る可能性も考えられるので要注意。そのほかイグチ科ではいくつかの激しい中毒を引き起こす種類の存在が報告されている。ドクヤマドリの特徴は以下の通り。
- 軸は網目がなく大根のようにすべすべしてところどころにさび色のしみがある。
- 肉は薄く黄色を帯びており、空気に触れると弱い青変性がある。
- かさは黄土色から黄金色のビロード状で湿っても粘らない。
- 管孔は鮮やかな濃黄色から黄褐色。
本種は亜高山性針葉樹林性と言われる(富士山に特に多いという)が、本種と思われるキノコを広葉樹林で見かけたという情報もある。
出典[編集]
- ^ a b c 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 162.
- ^ a b (4)菌類 青森県 2020年10月8日閲覧。
- ^ “Boletus edulis” (スペイン語). AmanitaCesarea.com. 2023年9月19日閲覧。
- ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, pp. 97, 162.
参考文献[編集]
- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日。ISBN 978-4-415-30997-2。