マルワーン・イーサー

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マルワーン・イーサー
مروان عيسى、
生誕 مروان عبد الكريم علي عيسى
マルワーン・アブドゥルカリーム・アリー・イーサー

1965年????
アラブ連合共和国の旗 アラブ連合共和国占領下、ガザ地区
現況 死亡(ハマース側は否定)
死没 2024年3月9日夜〜3月10日朝(58〜59歳没)
パレスチナ国の旗 パレスチナガザ地区ヌセイラット難民キャンプ
死因 イスラエル国防軍による爆撃
住居 パレスチナ国の旗 パレスチナガザ地区の地下トンネル(推定)
国籍 パレスチナ国の旗 パレスチナ
別名

影の男

アブー・アル=バラー(クンヤ)
民族 パレスチナ人
職業 イッズッディーン・アル=カッサーム旅団副司令官
団体 ハマース(イッズッディーン・アル=カッサーム旅団)
肩書き 副司令官
政党 ハマース
敵対者 イスラエル軍
宗教 イスラム教
子供 2人(2人とも死亡済)
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マルワーン・イーサーアラビア語: مروان عيسى‎, Marwān ʿĪsā、英語: Marwan Issa1965年 - 2024年3月9日または3月10日) は、パレスチナ過激派組織ハマースの軍事部門であるイッズッディーン・アル=カッサーム旅団の副司令官で、ムハンマド・デイフの右腕として知られている。

マルワーンは2023年のイスラエルに対するハマースの攻撃計画において重要な役割を果たした。マルワーンは2019年に米国テロ監視リストに、2023年には欧州連合のテロ監視リストに加えられた。

通称(クンヤ)はアブー・アル=バラー(アラビア語:أبو البراء, Abū al-Barā)。なお、マルワーン・イーサー以外の日本語カタカナ表記揺れとしてはマルワン・イーサ、マルワン・イサ、マルワン・イッサなど。

青年期[編集]

ガザ地区生まれ[1]。イーサーは第1次インティファーダの際、ハマースの活動を理由にイスラエルに5年間拘留された。その後、1997年から 2000 年までパレスチナ自治政府によって拘留されたが、第2次インティファーダの勃発後に解放された[1][2]

ハマースの指導者として[編集]

マルワーン・イーサーはガザ地区中央部の難民キャンプのカッサム旅団長となった[1]。イーサーは後にイスラエルで最も指名手配されている過激派の一人となり、ムハンマド・デイフやその他のカッサム旅団幹部も出席した2006年の会議中にイスラエルによる暗殺未遂により重傷を負ったが生き延びた[3][4]

イーサーが公の場に姿を現すことはめったになく、2011年にギルアド・シャリート(ギラド・シャリット)捕虜交換時に釈放されたパレスチナ人捕虜のレセプション中に写真に登場するまで、イーサーの姿は公に知られていなかった。イーサーはハマースのチームのメンバーで、アフマド・アル=ジャバリー、サーリフ・アル=アールーリー(口語発音:サーレフ・アル=アルーリ)、ニザール・アワダッラーと交換交渉を行った[1][2]

イーサーはムハンマド・デイフ司令官の右腕で副司令官として、2023年のハマースのイスラエル攻撃で重要な役割を果たした。 2023年のイスラエル・ハマース戦争中、イーサーはガザのハマースの指導者ヤヒヤ・シンワル(ヤフヤー・アッ=スィンワール)とデイフと並んで、イスラエルで最も指名手配されているハマースの3人の過激派の1人であり、3人はハマースの軍事機構の頂点に秘密軍事評議会を形成していた。シンワールかデイフのどちらかが殺害された場合、イーサーは後任となるため欧州連合はイーサーを攻撃に直接結びつけ、12月8日にイーサーとデイフをテロリストのブラックリストに指定した[5]

彼は2019年9月10日に米国によってテロリストに指定された。

死亡[編集]

パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマースとの戦闘を巡り、イスラエルメディアは11日、イスラエル軍がハマース軍事部門の副司令官を殺害した可能性があり、軍が確認を進めていると報じた。殺害が事実であれば、これまでの戦闘で死亡したハマース幹部の中では最高位となる[6][7]

イスラエルメディアやロイター通信などによると、イスラエル軍は9日夜~10日朝、イーサー副司令官がいるとの情報をもとにガザ地区中部のヌセイラット難民キャンプを空爆し、5人を殺害した。この中にイーサー副司令官が含まれている可能性があるという。イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は11日、「まだ攻撃の結果を検証中で(殺害の)最終確認は取れていない」と述べた[8][9][10]。その後、3月17日にハマース側はイーサーの空爆での死亡を秘密裏に認めたとイスラエル側のメディアが報じた[11]

ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は3月18日、イスラエル国防軍が先週、ハマースのナンバー3、マルワーン・イーサーを殺害したと言明した。サリバン報道官は、バイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が同日、電話で会談したことを報告。この中で、イスラエル軍がハマースへの軍事作戦で高位の司令官や戦闘員数千人を殺害するなど大きな前進を遂げてきたと主張し、イーサーの殺害に言及した[3][4][5]

なおこの殺害発表に対し、ハマース政治局メンバーはイスラエル側の主張に信憑性は無いとしてマルワーン・イーサー死亡を否定するコメントを発表[12]しており、公式には認めていない。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d Elections to the Hamas Political Bureau in the Gaza Strip: Overview and Significance”. 2024年2月18日閲覧。
  2. ^ a b “Hamas: Who are the group's most prominent leaders?” (英語). (2023年10月17日). https://www.bbc.com/news/world-middle-east-67103298 2024年2月18日閲覧。 
  3. ^ a b Report: Marwan Issa to Replace Jaabri” (英語). www.israelnationalnews.com (2012年11月15日). 2024年2月18日閲覧。
  4. ^ a b Halabi, Einav (2023年10月25日). “Most wanted: Key Hamas figures in Israel's crosshairs” (英語). Ynetnews. https://www.ynetnews.com/article/skedpi8fp 2024年2月18日閲覧。 
  5. ^ a b EU adds Hamas military chiefs Mohammed Deif, Marwan Issa to terror blacklist”. 2024年2月18日閲覧。
  6. ^ イスラエル軍、ハマス軍事部門のナンバー2を殺害か 現地報道”. 毎日新聞. 2024年3月13日閲覧。
  7. ^ ラマダン開始後も攻撃で死者 ハマス軍事ナンバー2殺害か―ガザ:時事ドットコム”. 時事ドットコム (2024年3月12日). 2024年3月13日閲覧。
  8. ^ ハマス軍事部門ナンバー2を殺害か イスラエル軍、確認進める 奇襲を計画、最重要人物の1人(産経新聞)”. Yahoo!ニュース. 2024年3月13日閲覧。
  9. ^ ハマス軍事部門「カッサム旅団」ナンバー2を殺害の可能性 イスラエル軍が明らかに|FNNプライムオンライン”. FNNプライムオンライン (2024年3月12日). 2024年3月13日閲覧。
  10. ^ 貴生, 佐藤 (2024年3月12日). “ハマス軍事部門ナンバー2を殺害か イスラエル軍、確認進める 奇襲を計画、最重要人物の1人”. 産経ニュース. 2024年3月13日閲覧。
  11. ^ Hamas confirms Marwan Issa killed, buried under rubble - report” (英語). The Jerusalem Post | JPost.com (2024年3月17日). 2024年3月17日閲覧。
  12. ^ حركة حماس: لا ثقة برواية الاحتلال بشأن اغتيال مروان عيسى” (アラビア語). قناة الغد (2024年3月26日). 2024年3月30日閲覧。

関連項目[編集]