ボヌール・デ・ダム百貨店

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『ボヌール・デ・ダム百貨店』の原稿

ボヌール・デ・ダム百貨店』(Au Bonheur des Dames)は、1883年に出版されたフランス自然主義作家エミール・ゾラの小説である。ゾラのライフワークである「ルーゴン・マッカール叢書」(全20巻)の第11巻にあたる。19世紀後半のフランスにおける大衆消費社会の牽引役となったデパートの躍進を描いた本作は、叢書で唯一のハッピーエンドを迎える異色の作品となっている。

概要[編集]

パリのルーヴル百貨店(1877年)

物語の主軸となるのは、パリのデパート「ボヌール・デ・ダム百貨店」の貧しい女店員である主人公ドゥニーズ・ボーデュと、このデパートの経営者で前作『ごった煮』の主人公でもあった青年実業家オクターヴ・ムーレとの身分違いの恋愛である。しかし本作の主たる魅力はむしろ、豪華な店内に所狭しと並べられた大量の魅惑的な商品と、現代の小売店の商法にも通じるバーゲンなどのさまざまな近代的商法によって婦人客を食い物にし、容赦ない価格競争によって近隣の老舗商店を押し潰しながら発展していく、消費社会の権化とも呼ぶべき「デパート」という存在の実態を克明に描いている点にある。(あらすじや登場人物紹介については「外部リンク」を参照。)

ゾラは本作執筆にあたって、パリのさまざまなデパートに対して綿密な取材調査を行ない、デパートの管理経営についてはボン・マルシェ百貨店およびルーヴル百貨店の管理職から資料提供を受けた。その結果として本作は、第二帝政期のジョルジュ・オスマンパリ改造と軌を一にして急成長し、第三共和政下においては続々と巨大な新館を築きつつあったパリのデパートの、ほぼ30年におよぶ発展の歴史を、小説内の5年足らずの時間に圧縮して描くことに成功している。

日本語訳[編集]

  • 吉田典子訳『ボヌール・デ・ダム百貨店—デパートの誕生』 藤原書店、2004年、ISBN 4894343754
  • 伊藤桂子訳『ボヌール・デ・ダム百貨店』 論創社、2002年、ISBN 4846004007

映画[編集]

アンドレ・カイヤット監督『貴婦人たちお幸せに』(Au Bonheur des Dames)1943年

参考文献[編集]

  • 鹿島茂 『デパートを発明した夫婦』 講談社現代新書、1991年、ISBN 4061490761
  • 海野弘 『百貨店の博物史』 アーツアンドクラフツ、2003年、ISBN 490159219X
  • レイチェル・ボウルビー/ 高山宏訳 『ちょっと見るだけ—世紀末消費文化と文学テクスト』 ありな書房、1989年
  • ロザリンド・H・ウィリアムズ/ 吉田典子・田村真理訳 『夢の消費革命—パリ万博と大衆消費の興隆』 工作舎、1996年、ISBN 487502262X
  • 宮下志朗小倉孝誠編 『いま、なぜゾラか—ゾラ入門』 藤原書店、2002年、ISBN 4894343061

関連項目[編集]

外部リンク[編集]