ブリュッセル・グリフォン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ブリュッセル・グリフォン
Monkey Bizniz Drama Queen.jpg
別名 グリフォン・ブリュッセル
愛称 Griffon
Griff
Bruss
原産地 ベルギー
特徴
イヌ (Canis lupus familiaris)

ブリュッセル・グリフォン(英:Brussels Griffon)は、ベルギー原産の小型の犬種である。赤茶色のワイヤーコートを特徴とする[1]フランス語ではグリフォン・ブリュッセロワ(Griffon Bruxellois)といい[1]、英語でもグリフォン・ブリュッセルなどともいう[2]

同じベルギー産の小型のグリフォン英語版に、黒い被毛のベルジアン・グリフォンと、スムースコートのプチ・ブラバンソンがある。以上3種は国際畜犬連盟等では別犬種として登録されているが、イギリスのザ・ケネルクラブ等、被毛のバリエーションと見なしてすべて「ブリュッセル・グリフォン」として登録する畜犬団体もある[3]。また、国際畜犬連盟の犬種標準でも、3種間の交配を認めている[3]

歴史[編集]

ヤン・ファン・エイクアルノルフィーニ夫妻像」(1434年)の足元に描かれた小型犬。後のブリュッセル・グリフォンと較べると顔はつぶれておらず、被毛も長い[1]

グリフォン英語版ヨーロッパ北西部に見られる、硬めの被毛を持つ猟犬である。「グリフォン」の語源は「ワイヤーコート」という説や、「捕まえる」という意味の動詞 griffer の変形という説がある[3]。ブリュッセル・グリフォンの祖先はその中でもベルギー都市部ネズミ等の害獣を駆除していた小型犬である[1][2]。特に馬小屋で使われたため、「馬小屋の犬(グリフォン・デキュリー、: griffon de'ecurie)等と呼ばれていた[1]。また、御者ペットとして馬車に乗せられることもあった[1][2]

19世紀後半に、小型のグリフォンは上流階級女性愛玩犬として大流行した[3]。特に1870年代に、ベルギー王妃マリー=アンリエット・ド・アブスブール=ロレーヌが小型のグリフォンを愛犬としたことがきっかけともいう[1]。ここから、より小型で、人間に似た平たい顔貌を持ち、安定した毛色となるように改良が進んだ[1][3]。改良の過程は定かでないが、アーフェンピンシャーパグヨークシャー・テリア等が交配されたという説がある[1][2]。また、キング・チャールズ・スパニエルが交配されたという説もある[3]。さまざまな地域の犬の血が入っていることから、ブルース・フォーグルは本種を「ユーロ・ドッグ」であると評している[2]

流行が頂点に達したのは戦間期1920年代で、ブリュッセルに繁殖用のメス犬が5000頭以上いたという[1][2]。しかし、改良の結果、生殖に困難を抱えるようになったために20世紀後半には頭数を減らし、また世界各地にもあまり広まっていないとされる[1]。ただし、日本でも毎年、数百頭の登録がジャパンケネルクラブにある[4]

特徴[編集]

体高18〜20cm、体重3〜5kgの小型犬である。マズルはつぶれていて、顎鬚口髭が豊かである[5]。全身を硬く長いラフコートに覆われていて、毛色は赤みがかったブラウンである。華奢な体格で脚は細長く、胸は深い。耳は半垂れ耳かボタン耳、尾は垂れ尾であるが、耳は断耳して立たせ、尾は短く断尾することもある[5]

性格は明るく温厚で、友好的である[3][2]。活発だが総運動量はやや少なめで、力も強くないため飼育もしやすい[3]。かかりやすい病気は短吻種にありがちな呼吸器疾患口蓋裂、眼疾患などがある[6]。また暑さに弱い[7]

本種はブリーディングに関するリスクを多く持っている犬種でもある[1]犬はもとから妊娠しにくく[1]偽妊娠もよく起こる。妊娠できても一回の出産で生まれる仔犬数は1〜2頭と少なく、母体に対し仔犬が大きいため[5]、高い確率で帝王切開での分娩が必要となる[1]。新生児は虚弱体質のものが多く、生後数週間の死亡率も約60%と非常に高い[1]。このため、繁殖には高度なブリーディング技術と熟練した技師が必要となり、故に必然的に仔犬の値段が高くなる。ブリュッセル・グリフォンは、国際畜犬連盟の標準でもベルジアン・グリフォンプチ・ブラバンソンとの交配が認められており、また一腹から3種のいずれもが生まれる[3]。また、1920年代頃は現在のようなブリーディングに関するトラブルはほとんど無く、自然分娩で一胎5〜7頭の仔犬が生まれていたことが記録に残されている[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p デズモンド・モリス著、福山英也監修『デズモンド・モリスの犬種事典』誠文堂新光社、2007年、169-170ページ
  2. ^ a b c d e f g ブルース・フォーグル著、福山英也監修『新犬種大図鑑』ペットライフ社、2002年、278ページ。
  3. ^ a b c d e f g h i 藤田りか子『最新 世界の犬種大図鑑』誠文堂新光社、2015年、398−9ページ。
  4. ^ ジャパンケネルクラブ「公開データ: 犬種別犬籍登録頭数(1~12月)」。
  5. ^ a b c 中島眞理監修・写真『学研版 犬のカタログ2004』学習研究社、2004年、39ページ
  6. ^ 佐草一優監修『日本と世界の愛犬図鑑 2007』辰巳出版、2006年、105ページ。
  7. ^ 藤原尚太郎『日本と世界の愛犬図鑑 最新版』辰巳出版、2013年、78ページ。