バッチフラワー

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バッチフラワーレメディ(Bach flower remedies)は、植物の持つ、「人の感情に作用する性質」を水を媒介として情報として身体に取り込むことにより、ネガティブな感情状態の改善を図るシステムで、1936年に死去したイギリスの医学者エドワードバッチ博士(Edward Bach)が作り上げた自然療法薬である。

医薬品のように身体的な病気や症状に直接作用するものではないと言われているが、元々はレメディ=治療薬として設計されており、服用の継続で、自律神経機能が調整されることが確認されたという症例報告が、医学雑誌「治療」2007年増刊号 Vol.89(南山堂)などに報告されている。日本では、薬事法との兼ね合いもあり、病気の治療を目的として使用することは推奨されていないが、全国で数十名の内科、心療内科、精神科の医師などにより、安全な代替療法として推奨されている。

エドワードバッチ博士(Edward Bach)は一時、王立ロンドンホメオパシー病院の研究者であったため、薬剤としての設計思想がホメオパシーの流れを汲んでいると誤解されることが多いが、バッチフラワーレメディはホメオパシー薬の製造に特徴的なポテンタイズと呼ばれる震盪希釈プロセスを用いずに作製されており、ホメオパシーよりも安全で作用も穏やかであり、妊娠中から終末期まで使用可能な製品となっている。日本では法律上は食品扱いで主に「フラワーエッセンス」という名称で販売されている。主な輸入販売業者は(株)プルナマで、その次に日本での販売の多い会社が(有限会社)マイキという会社である。

実質は37種類のを満開の状態で切り集めて直径20cmほどのガラスの器に満たしたわき水に浮かべて、午前9時から12時まで太陽光で温めた後に、花びらを取り除いた、水である。この水とブランデーを1対1に混ぜた液体が母液と呼ばれる原液であり、この液体中の植物成分は薄層クロマトグラフィーで検出可能である。この状態で毎年ほぼ安定した質と濃度の植物エキスが抽出された場合に、これを原材料として、ネルソン・バッチ社などの製薬メーカーで蒸留水とブランデーを使用してさらに200倍の希釈の後に製品としてボトリングされている。水の研究をしている人々は、水を媒介として、花びらに含まれる植物エキスの情報が保存され、経口投与により人体に治癒的に作用するものと推測している。製品化された段階では、希釈によりボトルの中身はほぼ完全に溶剤のみと判断される。(主にブランデー。日本向けの製品としてネルソンバッチ社では、2006年8月から、日本向け製品の保存剤はグリセリンに変更している)このため、現在イギリスと日本においては、バッチフラワーレメディは「食品」に分類されている。

レメディーは単独で使われることもあるが、しばしば複数が調合され、トリートメントボトル、あるいは調合ボトルと呼ばれる30mlの遮光瓶で個人用の調合が行われる。 一般に「バッチフラワープラクティショナー」と呼ばれるバッチフラワーのアドバイスを専門に行う者が、患者の情緒的あるいは精神的な状態に応じて各種レメディーの選択をアドバイスしており、各人がこのアドバイスを参考にした上で、自分用のレメディを服用する形で使用されている。

最も商業的に成功したレメディーは、数種類のレメディーを調合して製造される緊急時、不安時などに用いられる「レスキューレメディー」である。その成分には、特に緊急事態においてストレス、心配、およびパニック発作を緩和する効果が期待されると宣伝されており、日本では、豊田 茂芳TOYOTA Shigeyoshi医師(津田沼中央総合病院 麻酔科)により、二重盲検法により、麻酔前の患者さんに対してプラセボと比較して有意差をもって有効であったとする報告もなされている。(脚注1)

安全性と信憑性[編集]

レメディーは、エドワード・バッチによって創始された原則に基づき、主にイギリスで生産され、世界中で販売されている。フラワーレメディがホメオパシーの一分派であると誤解している医師などからは、医療現場からの排除が推奨されていが、過去においてフラワーレメディやフラワーエッセンスで医療被害が生じた報告はなされていない。また、主な製造販売業者であるネルソンバッチ社は、元々製薬メーカーであり、バッチフラワーレメディの作用がいまのところ医学的には完全に証明されていない事も把握しているため、あくまで自分自身の感情状態と精神状態を安定化して予防医学的なセルフケアとして用いることを求めており、前述のバッチフラワープラクティショナーの訓練と認定もネルソンバッチ社とエドワードバッチセンターが作製したガイドラインに基づいて、およそ3年ほどに及ぶ教育啓蒙システムとして、「バッチ国際教育プログラム」として、日本を含む世界各国で広く行われており、効果についての十分な証明はないとはいえ、安全性の確保に関しては、十分な配慮がなされているようである。

レスキューレメディーを始めとするレメディーは動物にも使われており、鎮静効果、問題行動を改善する効果が期待される一方で、各国の研究機関による臨床試験においては、有効な効果がないという報告と、有意差をもって効果がみとめられたという報告の両方が提出されている。

否定的な報告[編集]

エツァート・エルンスト(Edzard Ernst)は臨床試験の系統的レビューの結果、「レメディがプラセボ効果を超えるという仮説は、支持されていない」としている[1]

アメリカ癌学会は、「注意欠陥障害の臨床試験におけるプラセボ群との優位差は認められなかった」とするイスラエルの研究、「不安障害の臨床試験におけるプラセボ群とフラワーエッセンス群に優位差は無かった」とするドイツの研究を報告。さらにアメリカ食品医薬品局 (FDA) に届け出る必要のないサプリメントとして販売されていること、他の医薬品、食品、ハーブやサプリメントとの相互作用や有害作用を調べる検査がなされていないことも補足。「臨床研究として不完全と見なされる必要がある」と結論づけ、「がん治療の代替医療としてこの種の治療に依存し、従来の医療を避けたり延期したりすると、健康に深刻な影響をもたらす可能性がある」と警告している。以上の報告から、少なくとも、通常の医学的な治療を放棄して、フラワーレメディやフラワーエッセンスのみに依存する態度は注意欠陥多動障害の治療と癌の治療に関しては大きなリスクを伴うものと推定される。

このように十分な科学的な裏付けがないにもかかわらず、イギリス、フランスなどでは広く普及しており、ドラッグストアで日常的に購入できるほどの市民権を得て根強い愛好者も多い。

日本の国内法との兼ね合い[編集]

レメディーが効能や効果をもつ医薬品であるとうたわれた場合や、あたかも医薬品であり効能・効果があるという誤認を招く表現とともに販売された場合は、医薬品医療機器等法に違反する可能性が高い。また、プラクティショナーが「治療」、「処方」と称して医療に類似する行為を行った場合、医師法に明確に違反し、処罰の対象となる。ただし、医師がこれを治療薬として用いた場合には、食事療法に属することになるため、法律上も何ら問題は生じない。

肯定的な報告[編集]

一方、日本の麻酔科医 豊田 茂芳( TOYOTA Shigeyoshi 津田沼中央総合病院 麻酔科 )は、第22回生命情報科学シンポジウムにおいて以下の報告を行っている。 1:手術に対する不安や緊張は、手術を予定された患者にとって精神的ストレスとなる。自然療法の1つであるバッチフラワーレメディの中の1つであるレスキューレメディが、各種のストレスに対して緩和作用があると言われている。そこで今回、レスキューレメディが麻酔前投薬に有用かどうかを検討した。ランダム化比較試験を二重盲検法にて行い、レスキューレメディ使用群と対照群に分けた。測定は服用回数及び手術室入室時の血圧及び心拍数、VAS (視覚的評価スケール)を用いた不安・緊張度(A-VAS)を手術前日と手術室入室時に行った。心拍数に関して、レスキューレメディ使用群は対照群と比較して減少傾向を認めた。服用回数については、レスキューレメディ使用群は対照群に比較して有意に低下した。レスキューレメディには手術時の不安や緊張を和らげ、麻酔前投薬になり得る可能性が示唆された。 Preoperative anxiety & tension can cause mental stress for patients who are about to undergo the operation. Rescue remedy, a combination of Bach Rower Remedies, is said to alleviate various stresses. Thus, we studied the usefulness of Rescue Remedy as premedication. The subjects were divided into 2 groups: One which was administered Rescue Remedy and the control group (20 in each group). We measured that number of times that the subject had taken the remedy before entering the operating room, blood pressure and heart rate when the subject arrived in the operating room, and levels of anxiety & tension using A-VAS (Visual Analog Scale) the day before the operation and after entering the operating room. No significant statistical difference was found although the heart rate showed a tendency to decrease amongst subjects who took Rescue Remedy in comparison with the control group. The frequency of intake of Rescue Remedy decreased significantly in the group of subjects who took Rescue Remedy compared to the control group. We demonstrated that Rescue Remedy can alleviate anxiety and tension prior to operations, so that Rescue Remedy is considered to have potential as a premedication.豊田 茂芳 TOYOTA Shigeyoshi 津田沼中央総合病院 麻酔科

  1. ^ Ernst E (2002). Wien. Klin. Wochenschr. 114 (23-24): 963-966. PMID 12635462. 

関連項目[編集]

  • ホメオパシー - バッチフラワーと関連性の高い疑似医療行為のひとつ