チシマイチゴ

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チシマイチゴ
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
: キイチゴ属 Rubus
: チシマイチゴ R. arcticus
学名
Rubus arcticus L.
和名
チシマイチゴ

チシマイチゴバラ科キイチゴ属の1種およびその果実

呼称[編集]

ロシアではポレニーカ[1]、ポリャニーナ、マムーラ[2]、コスチャンカ、ホフルーシュカ、ポルデニッツァなど多くの通称で知られている。

ブロックハウス・エフロン百科事典によると、19世紀末にはフサスグリ(ラテン語: Ríbes rúbrum)[2]がこの名で呼ばれていた。

分布[編集]

北海道夕張山地北方領土[3]のほか、北アメリカ、カナダ、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、ロシアなどの北半球寒帯に分布し、海抜1200m以下のツンドラの森林、草地、河川沿岸、灌木地、沼沢地に生息している。

チシマイチゴは、スウェーデンノールボッテン地方の花に定められている。[4].

植物学上の概観[編集]

カール・アクセル・マグヌス・リンドマン著『北欧の植物図』"Bilder ur Nordens Flora"(1917-1926)での植物図

高さ30cm以下の多年草

細長く木質な歪曲した、深さ15~25cmの地下茎を有する。

は三出複葉の緑色。

単頂の有限花序で、5枚の花弁の、暗紅色のをつける。花期は5月下旬から25~35日続き、6月には開花、結実している様子を目にできる。

果実集合核果であり、成熟したものは甘味を呈し、大きさと形状ではヨーロッパキイチゴに似るものの、色味はより雑多である。熟した実の香りはパイナップルを思わせるもの。

化学組成[編集]

果実には炭水化物、5~7%の糖分(グルコースフルクトース)、1~2%のクエン酸リンゴ酸ビタミンCタンニン[5]精油が含まれており、パイナップルの風味をもたらしている。

経済的用途[編集]

果実

北方の至高の漿果[5]と評されている。生食や、加工された形態で利用される。チシマイチゴを原料に、ジャム、ジュース、果実酒浸酒リキュールが作られている。葉は、茶葉の代用品として抽出される。

チシマイチゴのジュースは解熱、水分補給に有効である。滋養強壮用途での使用が推奨される。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ "Малинник". ブロックハウス・エフロン百科事典: 全86巻(本編82巻と追加4巻) (ロシア語). サンクトペテルブルク. 1890–1907.
  2. ^ a b "Княженика". ブロックハウス・エフロン百科事典: 全86巻(本編82巻と追加4巻) (ロシア語). サンクトペテルブルク. 1890–1907.
  3. ^ 【博物館】企画展「国後島の植物と自然」”. 釧路市立博物館. 2021年10月10日閲覧。
  4. ^ "Svenska landskapsblommor" (スウェーデン語). Naturhistoriska riksmuseet. 1996. 2017年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月7日閲覧
  5. ^ a b Губанов И. А. и др. Дикорастущие полезные растения СССР / отв. ред. Т. А. Работнов. — М.: Мысль, 1976. — С. 171. — 360 с. — (Справочники-определители географа и путешественника). (イヴァン・アレクセイヴィチ・グバノフ(と他共著者)『ソビエトロシアの有益な野草』モスクワ:Мысль出版(『地理学者と旅行家の便覧』シリーズから)、1976年、171頁。)

参考文献[編集]

  • Якубов В. В. Растения Камчатки (Полевой атлас). — М.: Путь, Истина и Жизнь, 2007. (ヤクーボフВ. В.『カムチャッカの植物(野草図鑑)』モスクワ:Путь, Истина и Жизнь出版、2007年。)
  • Губанов И. А. и др. 766. Rubus arcticus L. — Княженика, или Поленика // Иллюстрированный определитель растений Средней России. В 3 т. — М.: Т-во науч. изд. КМК, Ин-т технолог. иссл., 2003. — Т. 2. Покрытосеменные (двудольные: раздельнолепестные). — С. 402. (イヴァン・アレクセイヴィチ・グバノフ(と他共著者)『図解:中部ロシアの植物(全三巻、第二巻:被子植物(双子葉離弁花類))』モスクワ:Товарищество научных изданий КМК出版、2003年、766番(402頁)。)
  • Брежнева А. П. Целебные фрукты и ягоды. — ФГУИПП «Кострома», 2004. (ブレジネヴァА. П.『薬効を持つ果物』ФГУИПП «Кострома»出版、2004年。)

外部リンク[編集]