ジャービル・ブン・アフラフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

ジャービル・ブン・アフラフAbū Muḥammad Jābir b. Aflaḥ)は、12世紀にイベリア半島で活動したムスリムの天文学者、数学者。天文学のゲーベル(Geber)というラテン名がある。『プトレマイオスの修正』(Iṣlāḥ al-Majisṭi)と呼ばれる著作(アラビア語)があり、クレモナのジェラルド(12世紀)によりラテン語に翻訳された[1]。天文機器のトルクエトゥムの考案者とされる[2]

生涯[編集]

ジャービルの生涯について詳細なことはほとんどわかっていない[3]。1204年に亡くなったマイモニデスが『迷える者への導き』第2巻(Perplex. II.9)で「イブン・アフラフ・イシビーリー」について言及し、その息子と個人的に知り合いであると書いている[3]。マイモニデスによると、ジャービルがイブン・バーッジャ(イブン・サーイグ)と、水星天と金星天が太陽天よりも上に位置するか否かという問題について議論した、とあるので、ジャービルは、イブン・バーッジャの亡くなる1138年にはすでに活躍していた[3]。また、ジャービルの著書の中でザルカーリー(1028年 - 1087年)への言及があるため、これ以後に活動した人物である[1]。以上のようなことから、12世紀前半に活動した人物であろうと推定されている[4]。また、イシビーリー(al-Ishbīlī)というセビージャのニスバ(toponym の一種)があることから、セビージャ出身である[1]、もしくは何らかのゆかりがある(例えば、長くセビージャに住んだ)と考えられる[5]

ジャービル・ブン・アフラフは、トルクエトゥムという天文機器の考案者とされる[2]。トルクエトゥムは、13世紀後半の天文学者、ヴェルダンのベルナール英語版やポーランドのフランコ(Franco of Poland)による言及があり、プトレマイオスが示したアーミラリー天球儀(astrolabon)とアストロラーベ(astrolabe)を合体させたような構造の、球面座標の変換に用いる器械である[2]

後世への影響[編集]

クレモナのジェラルドによる『プトレマイオスの修正』のラテン語訳は、1534年にニュルンベルクで印刷された[1]

『プトレマイオスの修正』はドランブルには「修正というほどでもない」と評されている[1]三角法に関しても9世紀のバッターニーより後退して、正弦を用いず、円の弧を用いている[1]マックチューター数学史アーカイブによると、ジャービルは、アラブ=イスラーム圏においては、必ずしも非常に重要な天文・数学者であったわけではない、しかし、著作がラテン語に翻訳され、ヨーロッパ世界に大きな影響を与えたため、ヨーロッパの科学史においては非常に重要な存在になった[4]。この点、著作がラテン語に翻訳されなかったアブル・ワファー・ブーズジャーニーとは対照的である、と同アーカイブは述べる[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f 矢島, 祐利 『アラビア科学史序説』 岩波書店1977年3月25日 pp.208-209
  2. ^ a b c R P Lorch, The astronomical instruments of Jabir ibn Aflah and the torquetum, Centaurus 20 (1) (1976), 11-34. https://doi.org/10.1111/j.1600-0498.1976.tb00214.x
  3. ^ a b c Lorch, R. P. (1975). The astronomy of Jābir ibn Aflaḥ. Centaurus, 19, 85–107. https://doi.org/10.1111/j.1600-0498.1975.tb00315.x
  4. ^ a b c O'Connor, John J.; Robertson, Edmund F., “al-Ishbili Abu Muhammad Jabir ibn Aflah”, MacTutor History of Mathematics archive, University of St Andrews, http://www-history.mcs.st-andrews.ac.uk/Biographies/Jabir_ibn_Aflah.html .
  5. ^ Jābir Ibn Aflaḥ, Richard P. Lorch, Encyclopaedia of the History of Science, Technology, and Medicine in Non-Western Cultures 2016 Edition Editors: Helaine Selin, First Online: 27 March 2016 DOI: https://doi.org/10.1007/978-94-007-7747-7_9261