ジプシー

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ロマの荷馬車(1935年、ドイツ)

ジプシーgypsy)は、一般にはヨーロッパで生活している移動型民族を指す民族名。転じて、様々な地域や団体を渡り歩く者を比喩する言葉ともなっている。外名であり、当人らの自称ではない。

名称について[編集]

ジプシーは「西暦1100年アトスに現れた」とする記録が最古のものとされる。ドイツでジプシーを確認している最古の記録は1407年のものである。1427年フランスパリに現れた彼らは、「自分たちは低地エジプトの出身である」と名乗った。ここから「エジプトからやって来た人」という意味の「エジプシャン」の頭音が消失した「ジプシー」 (Gypsy) の名称が生じたと言われる[1]。ドイツではDe:Zigeuner(チゴイネル)と呼称され日本ではチゴイネルワイゼン(ジプシーの旋律曲)が有名。チゴイネルという呼称の語源についてもよく分かっていないが民間語源の解釈として「Zieh-Gäuner」(ガウナー<小屋>を引くもの)とするものがある。

近年の日本においては、「ジプシー」は差別用語放送禁止用語と見做され、「ロマ」と言い換えられる傾向にある[2]。しかし、「ジプシー」には「ロマ」以外の民族も含まれているので、これは他のジプシー民族を無視することになる。

明治時代の日本の新聞ではジプシーが「西洋穢多」と報じられたことがあるが[3]、ジプシーの居住圏は西洋だけにとどまらない上、生活様式は日本ではむしろサンカに近い。

ジプシーに分類される諸民族[編集]

主にインドが起源と考えられている諸族[編集]

ロマ
北インドパキスタンに起源に起源を持つインド・アーリア人系の移動型民族。ロマ語を話し、欧州における「ジプシー」の最大勢力である。
ロミ
19世紀に現代のルーマニアに当たる地域で奴隷とされたロマニ系の人々。独自の文化や慣習を固守し、キング(王様)も存在する。ルーマニア、ルーマニア語圏に居住するロマニ系の民族。
アッシュカリー、またはエジプシャン
コソボ及びその周辺諸国(旧ユーゴスラビア)に居住するロマ系の民族。当人たちは「ロマと異なるアイデンティティーを持つ」としているが、ロマ及び居住地域のその他住民からはロマの一部とみなされることが多い。
ロム (Lom people)
南コーカサスアルメニア等)とアルトヴィントルコ)に居住する民族。欧州方面へ移動するロマの集団から別れ、11世紀頃の当地に留まった人々が先祖と考えられている。
ドム
主に中東イスラム圏に居住するインド・アーリア人系の民族。彼らの話すドマリ語(Domari language)はロマ語と密接な関係にあると考えられている。
リューリ
中央アジア及びロシアに居住するドムの亜集団。
バンジャラ (Banjara)
インド及びパキスタン各地に居住し、ラージャスターン語系統のバンジャリ語(Banjari language)を話す民族。
スリランカ・ジプシー (Sri Lankan Gypsy people)
スリランカに居住し、主にテルグ語を話す民族。スリランカの主要言語であるシンハラ語ではahikuntakaと呼ばれている。

インド以外が起源と考えられている諸族[編集]

もともと欧州における「ジプシー」には、ロマ以外の移動型民族を含む場合があった。
イェニシェ
アイリッシュ・トラヴェラー
スコティッシュ・トラヴェラー (Scottish Travellers)

その他の用法[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 阿部謹也『中世を旅するひとびと』平凡社
  2. ^ たかのてるこ著『ジプシーにようこそ!』と ロマ差別を助長する日本の勢力 金子マーティン(IMADR事務局次長)
  3. ^ 『京都日出新聞』1901年9月17日。