シンガポールの軍事
シンガポールの軍事(シンガポールのぐんじ、英語:Military of Singapore)では、シンガポール共和国の国防政策、軍事機構などについて述べる。
概説
シンガポール軍は1971年12月にイギリス軍が撤退した後に編制された。マラッカ海峡を望む、地政学的に重要な位置にあること、また経済力が強いことから、小規模ながら近代的な装備を所有している。人員については2万人の職業軍人のほか、2年間の徴兵制を実施し、必要兵力を満たしている。徴募兵の数は5万5千人に達し、兵役終了後も13年間の予備役につく。この予備役人員数も、約22万5千人に達している。
徴兵は17歳の時に行われ、進学の場合を除き延期は認められていない。ただし、シンガポールの徴兵はナショナル・サービスとして、軍以外の公共機関にも配属されるものである。予備役兵は、普段は民間人であるものの、年間最大で40日間、召集され訓練および任務を実施する。
安全保障
シンガポールはイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシアと5ヶ国共同防衛条約を締結している。1967年にイギリスがスエズ運河以東の軍事力を引き上げを決定したのに伴い、マレー半島における安全保障を維持するために、条約が締結された。これにより、有事の際は英連邦軍が、シンガポールへの援軍となるほか、平時は基地の提供などを行っている。
このほか、シンガポール軍は、隣国インドネシア・マレーシアを始めとするASEAN諸国およびアメリカ合衆国、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、台湾とインドで共同訓練を実施している。アメリカ軍は、1990年に締結された覚書に基づき、Paya Lebar空軍基地とSembawang桟橋の利用権を持っている。1999年にこれは一部改定され、2001年より稼動するチャンギ海軍基地も含まれるようになった。 台湾は、国内の軍事施設を、常時シンガポール軍に貸している。
軍事機構
シンガポール軍(The Singapore Armed Forces : SAF) は、陸海空の三軍からなる。
- 陸軍(三個師団基幹 第3、第6、第9師団)
- 海軍(8個戦隊および海軍基地2ヶ所)
- 空軍(17個飛行隊および空軍基地4ヶ所)
新兵の訓練
新兵は、3ヶ月の基礎訓練を受けることとなっている。そこにおいては、射撃訓練のほか、野外工作、ジャングルでのサバイバル、カモフラージュの教育が行われる。一部の兵は、その後、士官教育またはスペシャリスト教育を受ける。士官候補生コースは9ヶ月、スペシャリスト教育コースは21週間ある。残りの大部分の兵は、様々な部隊に配属される。
特殊部隊
シンガポールは、対テロ戦争のような、非従来型の戦争に対する準備も整えている。シンガポール陸軍は、少なくとも一個のコマンド大隊と規模不明の特殊部隊を保有している。その訓練状況の詳細は不明であるが、多くの元特殊部隊隊員が所持している空挺降下の記念バッジから、アメリカ海軍のNavy SEALsから訓練を受けていることが判明している。また、海軍にも特殊部隊がある。
シンガポールの特殊部隊は、よく訓練されており、高い能力を示している。2000年には、SEALsの養成訓練において、シンガポールの訓練生が首席となった。
情報能力
SAFの情報能力は、秘密にされており、それらの詳細は不明である。しかし、シギント(信号情報)や画像情報の収集には、高い能力を示すと思われる。空軍においては、各種センサを搭載したイスラエル製のUAV(無人飛行機)を運用している。
装備兵器一覧
陸軍
- 歩兵:小銃はSAR21、SAR88、SR88、CIS ウルティマックス100軽機関銃など。携帯対戦車ミサイルほか
- 砲兵:FH-2000 155mm榴弾砲など。
- 戦闘車両:AMX-13軽戦車 350両、センチュリオン戦車 80両以上、レオパルト2戦車数十両、M113装甲兵員輸送車 700両以上、バイオニクス歩兵戦闘車 500両など
空軍
- 8機 F-16 Block 15OC Upgraded A/B(タイ空軍より移管)
- 62機 F-16 Block 52 C/D 戦闘攻撃機
- 60機 A-4S Upgraded SkyHawk 攻撃機
- 45機 F-5 S/T Upgraded Tiger II 戦闘機
- 8機 RF-5S Upgraded Tiger II 偵察機
- 4機 E-2C AEW
- 4機 KC-135 空中給油/輸送機
- 5機 フォッカー 50 海洋監視機(対艦ミサイル・ハープーンおよび魚雷を装備)
- 4機 フォッカー 50 輸送機
- 10機 C-130B/H 輸送機 及び KC-130空中給油機
- 20機 AH-64D アパッチ・ロングボウ 攻撃ヘリコプター
- 12機 CH-47 SD 輸送ヘリコプター
- 24機(予定)F-15SG戦闘爆撃機(F-15Eのシンガポール輸出型)
海軍
- 4隻 チャレンジャー (Challenger)(旧スウェーデン「シェーオルメン」) 級 潜水艦
- 6隻 フォーミダブル(Formidable)級 フリゲート(ラファイエット級フリゲートの派生型)
- 6隻 ヴィクトリー(Victory)級 ミサイル艇
- 6隻 Fearless級 対潜哨戒艇
- 6隻 Fearless級 哨戒艇
- 4隻 エンデュアランス(Endurance)級 ドック型揚陸艦
- 4隻 Bedok (Landsort)級 掃海艇
過去に就役した艦艇についてはシンガポール海軍艦艇一覧を参照のこと。
参考文献
- 佐島直子編『現代安全保障用語辞典』(信山社出版、2004年)