カリギュラ効果
カリギュラ効果(カリギュラこうか)、別名カリギュラ現象(カリギュラげんしょう)とは、他者からある行為を禁止されたり、情報を制限されたりすると、かえってその事柄への関心や欲求が高まる心理現象[1](心理学における心理的リアクタンスの一種)を指す日本で広く用いられる通俗的な呼称。学術的な用語ではないものの、その関心事の面白みからいくつかの実用書において紹介された事例がある[1][2][3]。
心理的メカニズム
[編集]カリギュラ効果は、学術的には心理的リアクタンス理論の枠組みで説明される。人間が自身の行動を自由に選択したいという基本的欲求を侵害された際、その自由を回復しようとする動機付けが働く。ジャック・ブレームが提唱した理論によれば、個人の自由が脅かされたり剥奪されたりした際、その自由を再確立しようとする心理的な反発(リアクタンス)が生じる。特定の行為を「禁止」されることは、選択肢の喪失を意味するため、禁止された対象そのものの価値が以前よりも高く評価される。この結果、禁止を破ることで「自己決定権」を証明しようとする行動が誘発される[4]。
また、特定の対象を禁止・制限することは、その対象の希少性を高める効果も併せ持つ。社会心理学においては、入手困難なものほど価値が高いと判断する心理が働くため、禁止によって生じた希少性が対象への欲求をさらに増幅させる要因になっていると指摘されている[5]。
背景
[編集]名称は、1980年に公開された『カリギュラ』に由来する。同作は暴君として知られるローマ皇帝カリグラを題材とした歴史ドラマという触れ込みであったが、実際には過激な性描写だらけのセクスプロイテーション映画と言ってもいい代物であった。そのため、アメリカ合衆国ではボストンなどの一部地域[注釈 1]で上映禁止になったことから、かえって世間の話題を惹いた。このことが更に日本で報じられたことにちなんで生まれた語とされる[6][7]。
用例
[編集]この効果は、広告宣伝やテレビ番組でも利用されている。例えば、テレビ番組で、「ピー」などの効果音を付けて発言を聞こえなくしたり、モザイク処理をかけて映像の一部を見えなくする、Web広告で「○○が大事」「閲覧注意」といった言い回しを使う、「会員限定」や「ここから先は有料」といったペイウォールをかけることが挙げられる。こうした制限を設けることで、対象への関心を逆説的に高めるマーケティング手法として広く浸透している。
脚注
[編集]- 注釈
参考文献
[編集]- 樺, 旦純『怖いくらい人を動かせる心理トリック』三笠書房〈王様文庫〉、2003年3月。ASIN 4837961835。ISBN 4837961835。 NCID BA62423197。OCLC 167611474。全国書誌番号:20375388。
- 川島, 康平『お客をつかむウェブ心理学』同文館出版〈DO BOOKS〉、2008年7月17日。ASIN 4495580310。ISBN 4495580310。 NCID BA86626814。OCLC 675780791。全国書誌番号:21463304。
- 植木, 理恵『シロクマのことだけは考えるな!』マガジンハウス、2008年8月21日。ASIN 4838718977。ISBN 4838718977。 NCID BA87022196。OCLC 676238164。全国書誌番号:21487209。
- 菊原, 智明『トップ営業マンが使っている 買わせる営業心理術』明日香出版社〈アスカビジネス〉、2011年2月13日。ASIN 4756914373。ISBN 4756914373。 NCID BB08784437。OCLC 701704410。全国書誌番号:21898587。
- 酒井, 穣『ビジネスでいちばん大事な「心理学の教養」』中央公論新社〈中公新書ラクレ〉、2013年7月9日。ASIN 4121504623。ISBN 4121504623。 NCID BB12890915。OCLC 852779467。全国書誌番号:22293481。
- 大谷, 侑暉『サイコロジーセールス最強の営業心理学』フォレスト出版株式会社、2023年4月21日。ISBN 978-4-86680-225-1。 NCID BD01788693。全国書誌番号:23835311。
- ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器 : 人を動かす七つの原理 新版』誠信書房、2023年11月10日。ISBN 978-4-414-30429-9。 NCID BD04613277。全国書誌番号:23916365。
関連項目
[編集]- 心理効果の一覧
- 生物心理学
- 行動神経科学
- 皮肉過程理論#シロクマ実験
- 見るなのタブー
- Wikipedia:鼻に豆を詰めないで
- 同様の心理状態を扱った作品
- この心理現象に由来するタイトルを持つ作品
- Caligula -カリギュラ- - ゲームソフト
- 今田×東野のカリギュラ - バラエティ番組