アバン=デ=ジニュアール3世

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アバン=デ=ジニュアール3世は、三条陸(原作)と稲田浩司(作画)による漫画及びそれを原作とするアニメ『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』に登場する架空の人物。アニメでの声優は田中秀幸ダイポップなど、主要人物の師匠(先生)にあたる。通称アバン。

来歴[編集]

かつて魔王ハドラーを倒した勇者。31歳[1]。当時王女のフローラを助けたことが縁でカール王国騎士として平穏に暮らしていたが、カール王国が魔王ハドラー率いる一団に襲われたことがキッカケで、打倒魔王のために友人ロカとともに旅立って後年見事これを成し遂げる。その後は勇者育成業を称して各地を回っていた[2]中パプニカ王国の依頼でデルムリン島に赴き、ダイと出会ってその潜在能力を見抜く。

復活した魔王ハドラーとの交戦時、ダイ達を救うために自己犠牲呪文メガンテを使用したため死んだと思われていたが、魔王ハドラーとの決戦前にフローラから「輝聖石(のちの「アバンのしるし」)」と交換に授かった「カールの守り」を所持していたことが幸いし一命を取り留める。

ダイとポップの旅立ちを見ていたアバンは、ダイの潜在能力の高さを見抜き、その成長の足枷となることを厭い、敢えて彼らと同道しなかった。そして彼自身も自分にしかできない力を身に付けるため、自身の得意とする破邪呪文を極めんと故郷カール王国にある「破邪の洞窟」に挑戦する。その後、レオナ達がミナカトールを使用した時にこれを察知、最終決戦が近いことを知り洞窟を脱出。その時点で地下150階くらいまで到達していたが、あらかたの秘術を会得し尽くしたために地上に戻りダイ達に合流する。洞窟の深部で呪文の破邪力を極大化する秘術を習得し、バーンの魔力によって閉ざされた扉を破邪力を極大化させたアバカムの呪文で打ち破っている。かつての宿敵ハドラーの死を汚したキルバーンと死闘を繰り広げて勝ち残り、その後のミストバーン、大魔王バーンとの最終決戦にも参加した。

最終決戦後は髭をたくわえた風貌でフローラと共に玉座に座していた。

人物[編集]

基本的に穏やかな人柄で人から称えられることはあっても謙遜し、自身の名誉や地位などには全くこだわりを見せない。一人称は「私」。人当たりの良さもあって彼のことを慕うものは数多い。ハンサムで料理も得意であるため、カール王国騎士時代は王宮勤めの女性達からの人気も高かった。一方でサボり常習犯であるため兵士からの評判は芳しくなかった[3]。つまらないギャグなど、常に周りを和ませるようなひょうきんな行動が多いが、「能ある鷹は爪隠す」の言葉どおり、それは自身の秀でた能力を隠すためのものである。目下の者が相手でも丁寧語で話すが、「敵」と認識した相手に対してはこの限りではなく厳しい口調となる[4]。指導に当たったダイやポップ、ヒュンケルら弟子達からは「先生」「アバン先生」と呼ばれ、揺るぐことのない信頼を寄せられている。彼らは通称「アバンの使徒」と呼ばれ、魔王軍にとって最も恐るべき存在に成長していった。

眼鏡をかけているが、実は伊達眼鏡。時折出てくる回想シーンで眼鏡をかけていないのは、魔王ハドラーを倒す旅に出る時に、フローラに預けたからである。

技能・能力[編集]

学者の家系(輝聖石の錬成などが代々伝わる)の出で、趣味は料理。武術面では剣・槍・斧・弓・鎖・牙(徒手)の六種に精通し、それぞれの奥義を極めるに至り、本人曰く武芸百般。ダイ達が使うアバン流殺法の開祖であり、齢三十足らずでこれらを極めている恐るべき達人。呪文においても使い手がほとんどいないと言われるドラゴラムやアストロンといった様々なジャンルまで軽々と使いこなし、その知識は相当なものである。作中に使用場面はないものの回復呪文も扱えるらしく、設定によれば多彩な攻撃・回復・補助魔法を使いこなす、とされている。本来勇者には習得できない魔法使いや僧侶の呪文などを多数習得しており、劇中では魔法使いにしか使用できないドラゴラムや、賢者にしか使用できない破邪呪文を使いこなしたことからポップは「あの人は特別製」と評した。だが、皆既日食の日にのみ使用できる、完全には解明されていない天変地異を利用する大呪法「凍れる時間の秘法」を魔王ハドラーに対して使用した際には、レベルが不足していて完全には制御できず、自分も凍った時間の中に巻き込まれた[5]

加えて科学・技術にも能力を見せ、マァムに贈った魔弾銃(まだんガン)は、噂と書物を元に弾丸ではなく呪文を詰めるというオリジナルの発想を加えて彼が作ったものだが、それを修理することはバダックにはまるで敵わず「これを作った人は天才」と評された。この他にも様々なアイテムを作り、使用している。

ダイ達との合流時に「純粋な戦闘力ならば、今の自分はダイの半分にも満たない」と発言している。しかし豊富な知識・経験・冷静な判断力など「純粋な戦闘力」ではない力はダイたちの大きな助力となった[6]。その力は大魔王バーンをして強く警戒するほどであり、バーンは復活したハドラーに真っ先にアバン抹殺を命じていたほか、最終決戦でもアバンを「瞳」にした際に「もっとも厄介な男」と発言している。事実、大魔王の側近キルバーンとの対決でも、キル・トラップが術者本人が命令して作動させるタイプの罠だと一見で見抜いてキルバーンを出し抜いたり、激戦の最中に自身が苦しめられたファントムレイザーの用法を瞬時に把握して逆用するなどその能力は遺憾なく発揮され、これを下している。

なお、アバンは「今の自分はダイの半分にも満たない」と自身を評したが、心身の再鍛錬と破邪呪文の極大化を習得するため、先述の通り破邪の洞窟を150階まで単独で攻略している。大魔王幹部の1人であるキルバーンを単独で撃破したこと、最初に真バーンと対峙した時点ですぐに『瞳』にされなかったことなどを鑑みれば、この時点でダイ・ポップ・ヒム・ラーハルトという作中最強クラスのメンバーに次ぐ戦闘能力は持っているようである。

ダイ達などと違い武器にはこだわっていないらしく、どこにでもあるようなごく普通のものを使っている。実際、デルムリン島に来る際に所持していた剣の1本は古道具屋で買った10ゴールドの安物(実際のゲームであれば最安値、最弱の武器である『たけざお』『ひのきのぼう』と同レベルとなる)で、ダイが岩を斬り付けたら簡単に折れてしまったが、そんな武器でもガーゴイルを軽くまっぷたつにし、キルバーン戦ではジャッジが使用していた壊れた鎌を槍としてキルバーンに挑み追い込むなど、多芸故にか武器を選ばず実力を発揮できる人間である。

使用した技・アイテムなど[編集]

武術[編集]

アバン流殺法
アバン流刀殺法、アバン流槍殺法など、人が使う刃物の武器を剣、槍、斧、弓、鎖、牙[7]の6種類に分け、自身が編み出した武術の数々を極めている。
なかでもアバン流刀殺法の奥義「アバン・ストラッシュ」が自身の必殺技として有名であり、弟子ではダイがこれを習得して使用している。過去の回想シーンでは、カウンター技の無刀陣や闘気放出技のグランドクルスなども使用している。ただしグランドクルスについてはアバンの技をベースにヒュンケルが発展させた技という側面が強く、ヒュンケルのそれはアバンにも真似できないほどの、最大級の闘気放出力を誇る技である(真似できないというより、ヒュンケルのような最大威力のグランドクルスを使った場合、技自体は使用可能でも本人が生き残れる保証がない)。アバンのグランドクルスはヒュンケルのような必殺技としてのものではなく、武器を失った場合の最後の手段としての非常用の技である。
アバン・ストラッシュ
アバンの代表的な技。以下の2パターンが存在する。
A(アロー)
振り抜いた剣身から闘気の刃を放つ。キルバーンに「本家本元」と言わしめた。
B(ブレイク)
対象とすれ違いざまに闘気を込めた刃の一撃を打ち込む。威力はA(アロー)より高く、キルバーンへのトドメにも使用した。
虚空閃(こくうせん)
槍や棒の先端からレーザーのように貫通性の高い闘気を放つ技。作中ではミストに憑依されたマァムを助ける際に使用した。
グランドクルス
十字(クロス)を象った物体に闘気を込め十字型に放つ技。アバンが使用した際は剣の柄を利用して放ち、大岩を切り裂いた。
ヒュンケルは最大の必殺技として使用しているが、元々は武器を失った時に用いる非常用の技としてアバンが教えたもの。ヒュンケルのように全力で放てば生きていられる保証はない。
無刀陣(むとうじん)
地底魔城でのハドラー戦で使用した技。相手の一撃を喰らってから反撃するカウンター技であり、アバンはこれとアバン・ストラッシュを併用してハドラーの胴体を両断し勝利した。ハドラー戦ではアバンはあえて無防備な姿をさらすことでハドラーの攻撃を誘発させた。
なお、弟子のヒュンケルはこれを改良した技(先に動いた相手よりも早く攻撃を打ち込む。いわゆる後の先)でヒムを破っている。

アイテム[編集]

魔弾銃(まだんガン)
本物の銃の噂と書物のみを頼りに、アバンが製作した銃。同時に10発の専用弾丸も製作。マァムが弟子を卒業する際、彼女にプレゼントした。弾丸の先端には聖石が使われていて、先端に指を当てて唱えた呪文を中に詰める。詰められる呪文は、弾丸1発につき1回分。呪文を詰めた弾丸を銃に装填して発射することで、中の呪文を相手に向けて撃ち出すことができる。呪文は自分で詰めるほか、マァムが使えない呪文は他人に詰めてもらうことも可能。フレイザードとの戦いの後、氷漬けのレオナを救うため、1発の弾丸に無理矢理2発分の呪文を詰めて撃ち出したため、砲身の半分が破損。かなり複雑な作りらしく、バダックには修理できなかった。この銃が壊れたことが、マァムに武闘家転職を決心させる一因になった。
ゴールドフェザー
アバンが発明したアイテムで、先端に魔法力を増幅させる「輝石」を使用している。これを利用して五芒星を形成し「破邪の秘法」を使用することで、その呪文の破邪力を極大化できる。また、これを体に刺すことで短時間相手の体の自由を奪うことができ、キルバーンのような機械人形が相手でも効果がある。
シルバーフェザー
ゴールドフェザーと同時に発明したアイテム。先端に魔法力を蓄積させる「聖石」を使用している。魔法力を蓄積しておいたうえで、先端を対象者に刺すか持たせるかすれば、魔法力を回復できる。アバン曰く「並の魔法使いの2、3人満タンにできるだけの魔法力がある」との事だが、驚異的なレベルアップを遂げたポップは一本だけでは全快できなかった。最終決戦において、アバンは、その持ち数の半分をレオナに渡した。
ちなみに、マァムが授けられた魔弾銃の弾丸の先端に使われていたのも「聖石」だった。触れて唱えることで弾丸内に呪文を込めることが出来たのも、そのため。
魔法の砂
正式名称はまだない。ルラムーン草という草を材料に、「破邪の洞窟」にいる間に調合したアイテム。敵などに振りかけておく事で、リリルーラを使って追いかける事ができる。言うなれば、敵に対する目印のようなもの。作中ではキルバーンにつけることで、異次元空間から脱出する際に使用した。
ミエールの眼鏡
アバンが「破邪の洞窟」で見つけたアイテム。その名の通り、掛けるとどんな罠も見破る事ができる。かなり独特のデザインをしているが、アバンは非常に気に入ってるらしく、お披露目の際はウルトラセブンのパロディーらしきギャグを披露していた。
輝聖石
ジニュアール家に代々伝わる錬成方法で作られる石。アバンは、魔王ハドラーを倒す旅出る前にこれをフローラに贈り、お返しとして「カールのまもり」を受け取ったほか、のちに弟子達に「卒業のあかし」である「アバンのしるし」として贈った。それほど高い比率ではないが、聖の力を増幅し、邪をはじく効果を持つ。
石そのものが出来ても熟成に時間がかかるため、アバンが破邪の洞窟に入っている間には完成できなかった。簡易版と言うべき「輝石」と「聖石」を作ってゴールド・シルバーの各フェザーに使用したのは、輝聖石を完成させるに到らず、それらを完成させるにとどまったからである。

呪文・呪法 [編集]

  • 火竜変化呪文(ドラゴラム)
  • 自己犠牲呪文(メガンテ)
  • 結界無効化呪文(トラマナ)
  • 破邪呪文(マホカトール)
  • 変身呪文(モシャス)
  • 開扉呪文(アバカム)
  • 鋼鉄変化呪文(アストロン)
  • 合流呪文(リリルーラ)
  • 凍れる時間の秘法
  • 破邪の秘法


このほか、メラゾーマやベギラマといった多彩な攻撃呪文も使いこなす。

アバンの書[編集]

アバンが後世のために記した、この世にただ一冊の手書きの本。アバンの母国・カール王国の図書館で、宝箱に入れられ保管されていたが、カール王国が壊滅した後にマトリフによって回収され、ダイたちに渡された。

  • 地の章(武芸について)
  • 海の章(闘気の技や呪文について)
  • 空の章(心について)

からなる。この書にはアバン流殺法の極意も記されており、ヒュンケルはそれをもとにアバン流槍殺法の修行を行った。

補足[編集]

  • 名前の由来はそのままフランス語の「avant(前の。番組の前置き部分のこと)」。フルネームは連載当時流行していた、ミニ四駆「アバンテJr」を、フランス人の人名風にしている。原作者によれば、「物語の導き手っていう意味で名付けた」という。
  • アバンがメガンテで死んだと描かれたシーンでは女性ファンから抗議の手紙が殺到し、原作者は単行本2巻において「女性ファンのパワーに驚きつつ感動した。」とコメントした。また、後のコンビニコミックでのインタビューでは、キルバーンの登場が決定しなければアバンの復活はなかったと語った。加えてTV番組での対談においては「1年の連載予定だった本作が、2年目以降の続けられる事が決定した際に、復活の可能性については思案していた」と明かしている。結果としてファンの抗議で復活させたとは言っておらず、ダイ達の側にキルバーンやミストバーン、大魔王バーンなどの強敵との知略戦で対抗できる人物がいないと踏んでの判断のようだ。なお、アニメにてそのキルバーンを演じたのはアバンの声優である田中であった。

脚注[編集]

  1. ^ ただし、「凍れる時間の秘法」の失敗によって止まっていた時間(1~2年)を年齢に含んでいない。『JUMP COMICS PERFECT BOOK 1 ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(ISBN 4-08-858881-9)の138ページ、「徹底追求!! ダイの秘密55」の「SECRET45 全世界激闘年表」にて、アバンとフローラが出会ったのが20年前(作品本編の時間から見て、以下同)とあり、アバンの年齢「31歳」を額面どおりに捉え、この時点でのアバンの年齢を11歳と見たのに対し、三条は「ある理由でもっと上だったんです」と答えている。アバンの年齢表記が「凍れる時間の秘法」の失敗によって止まっていた時間(1~2年)を含んでいないならば、アバンが生まれたのは32~33年前になり、フローラと出会った時には12歳または13歳であったということになり、三条の発言と一致する。なお、止まっていた時間に関しては、「1年以上」と作中に明記されており、アバンがハドラーに「凍れる時間の秘法」を仕掛けたのが17年前で、ハドラーが倒れたのが15年前なので最長でも2年である。
  2. ^ フローラのことを放置してのことらしく、「勇者なんてことが済んだらすぐどこかへ行ってしまう」とフローラは後に皮肉っている
  3. ^ ロカも最初はその一人だったが、アバンの強さや本当は熱い一面を持っていることを知って考えを改め、当初は一人で旅立つつもりだったアバンに同行する。
  4. ^ ただし、ハドラーに対しては死後、灰となって守ってくれた彼と対面した時も丁寧語では喋っていない。魔王ハドラーとは長年の間、宿敵としての死闘を経て互いに戦友として認め合える関係になったことも影響しているとみられる。それはハドラーの死の際にはっきりと見て取れ、アバンもハドラーも互いのことを生涯の宿敵と認めていた。
  5. ^ もっとも作中で他に使用したのは大魔王バーンのみで、尋常ならぬ魔力の持ち主である彼のみが完全に制御できることが明らかになっている。
  6. ^ ドラゴンクエストはゲームシステムとして、種々の能力がパラメータ値として設定されているため、アバンであれば単純な「ちから」以外の能力が高い可能性が高い事が分かる。
  7. ^ 鎖は状の武器、牙は手にはめて用いる武器のことである。ゲームの『ドラゴンクエスト』ではいずれも武器の種類として存在するが、作中で使用が描かれたのは刀殺法と槍殺法のみ。