アナグマ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アナグマから転送)
移動先: 案内検索
アナグマ属
ヨーロッパアナグマ
ヨーロッパアナグマ Meles meles
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
亜目 : イヌ型亜目 Caniformia
下目 : クマ下目 Arctoidea
小目 : イタチ小目 Mustelida
上科 : イタチ上科 Musteroidea
: イタチ科 Mustelidae
: アナグマ属 Meles
学名
Meles Brisson, 1762[1]
和名
アナグマ属[2]

分布域

  ヨーロッパアナグマ
  アジアアナグマ
  ニホンアナグマ

アナグマ属(アナグマぞく、Meles)は、食肉目イタチ科に分類される属。

分布[ソースを編集]

ユーラシア大陸日本[2]

形態[ソースを編集]

体長52 - 90センチメートル[2]。尾長11.5 - 20センチメートル[2]体重10 - 16キログラム[2]。尾は体長の1/4以下[2]。背面は灰色(体毛は黒いが、基部や先端が白い)[2]。胸部や四肢の毛衣は濃褐色[2]

歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上下6 - 8本、大臼歯が上顎2本、下顎4本で計34 - 38本[2]。前肢の爪は湾曲し発達する[2]

分類[ソースを編集]



アメリカアナグマTaxidea taxus




ラーテルMellivora capensis





ブタバナアナグマ
Arctonyx collaris



ヨーロッパアナグマ
Meles meles




イタチ科の他属





Koepfli et al.(2008)より核DNAやミトコンドリアDNAのベイズ法により系統推定した系統図を抜粋[3]

本属を含めたアメリカアナグマ属イタチアナグマ属・スカンクアナグマ属(スカンク科へ分割)・ブタバナアナグマ属でアナグマ亜科を構成する説もあった[2]。2008年に発表されたイタチ科の核DNAやミトコンドリアDNAの最大節約法最尤法ベイズ法による系統推定では、ブタバナアナグマ属とのみ単系統群を形成しこの単系統群はアメリカアナグマ属・ラーテル属に次いで分岐した系統だと推定されている[3]。一方で従来のアナグマ亜科の単系統性は否定された[3]。この論文ではイタチ科内の亜科の復活や再定義も提唱しており、その説に従えば本属とブタバナアナグマ属のみでアナグマ亜科Merinaeを構成する[3]

以前はアナグマMeles melesのみで本属を構成していた[2]。2002年に陰茎骨の形状からアナグマを3種に分割する説が提唱された[4]

以下の分類・英名はMSW3 (Wozencraft,2005)、和名は暫定的に(金子,2009)に従う[1][5]

生態[ソースを編集]

森林などに生息する[2]。50 - 100メートルに達する複数の入口がある巣穴を、主に斜面に掘り生活する[2]夜行性で、昼間は巣穴の中で休む[2]。寒冷地に生息する個体群は冬季になると巣穴の中で冬ごもりを行う(ヨーロッパ北部5か月、ロシア東部7か月)[2]

昆虫ミミズカエル爬虫類鳥類、小型哺乳類、果実キノコなどを食べる[2]

繁殖形態は胎生。受精卵の着床が遅延する期間は10か月で、遅延期間を除いた妊娠期間は6 - 8週間[2]。2 - 5月に1回に2 - 6匹(主に3 - 4匹)の幼獣を産む[2]。授乳期間は2か月半[2]。16年2か月の飼育例がある[2]

人間との関係[ソースを編集]

体毛が筆や絨毯の原料として利用されることもある[2]

ヨーロッパでは中世から、捕獲したアナグマを人工の巣穴に入れて犬と闘わせる「アナグマいじめ」(badger-baiting) というブラッド・スポーツが行われていた。イギリスアイルランドではエアデール・テリアベドリントン・テリアブルー・ポールフォックス・テリアグレン・オブ・イマール・テリアシーリハム・テリアブルテリアスタッフォードシャー・ブル・テリアウェルシュ・テリアアイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアケリー・ブルー・テリアなどが、北ヨーロッパではダックスフントバセットハウンドなどが、南ヨーロッパではポデンゴ・ポルトゥゲスなどがアナグマ犬として用いられた。

1968年までは、アイリッシュ・ケンネル・クラブはアナグマ犬の素質を認定するチャスタス・モール (Teastas Mor) という試験を行っていた。天然のアナグマの巣穴に犬を送り込み、5分以内にアナグマと組み付く(アナグマに噛み付いて放さない)ことができれば合格とされた。アイリッシュ・テリア、ウィートン・テリア、ケリー・ブルー・テリアがアイリッシュ・ケンネル・クラブのテリア部門でチャンピオンになるにはチャスタス・モールに合格した認証が不可欠であった。

イギリスでは、アナグマいじめは1835年に、犬を使って巣穴に追いつめたアナグマを掘り出すバジャー・ディギング (badger digging) は1973年に、強力な光源と猟犬と銃を用いて夜間にアナグマを狩るランピング (lamping) は2004年の狩猟法によって違法となった。1992年のアナグマ保護法により、ナチュラル・イングランドからの許可を得ずにアナグマを殺すことは違法とされている。にもかかわらず、これら全てが未だに行われており、1990年の調査では毎年9000頭のアナグマがバジャー・ディギングの犠牲になっていると推定されている。しかし、アナグマの最大の人為的死因は交通事故である。

イギリスとアイルランドでは、アナグマがウシ型結核菌 (Mycobacterium bovis) を媒介することが知られている。これらの国では主に牛の畜産業者が中心となってアナグマの駆除を推進しており、アナグマ保護団体との摩擦を生んでいる。アナグマの駆除は1970年代から行われており、ウシ型結核予防に対するアナグマ駆除の有効性についての研究も行われているが、未だ結論は出ていない[6][7][8]

畜産業者を除けば、イギリスではアナグマはおおむね好感を持たれており、アナグマの保護を目的とした団体が多数存在する。アナグマ保護団体を統括するのがバジャー・トラストである[9]

日本では本種とタヌキムジナという名称で混同されていた(例えばたぬき・むじな事件)。近年は開発による生息地や獲物の減少により生息数は減少している。

画像[ソースを編集]

参考文献[ソースを編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b W. Christopher Wozencraft, "Meles," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, pp. 611-612.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 斉藤勝・伊東員義・細田孝久・西木秀人 「アナグマ属」『世界の動物 分類と飼育2(食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、42-43頁。
  3. ^ a b c d Klaus-Peter Koepfli, Kerry A Deere, Graham J Slater, Colleen Begg, Keith Begg, Lon Grassman, Mauro Lucherini, Geraldine Veron, and Robert K Wayne, "Multigene phylogeny of the Mustelidae: Resolving relationships, tempo and biogeographic history of a mammalian adaptive radiation", BMC Biology, Volume. 6, No. 1, 2008, pp. 10-22.
  4. ^ Alexei. V. Abramov, "Variation of the baculum structure of the Palaearctic badger (Carnivora, Mustelidae, Meles)," Rossian Journal of Theriology, Volume 1, No. 1, 2002, pp. 57-60.
  5. ^ 金子弥生「アナグマの生態を追って」『哺乳類科学』第49巻 2号、日本哺乳類学会、2009年、327-328頁。
  6. ^ The Department of Agriculture & Food (Ireland). Disease Eradication Schemes - Bovine Tuberculosis and Brucellosis. Retrieved on 8 May 2006.[リンク切れ]
  7. ^ Cassidy, Martin. Badgers targeted over bovine TB. BBC News 2 December, 2004. Retrieved on 8 May 2006.
  8. ^ National Federation of Badger Groups (Ireland). Cattle blamed for massive increase in bovine TB. Retrieved on 8 May 2006.[リンク切れ]
  9. ^ The Badger Trust Home Page

関連項目[ソースを編集]