「モース硬度」の版間の差分

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ここで言う硬さの基準は「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」であり、「叩いて壊れるかどうか」の堅牢さではない(そちらは[[じん性]]を参照)。ダイヤモンドは砕けないというのは誤りであり、ハンマーで叩くなどによって容易に砕けることもある。また、これらの硬度は相対的なものであるため、モース硬度4.5と示されている2つの鉱物があったとしても、それらは同じ硬度とは限らない。これは蛍石で引っかくと傷がつかず、燐灰石で引っかくと傷つくということを示すのみである。だからカッターナイフなどでも切れるほどやわらかい。数値間の硬度の変化は比例せず、硬度1と2の間、9と10の間の硬度の差が大きいことも特徴的である
ここで言う硬さの基準は「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」であり、「叩いて壊れるかどうか」の堅牢さではない(そちらは[[じん性]]を参照)。[[ダイヤモンド]]は砕けないというのは誤りであり、[[ハンマー]]で叩くなどによって容易に砕けることもある。また、これらの硬度は相対的なものであるため、モース硬度4.5と示されている2つの鉱物があったとしても、それらは同じ硬度とは限らない。これは、[[蛍石]]で引っかくと傷がつかず、[[燐灰石]]で引っかくと傷つくということを示すのみである。だから[[カッターナイフ]]などでも切れるほどやわらかい。


一見すると不便な見分け方のようでもあるが、分析装置のない野外においては、鉱物を同定するために役立つ簡便で安価な方法である。
数値間の硬度の変化は[[比例]]せず、硬度1と2の間、9と10の間の硬度の差が大きいことも特徴的である。一見すると不便な見分け方のようでもあるが、分析装置のない野外においては、鉱物を同定するために役立つ簡便で安価な方法である。


モース硬度の「モース」は、この尺度を考案した[[ドイツ]]の鉱物学者[[フリードリッヒ・モース]]に由来している。
モース硬度の「モース」は、この尺度を考案した[[ドイツ]]の鉱物学者[[フリードリッヒ・モース]]に由来している。


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硬さを計る試料物質で標準物質をこすり、ひっかき傷の有無で硬さを測定する。現実に存在する[[化学物質]](人工物、天然物)の中で、モース硬度として最も硬いものはダイヤモンドである。

硬さを計る試料物質で標準物質をこすり、ひっかき傷の有無で硬さを測定する。現実に存在する化学物質(人工物、天然物)の中で、モース硬度として最も硬いものはダイヤモンドである。

モース硬度は定量的な硬度に比例していない。


== 身の回りの硬度 ==
== 身の回りの硬度 ==
人間の爪の硬度は約2.5、銅製の硬貨の硬度は約3.5、木工用の[[釘]]の硬度は約4.5、ガラスの硬度は約5、ナイフの刃の硬度は約5.5(ただし鋼材の種類に左右される)、[[やすり|鋼鑢]]の硬度は約7.5である。
人間の爪の硬度は約2.5、銅製の硬貨の硬度は約3.5、[[木工]]用の[[釘]]の硬度は約4.5、ガラスの硬度は約5、ナイフの刃の硬度は約5.5(ただし鋼材の種類に左右される)、[[やすり|鋼鑢]]の硬度は約7.5である。


== 修正モース硬度 ==
== 修正モース硬度 ==
修正モース硬度として、15段階に修正されたものが使われる。
修正モース硬度として、15段階に修正されたものが使われる。
* 1 (1) :

* 1 (1) :[[滑]]
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* 3 (3) :方解
* 3 (3) :[[方解]]
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* 4 (4) :[[蛍]]
* 5 (5) :燐灰
* 5 (5) :[[燐灰]]
* 6 (6) :正長
* 6 (6) :[[正長]]
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* 7 (-) :[[溶融石英]]
* 8 (7) :水晶([[石英]]
* 8 (7) :水晶(石英)
* 9 (8) :黄玉([[トパーズ]]
* 9 (8) :黄玉(トパーズ)
* 10 (-) :[[柘榴石]]
* 10 (-) :[[柘榴石]]
* 11 (-) :[[溶融ジルコニア]]
* 11 (-) :[[溶融ジルコニア]]
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* 13 (-) :[[炭化ケイ素]] [2500]
* 13 (-) :[[炭化ケイ素]] [2500]
* 14 (-) :[[炭化ホウ素]] [2750]
* 14 (-) :[[炭化ホウ素]] [2750]
* 15 (10) :[[ダイヤモンド]] [9000]
* 15 (10) :ダイヤモンド [9000]

( ) 内が旧モース硬度、[ ] 内は[[ヌープ硬度]]。
( ) 内が旧モース硬度、[ ] 内は[[ヌープ硬度]]。


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* [[キン肉マン]] - 登場人物の防御力の設定に、モース硬度をモチーフにした「超人硬度」が存在する。
* [[キン肉マン]] - 登場人物の防御力の設定に、モース硬度をモチーフにした「超人硬度」が存在する。
* [[スーパーロボット大戦シリーズ]] - モース硬度12.5という強度のオリハルコニウム、およびそれを精製加工したゾル・オリハルコニウムが登場する。
* [[スーパーロボット大戦シリーズ]] - モース硬度12.5という強度のオリハルコニウム、およびそれを精製加工したゾル・オリハルコニウムが登場する。

== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
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* [[硬さ]]
* [[硬さ]]
* [[ビッカース硬さ]]
* [[計量単位一覧]]
* [[計量単位一覧]]

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{{モース硬度}}
{{モース硬度}}

2012年2月2日 (木) 04:39時点における版

モース硬度(モースこうど)、モース硬さ(モースかたさ、: Mohs hardness[1])またはモース硬さスケール(モースかたさスケール、: Mohs' scale of hardness[2])は、主に鉱物に対する硬さ尺度の1つ。硬さの尺度として、1から10までの整数値を考え、それぞれに対応する標準物質を設定する。

ここで言う硬さの基準は「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」であり、「叩いて壊れるかどうか」の堅牢さではない(そちらはじん性を参照)。ダイヤモンドは砕けないというのは誤りであり、ハンマーで叩くなどによって容易に砕けることもある。また、これらの硬度は相対的なものであるため、モース硬度4.5と示されている2つの鉱物があったとしても、それらは同じ硬度とは限らない。これは、蛍石で引っかくと傷がつかず、燐灰石で引っかくと傷つくということを示すのみである。だからカッターナイフなどでも切れるほどやわらかい。

数値間の硬度の変化は比例せず、硬度1と2の間、9と10の間の硬度の差が大きいことも特徴的である。一見すると不便な見分け方のようでもあるが、分析装置のない野外においては、鉱物を同定するために役立つ簡便で安価な方法である。

モース硬度の「モース」は、この尺度を考案したドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースに由来している。

標準物質

モース硬度 標準物質 化学式 絶対硬度 画像 解説
1 滑石 Mg3Si4O10(OH)2 1 最も軟らかい鉱物で、つるつるした手触り。
2 石膏 CaSO4·2H2O 3 指ので何とか傷をつけることができる。
3 方解石 CaCO3 9 硬貨でこするとなんとか傷をつけることができる。
4 蛍石 CaF2 21 ナイフの刃で簡単に傷をつけることができる。
5 燐灰石 Ca5(PO4)3(OH,Cl,F) 48 ナイフでなんとか傷をつけることができる。
6 正長石 KAlSi3O8 72 ナイフで傷をつけることができず、刃が傷む。
7 石英 SiO2 100 こすりあわせるとガラス鋼鉄などに傷がつく。
8 トパーズ(黄玉) Al2SiO4(OH,F)2 200 こすりあわせると石英に傷をつけることができる。
9 コランダム(鋼玉) Al2O3 400 石英にもトパーズにも傷をつけることができる。
10 ダイヤモンド(金剛石) C 1600 地球上の鉱物の中で最も硬い。

硬さを計る試料物質で標準物質をこすり、ひっかき傷の有無で硬さを測定する。現実に存在する化学物質(人工物、天然物)の中で、モース硬度として最も硬いものはダイヤモンドである。

身の回りの硬度

人間の爪の硬度は約2.5、銅製の硬貨の硬度は約3.5、木工用のの硬度は約4.5、ガラスの硬度は約5、ナイフの刃の硬度は約5.5(ただし鋼材の種類に左右される)、鋼鑢の硬度は約7.5である。

修正モース硬度

修正モース硬度として、15段階に修正されたものが使われる。

( ) 内が旧モース硬度、[ ] 内はヌープ硬度

フィクション

  • キン肉マン - 登場人物の防御力の設定に、モース硬度をモチーフにした「超人硬度」が存在する。
  • スーパーロボット大戦シリーズ - モース硬度12.5という強度のオリハルコニウム、およびそれを精製加工したゾル・オリハルコニウムが登場する。

脚注

  1. ^ 文部省日本物理学会編『学術用語集 物理学編』培風館、1990年。ISBN 4-563-02195-4http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 
  2. ^ 文部省編『学術用語集 地学編日本学術振興会、1984年。ISBN 4-8181-8401-2http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 

関連項目