滑石
滑石(かっせき、英: talc、タルク)は、珪酸塩鉱物の一種でフィロケイ酸塩鉱物に分類される鉱物。あるいはこの鉱物を主成分とする岩石の名称。別名としてフレンチチョーク、ステアタイト、ソープストーンなどがある。
滑石(鉱物)[編集]
滑石 | |
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分類 | ケイ酸塩鉱物 |
化学式 | Mg3Si4O10(OH)2 |
結晶系 | |
へき開 | 一方向に完全 |
モース硬度 | 1(基準) |
光沢 | 真珠光沢 |
色 |
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条痕 | 白色 |
比重 | 2.7 |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
滑石は、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物で、粘土鉱物の一種である。
組成式はである。蛇紋石()が熱水変質、あるいは苦灰石()が接触変成してできる。
色は一般に白で、ろうそくの蝋や真珠のような光沢を持っているために、これを主成分とする岩石(後述)はろう石と呼ばれることもある。微細な薄片状の結晶が集合し、固まっている産状を呈することが多く、大きな単結晶状態で産出することはまれである。不純物により灰色や緑色をしたものもある。
滑石はモース硬度1の基準となる標準物質で、鉱物の中で最も軟らかいものの一つである。爪で傷つけることもできる(爪の硬度は2.5度)。純粋なものは安定した硬度を示すが、不純物が含まれる場合は硬度が高くなる。
用途[編集]
- 食品添加剤としては、既存添加剤、製造用剤に分類される[1][2]。欧州連合(EU)内の食品添加物分類番号であるE番号では「553b」が割り当てられている[3]。
- チョーク:黒板用、裁縫の時に使うチャコ、工事現場などでのマーキング用、熱で消えないため溶接や製鉄の現場で使用されている 。
- 社会科や図画工作などで勾玉づくりの教材にも利用されている[4]。
- その他の用途としては、玩具、ベビーパウダーなど化粧品類、医薬品、上質紙の混ぜ物などがある。ベビーパウダーをタルカムパウダーと呼ぶ事があるのは、滑石の英語名 talcに由来する。滑石は、品質により含有量は大きく変わるが、不純物としてアスベストを含有して中皮腫を誘発することがある[5]ため、不用意に吸入したりすることのないよう注意が必要である。一般的には北イタリア産のものがアスベストの混入が少ない上質とされている。
- 利尿作用、消炎作用があるとされ、中国では硬滑石の名で用いられる。一方、猪苓湯(ちょれいとう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などの漢方薬に配合されるのは、ハロイサイト、カオリンなどからなる軟滑石である。第十六改正日本薬局方には「カッセキ」の項に「本品は鉱物学上の滑石とは異なる」と記載されている。
- 悪性胸水患者に対する胸膜癒着術に用いられる。日本における製品名は「ユニタルク」(製造販売:ノーベルファーマ)。
滑石(岩石)[編集]
滑石は、輝石、角閃石、カンラン石といったマグネシウムのケイ酸塩を主成分とする鉱物から成る岩石が熱水変成して生じる変成岩であり、前述の鉱物を主成分とし、他の鉱物と混ざった状態で産出することが多い。
産出地[6][編集]
国外[編集]
国内[編集]
脚注[編集]
- ^ 食品添加物ADI関連情報データベース
- ^ 厚生労働省行政情報 添加物使用基準リスト 2
- ^ Current EU approved additives and their E Numbers、英国食品基準庁、26 November 2010
- ^ “小学校理科ハンドブック”. 大阪府教育センター. 2021年3月9日閲覧。
- ^ 石綿による疾病の認定基準の運用上の留意点について 2「石綿ばく露作業」について 厚生労働省労働基準局(2003年9月19日)2020年11月2日閲覧
- ^ “アスベスト混入タルク問題・ベビーパウダー問題の原点1987年そして1975年”. 全国労働安全衛生センター連絡会議 (2020年5月24日). 2021年7月19日閲覧。
参考文献[編集]
- 黒田吉益・諏訪兼位『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』共立出版、1983年、ISBN 4-320-04578-5。
- 松原聰『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物 学習研究社、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
- 国立天文台 編『理科年表 平成19年』丸善、2006年、ISBN 4-621-07763-5。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- Talc(mindat.org)
- Talc Mineral Data(webmineral.com)