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一部のサイトでは曖昧な表現で日本、韓国、台湾、中華人民共和国でも流行っていると思わせぶりの表現をする。これで血液型を話題にすることは世界的なのだと勘違いしてしまう日本人もいる。
一部のサイトでは曖昧な表現で日本、韓国、台湾、中華人民共和国でも流行っていると思わせぶりの表現をする。これで血液型を話題にすることは世界的なのだと勘違いしてしまう日本人もいる。


== 血液型性格分類の問題点および諸議論 ==
血液型の分類にはABO型以外にもRh+-型やMN型など様々な分け方がある。ABO型の分類は赤血球に関するものだが、[[白血球]]については[[ヒト白血球型抗原]](HLA)型と呼ばれる種類があり、その組み合わせは数万種類あると言われている。[[骨髄移植]]によって血液がドナーのものに変わった時にも、性格または気質に明確な変化があるのかといった問題もある。


4類型するための性格についての基準が何かなどに関しても極めて問題が多い。相手の血液型に対して事前に情報を得て、相手を知った錯覚に陥った場合、適切な人間関係を構築する上で障害となる可能性もある。


現在は、血液型性格分類の肯定者は、「因果関係が無いとも立証できない」(→だから間違いではない)という意見が少なからず存在しており、血液型性格分類を扱うテレビ番組等では、この類の意見を論拠に番組を作っている。実際、[[放送倫理・番組向上機構|BPO]]への苦情に対し、一部のテレビ局はそのような趣旨の回答をしている(外部リンク参照)。


現実には、マス媒体で語られる血液型性格分類は、前提となるデータ自体が、有意な統計とは呼べない、単なる局地的アンケート調査である。なぜなら、人類種一般に平均化して語るのであれば、世界規模・歴史規模の全体調査か、仮にサンプリング調査とする場合でも、世界各地・各時代から均等に、全ての年齢層から十分な数のサンプルを抽出しないと意味が無い。追跡調査はもちろん必要である。なぜなら性格は国柄や各時代の生活スタイルにより変化するものだからである。
また根本的な問題として、仮にアンケート調査・統計を取る手段が正しかったとしても、統計を取ることと、それが血液(型)がどのような作用・機能順序で性格に影響を及ぼすかとは、何の関係もない、という点に注意する必要がある。'''本来証明すべきは、血液がどのような機能順序で性格に影響を及ぼしているかの方である'''が、血液型性格分類は、この点について、第三者による追試・査読を経て有意な関係性を証明できた事はないとされている。<ref>村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466</ref>。

脳にはABO血液型物質は存在しないが、弱いながらも[[抗原抗体反応]]は起こるため、なんらかの類似物質が脳に存在する<ref>{{cite journal | author = Beitchman J, Mik H, Ehtesham S, Douglas L, Kennedy J | title = MAOA and persistent, pervasive childhood aggression. | journal = Mol Psychiatry | volume = 9 | issue = 6 | pages = 546-7 | year = 2004 | pmid = 15024395 | doi=10.1038/sj.mp.4001492}}</ref>可能性は否定できないという説も存在するが、推測の域を出ないものである。

白血球のHLA型により罹患しやすい疾病はあることが知られており、ABO型においてもそれぞれ性格よりも「体質」や罹患しやすい「病気」に影響があるとの研究が[[1980年代]]では持てはやされていたが、[[ヒトゲノム]]が終了しつつあった[[2000年]]、科学雑誌「[[nature]]」にてABO式と病気の関連性について否定的な結論が発表された。前出の「血液型別ダイエット」もこの一環で提唱されたものであり、決して性格の違いを問うものではない。この考え方が正しいとすれば、血液型はまず体質に影響を及ぼし、次いで体質が性格や人格形成に影響を及ぼすものであると考えられなくはないと主張するものもいる。しかし、既に心理学の分野において、血液型と性格との関連について、現在の日本におけるようなステレオタイプ的な相関関係は確認されていないという事実がある。

同じ血液型の人でも様々な体質に分かれるものであり、仮に「筋肉質な人にA型が多い」という統計学的な「傾向」を発見することはできたとしても、そこから「A型以外の人は筋肉がつきにくい」と結論づけるのは論理の飛躍であり、血液型≒性格という結びつけはできない。

血液型性格分類の問題点を、科学的な成否だけではなく、その差別的な側面と捉える主張もある。血液型を口実に性格を否定された経験のある人が、血液型性格分類を否定、それかヤケになって自分に都合の良いところだけをひたすら肯定する立場を取るようになる場合もある{{要出典}}。

例えば、過去に血液型で性格を否定された経験のある人が、否定に回らず、後に何か社会に不満があると血液型に問題点を摩り替えるようになる傾向がある{{要出典}}。自分に都合の良い情報だけを集め編集して紹介したり、[[捏造]]された情報を紹介している者も存在するが、分野を問わず血液型に拘っている人間は存在する。

この問題はネット上でも浮き彫りになりつつある。地域や人種別の血液型の割合をさりげなく変えたり、特定の血液型が多いことを理由として特定の地域を評価したり貶したりする人々が存在するのも事実である。

科学的な根拠に乏しいにも関わらず、ある程度性格を知っている相手のABO式血液型であれば、25%をはるかに超える確率で当てることができる人が存在することは知られている。しかし、''A型とO型が日本人全体の約70%を占める''ので(A・O・B・ABの日本人総人口に占める割合は、それぞれ4:3:2:1)、毎回A型と言えば約40%の高確率で正解することになる。

[[坂元章]]は、ABO式血液型性格分類が流布されていることで、各人の行動様式に告げられた性格が織り込まれてしまっている影響を指摘し、これを「血液型[[ステレオタイプ]]による[[予言の自己成就]]現象」([[ピグマリオン効果]]参照)と名付け、[[1992年]]に自己判断による性格はABO式血液型性格分類に一致する、とする研究結果を発表している。例えば、生まれたときから○○は××だからと何度も繰り返し言われると、本人も自分が真面目だと思い込み、そのように行動してしまうことがないとは言えない、とし、もしそうであれば、やはり○○は××だとする根拠にしてしまう因果の逆転が起こる、というものである。その例として、阪神タイガースの藤川球児投手は、自身がドナー登録をした際に「自分の血液型がA型と思っていたのですが、その採血でなんとO型と分かったんです。前から自分の性格はA型ではないと思っていたのですが、これでA型のきれい好きという'''プレッシャーから開放されましたよ'''」と語っている。

また、能見の著作には著名人のABO式血液型リストがしばしば掲載されており、それが主張に「[[バーナム効果]]」の影響を与え、何も知らない人にとっては説得力があるかのように思えるものになったとも考えられる<ref>[http://www1.doshisha.ac.jp/~yshibana/etc/blood/archive/ 血液型-性格関連説について]</ref>。

血液型性格分類についての論争は、[[1970年代]]から現在まで続いており、従来は[[心理学]]や[[医学]]的な見地からの反対論がほとんどであったが、最近は[[大脳生理学]]や[[遺伝子工学]]的な見地による賛成論もある。一般の話題になることから、マスメディアにもたびたび取り上げられ、賛成、反対それぞれの立場から何度も実験が行われている。現在、まだ両者に特定の関係が学術的に明確な根拠を伴って立証されておらず、「現状では、特定の関連は知られていない」というのが穏当な結論である。

が、それ以前の問題として、能見の説が学術の体を為していないという批判も存在する。特定の血液型に偏った人口構成になっている各国と比べて、4種類の血液型いずれもが一定数の割合を占めているアジア諸国の方が多様な性格の人で構成されているなどというデータも存在せず、まだまだ血液型と気質の間に特定の関連性を発見することはできていない。心理学的見地からも「血液型と性格に科学的因果関係は発見できていない」ということが常識<ref>[http://www.remus.dti.ne.jp/~nakanisi/ketsueki/index.html 血液型性格判断をやめよう] - 広島修道大学人文学部助教授 中西大輔氏のページ。血液型性格判断の持つ問題点や差別性が心理学者の立場から詳説されている。</ref>とされている。

現在では古川竹二をはじめ能見親子などの研究内容に、実証性がないことが証明された<ref>[http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=16459254 血液型と気質の関連性の否定を実証している論文の1つ]</ref><ref>村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466</ref><ref>[http://www.senrigan.net/bloodmind/ 究極の血液型心理検査] - じつは判断結果はランダム表示されるだけのものだが、常時9割前後の人々が「当たっている」と回答している。バーナム効果実証サイト。</ref>。

しかし、能見正比古の著書と同様にそれらの著書の科学的態度に対しては批判の声があり<ref>[http://www.remus.dti.ne.jp/~nakanisi/ketsueki/what.html 血液型性格判断に対する反論]</ref><ref>[http://members.jcom.home.ne.jp/natrom/Blood.html 遺伝学からみた血液型性格判断]</ref>、またその研究内容の否定も証明された<ref>村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466</ref>。

[[いじめ]]や嫌がらせの口実に使われることや、擬似科学として紹介されることによって、現在は血液型性格分類について反対もしくは慎重派が、以前に比べ増加している傾向にある。血液型の話題や血液型を聞かれることを嫌がる人も増加し「[[ブラッドタイプ・ハラスメント]](ブラッドタイプ: blood type=血液型)」という言葉も生まれた。

しかし、ゲームや漫画などで登場人物の血液型を設定することもある。また新聞や雑誌でも、血液型と性格とを結びつけるようなものが掲載される場合もあり、なかには単なる遊び占い感覚ではなく、血液型と性格を結び付けてしまっている古い価値観に縛られた人がいる。なかなか偏見や嫌がらせが無くならないのが現状である。

== 血液型性格分類と人権 ==
[[ユネスコ]]の総会で採択された「[[ヒトゲノム]]と[[人権]]に関する世界宣言」の第2条には

<blockquote style="background: #ffffec; border: 2px solid #a0a0a0; padding: 1ex;">「何人もその遺伝的[[形質]]によらず、その人自身の尊厳と[[権利]]によって、尊重されるべき権利を有する。その尊厳により、個人はその遺伝的形質によってのみ判断されてはならず、またその人の独自性と多様性とが尊重されなければならない。」</blockquote>

とある。

[[1990年]][[11月21日]]の[[朝日新聞]]11面には、「[[三菱電機]]発案者の伊藤円冗通信機器事業部長(当時)が血液型をもとにAB型のプロジェクト・チームを結成しており、ヒット商品の開発を目指している」と、真面目かつ好意的に報道された。しかし、このプロジェクトは結局、常設されることなく終わったようである{{要出典}}。

就職や配属をABO式血液型で判断している会社、子供の結婚相手は特定の血液型でなければならないという親、血液型別に色の違う帽子をかぶらせている保育園などの例もある。

遺伝的形質によってのみ個人を判断し差別する例が見られることが問題とされる<ref>[http://www.remus.dti.ne.jp/~nakanisi/ketsueki/index.html 血液型性格判断をやめよう]</ref><ref>[http://www1.doshisha.ac.jp/~yshibana/etc/blood/archive/ 血液型-性格関連説について]</ref>。

<small>上記の保育園については、バラエティ番組や能見親子の著書により取り上げられていることもあり、あたかも日頃から常に血液型別の保育を行っているような印象があるが、実際はそのようなことはない。年に数回の縦割り交流実施にあたり便宜的に血液型を用いているにすぎず、特に血液型別の保育を行っていることはない。[[埼玉県]]内にあるこの保育園は社会福祉法人により運営されている普通の認可保育園でもあり、バラエティ番組等で印象付けられているような血液型別の保育実施などはありえない。</small>

[[田崎晴明]]・学習院大教授(統計物理学)の提案により、血液型性格分類など「科学的に見える非科学」にどう対応すべきか考えるシンポジウムが日本物理学会(佐藤勝彦会長)によって[[愛媛大学]](松山市)で開かれた。血液型性格分類を「信じているように振舞う人の動機は何か」という社会心理学的考察も近年では主流になりつつある。


== テレビでの扱い ==
== テレビでの扱い ==

2007年12月13日 (木) 12:42時点における版

血液型性格分類(けつえきがたせいかくぶんるい)は、数限りなく認められるの持つ遺伝形質の内、赤血球の血液型についての分類法であるABO式血液型性格との間に「特定の」あるいは「何らかの」関連性が存在するという学説あるいは主張である。

概要

明確な科学的根拠がほとんど存在せず、その拠り所とされる学説の科学性についても古くから否定的な議論が呈されてきた。そして、今日では疑似科学の1つにも数えられている。

また、近年の日本では、この説がマスコミにより多年に渡って流布され続けてきた為に、既に一般認識として広まってしまっている。そして、この認識は不当な偏見や差別その他の様々な問題を生む要因を孕んでいる。

歴史

血液型と気質との関連に関する研究は、1916年に医師の原来復らによるものが最初とされているが、昭和初期になって、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)教授であった教育学者古川竹二による一連の研究が広く注目を浴びた。現在も広く流布しているABO式血液型による性格判断の原型は、ここで作られた。

古川の最初の論文は、1927年に『心理学研究』誌上に発表された「血液型による気質の研究」で、その後に研究の集大成として1932年に『血液型と気質』が出版された。同書の内容が古川学説とされることが多い。主な手法は、ABO式血液型別の質問項目(自省表)をそれぞれ10項目程度ずつ作成し、質問紙法により血液型との一致率を測定するものである。古川自身によると、自省表は80%以上の一致率があるとされた。これとは別に、職業別にABO式血液型分布を調査し、職業特性と比較したりした[1][2]

古川学説は、当時金沢医科大学教授であった古畑種基らに支持され、心理学だけではなく、医学、教育など多くの分野で注目を集めた。このため数多くの追試が行われたが、例外が多過ぎるため古畑も懐疑的になり、結局、当時の学会でも否定された。

大日本帝国陸軍においても上記の影響を受け、血液型から将兵の気質・能力を分類する事で、部隊編成の際に最も適した兵科・任務にあてる事ができるとの考えから、各部隊から将兵の調書を集め研究が行われたが、期待した結果は全く得られなかった。また、戦時大量動員の際に一人ひとり血液型を検査・分類するのは不可能に近かったため、結局は採用されずに終わった[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

第二次大戦後は長らく取り上げられることがなかったが、1971年能見正比古(姉が古川の教え子であった)が古川の研究を引用し『血液型でわかる相性』[3]等一連の著作を発表。これにによって世間に広く知られるようになったが、能見正比古の統計はデタラメなものであったことが、後の検証でも証明される[4]。そして、能見正比古の没後は息子の能見俊賢が、父親の研究を元に多くの著書を記し、マスコミにもしばしば登場する第一人者的な存在となっていた(これら能身親子による著書には、その科学的態度に対して批判の声がある)。

現在では古川竹二をはじめ能見親子などの研究内容に実証性がないことが証明されているが、平成以降も生物学的な正当性を称える者が少なからずいた。

広がり

日本韓国中華人民共和国(中国)・中華民国台湾)など主に東アジアを中心に流布している。かつてイギリスフランスで提唱されたことがあったが、ほとんど普及しなかった。学術的な研究としては英米で若干の例があるだけである。

血液型ステレオタイプが流布している国では、個人の自己紹介や有名人のプロフィールなどにABO式血液型が含まれることが多い。実際にウィキペディア日本語版でも、人物の記事には血液型が記されていることが多い。しかしそれ以外の国では、人に血液型を尋ねるといった風習がないため、血液型を尋ねると、「あなたは医者か?」「献血でもするのか?」といった発言が返ってくる。

他国へ普及しない原因として国によっては血液型が偏っていることもあげられる[5]。日本では全てのABO式血液型が約10~40%の比率で比較的ばらけているが、例えば欧米では、A型の人とO型の人が総人口の9割近くを占め、B型の人とAB型の人の割合が極端に少ない国もある。混血の少ないアメリカ先住民族集団には、ほぼ全ての構成員がO型だという集団もある。このような環境において、所属人口割合が偏った属性であるABO式血液型をもって、現実世界に存在する多種多様な性格を判断するという説に面白みはない。日本をはじめとする東アジアと同様に各ABO式血液型の人口割合が比較的平均的なその他のアジアで普及しない原因としては、そもそもその地域の人々は、自分の血液型を知る機会が少ないという理由が挙げられる。

ピーター・ダダモ(自然療法医)による血液型別ダイエット本「EAT RIGHT 4 YOUR TYPE」は血液型分類に基づくダイエット法を紹介し、米国でベストセラーになった。だが、この本は血液型による性格判断ではなく、学術的な検証は行われておらず、医学的根拠はないとされる。この本のように、一時的な流行としてABO式血液型による分類が話題になることはあるが、基本的に血液型を話題にすることはない。

一部のサイトでは曖昧な表現で日本、韓国、台湾、中華人民共和国でも流行っていると思わせぶりの表現をする。これで血液型を話題にすることは世界的なのだと勘違いしてしまう日本人もいる。

血液型性格分類の問題点および諸議論

血液型の分類にはABO型以外にもRh+-型やMN型など様々な分け方がある。ABO型の分類は赤血球に関するものだが、白血球についてはヒト白血球型抗原(HLA)型と呼ばれる種類があり、その組み合わせは数万種類あると言われている。骨髄移植によって血液がドナーのものに変わった時にも、性格または気質に明確な変化があるのかといった問題もある。

4類型するための性格についての基準が何かなどに関しても極めて問題が多い。相手の血液型に対して事前に情報を得て、相手を知った錯覚に陥った場合、適切な人間関係を構築する上で障害となる可能性もある。

現在は、血液型性格分類の肯定者は、「因果関係が無いとも立証できない」(→だから間違いではない)という意見が少なからず存在しており、血液型性格分類を扱うテレビ番組等では、この類の意見を論拠に番組を作っている。実際、BPOへの苦情に対し、一部のテレビ局はそのような趣旨の回答をしている(外部リンク参照)。

現実には、マス媒体で語られる血液型性格分類は、前提となるデータ自体が、有意な統計とは呼べない、単なる局地的アンケート調査である。なぜなら、人類種一般に平均化して語るのであれば、世界規模・歴史規模の全体調査か、仮にサンプリング調査とする場合でも、世界各地・各時代から均等に、全ての年齢層から十分な数のサンプルを抽出しないと意味が無い。追跡調査はもちろん必要である。なぜなら性格は国柄や各時代の生活スタイルにより変化するものだからである。

また根本的な問題として、仮にアンケート調査・統計を取る手段が正しかったとしても、統計を取ることと、それが血液(型)がどのような作用・機能順序で性格に影響を及ぼすかとは、何の関係もない、という点に注意する必要がある。本来証明すべきは、血液がどのような機能順序で性格に影響を及ぼしているかの方であるが、血液型性格分類は、この点について、第三者による追試・査読を経て有意な関係性を証明できた事はないとされている。[6]

脳にはABO血液型物質は存在しないが、弱いながらも抗原抗体反応は起こるため、なんらかの類似物質が脳に存在する[7]可能性は否定できないという説も存在するが、推測の域を出ないものである。

白血球のHLA型により罹患しやすい疾病はあることが知られており、ABO型においてもそれぞれ性格よりも「体質」や罹患しやすい「病気」に影響があるとの研究が1980年代では持てはやされていたが、ヒトゲノムが終了しつつあった2000年、科学雑誌「nature」にてABO式と病気の関連性について否定的な結論が発表された。前出の「血液型別ダイエット」もこの一環で提唱されたものであり、決して性格の違いを問うものではない。この考え方が正しいとすれば、血液型はまず体質に影響を及ぼし、次いで体質が性格や人格形成に影響を及ぼすものであると考えられなくはないと主張するものもいる。しかし、既に心理学の分野において、血液型と性格との関連について、現在の日本におけるようなステレオタイプ的な相関関係は確認されていないという事実がある。

同じ血液型の人でも様々な体質に分かれるものであり、仮に「筋肉質な人にA型が多い」という統計学的な「傾向」を発見することはできたとしても、そこから「A型以外の人は筋肉がつきにくい」と結論づけるのは論理の飛躍であり、血液型≒性格という結びつけはできない。

血液型性格分類の問題点を、科学的な成否だけではなく、その差別的な側面と捉える主張もある。血液型を口実に性格を否定された経験のある人が、血液型性格分類を否定、それかヤケになって自分に都合の良いところだけをひたすら肯定する立場を取るようになる場合もある[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

例えば、過去に血液型で性格を否定された経験のある人が、否定に回らず、後に何か社会に不満があると血液型に問題点を摩り替えるようになる傾向がある[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。自分に都合の良い情報だけを集め編集して紹介したり、捏造された情報を紹介している者も存在するが、分野を問わず血液型に拘っている人間は存在する。

この問題はネット上でも浮き彫りになりつつある。地域や人種別の血液型の割合をさりげなく変えたり、特定の血液型が多いことを理由として特定の地域を評価したり貶したりする人々が存在するのも事実である。

科学的な根拠に乏しいにも関わらず、ある程度性格を知っている相手のABO式血液型であれば、25%をはるかに超える確率で当てることができる人が存在することは知られている。しかし、A型とO型が日本人全体の約70%を占めるので(A・O・B・ABの日本人総人口に占める割合は、それぞれ4:3:2:1)、毎回A型と言えば約40%の高確率で正解することになる。

坂元章は、ABO式血液型性格分類が流布されていることで、各人の行動様式に告げられた性格が織り込まれてしまっている影響を指摘し、これを「血液型ステレオタイプによる予言の自己成就現象」(ピグマリオン効果参照)と名付け、1992年に自己判断による性格はABO式血液型性格分類に一致する、とする研究結果を発表している。例えば、生まれたときから○○は××だからと何度も繰り返し言われると、本人も自分が真面目だと思い込み、そのように行動してしまうことがないとは言えない、とし、もしそうであれば、やはり○○は××だとする根拠にしてしまう因果の逆転が起こる、というものである。その例として、阪神タイガースの藤川球児投手は、自身がドナー登録をした際に「自分の血液型がA型と思っていたのですが、その採血でなんとO型と分かったんです。前から自分の性格はA型ではないと思っていたのですが、これでA型のきれい好きというプレッシャーから開放されましたよ」と語っている。

また、能見の著作には著名人のABO式血液型リストがしばしば掲載されており、それが主張に「バーナム効果」の影響を与え、何も知らない人にとっては説得力があるかのように思えるものになったとも考えられる[8]

血液型性格分類についての論争は、1970年代から現在まで続いており、従来は心理学医学的な見地からの反対論がほとんどであったが、最近は大脳生理学遺伝子工学的な見地による賛成論もある。一般の話題になることから、マスメディアにもたびたび取り上げられ、賛成、反対それぞれの立場から何度も実験が行われている。現在、まだ両者に特定の関係が学術的に明確な根拠を伴って立証されておらず、「現状では、特定の関連は知られていない」というのが穏当な結論である。

が、それ以前の問題として、能見の説が学術の体を為していないという批判も存在する。特定の血液型に偏った人口構成になっている各国と比べて、4種類の血液型いずれもが一定数の割合を占めているアジア諸国の方が多様な性格の人で構成されているなどというデータも存在せず、まだまだ血液型と気質の間に特定の関連性を発見することはできていない。心理学的見地からも「血液型と性格に科学的因果関係は発見できていない」ということが常識[9]とされている。

現在では古川竹二をはじめ能見親子などの研究内容に、実証性がないことが証明された[10][11][12]

しかし、能見正比古の著書と同様にそれらの著書の科学的態度に対しては批判の声があり[13][14]、またその研究内容の否定も証明された[15]

いじめや嫌がらせの口実に使われることや、擬似科学として紹介されることによって、現在は血液型性格分類について反対もしくは慎重派が、以前に比べ増加している傾向にある。血液型の話題や血液型を聞かれることを嫌がる人も増加し「ブラッドタイプ・ハラスメント(ブラッドタイプ: blood type=血液型)」という言葉も生まれた。

しかし、ゲームや漫画などで登場人物の血液型を設定することもある。また新聞や雑誌でも、血液型と性格とを結びつけるようなものが掲載される場合もあり、なかには単なる遊び占い感覚ではなく、血液型と性格を結び付けてしまっている古い価値観に縛られた人がいる。なかなか偏見や嫌がらせが無くならないのが現状である。

血液型性格分類と人権

ユネスコの総会で採択された「ヒトゲノム人権に関する世界宣言」の第2条には

「何人もその遺伝的形質によらず、その人自身の尊厳と権利によって、尊重されるべき権利を有する。その尊厳により、個人はその遺伝的形質によってのみ判断されてはならず、またその人の独自性と多様性とが尊重されなければならない。」

とある。

1990年11月21日朝日新聞11面には、「三菱電機発案者の伊藤円冗通信機器事業部長(当時)が血液型をもとにAB型のプロジェクト・チームを結成しており、ヒット商品の開発を目指している」と、真面目かつ好意的に報道された。しかし、このプロジェクトは結局、常設されることなく終わったようである[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

就職や配属をABO式血液型で判断している会社、子供の結婚相手は特定の血液型でなければならないという親、血液型別に色の違う帽子をかぶらせている保育園などの例もある。

遺伝的形質によってのみ個人を判断し差別する例が見られることが問題とされる[16][17]

上記の保育園については、バラエティ番組や能見親子の著書により取り上げられていることもあり、あたかも日頃から常に血液型別の保育を行っているような印象があるが、実際はそのようなことはない。年に数回の縦割り交流実施にあたり便宜的に血液型を用いているにすぎず、特に血液型別の保育を行っていることはない。埼玉県内にあるこの保育園は社会福祉法人により運営されている普通の認可保育園でもあり、バラエティ番組等で印象付けられているような血液型別の保育実施などはありえない。

田崎晴明・学習院大教授(統計物理学)の提案により、血液型性格分類など「科学的に見える非科学」にどう対応すべきか考えるシンポジウムが日本物理学会(佐藤勝彦会長)によって愛媛大学(松山市)で開かれた。血液型性格分類を「信じているように振舞う人の動機は何か」という社会心理学的考察も近年では主流になりつつある。

テレビでの扱い

かつては科学的根拠や理論が立証されていないにもかかわらず、特定の血液型と特定の性格の関係がしばしばテレビ番組で取り上げられ、2007年頃まではその問題点を取り上げて指摘した番組はあまり見られなかった。

しかし最近では疑似科学を事実のように放送することへの批判が強まり、血液型性格分類を真実であるかのように扱った番組は抑制される傾向にある。更に2007年半ばにTBSで放送された番組では血液型性格分類の問題点と擬似科学性を指摘しており、次第に風向きが変化しつつある。

血液型性格分類が題材にされた代表例

フィクション

  • 韓国では2005年、映画B型の彼氏」が公開された。韓国でも血液型性格分類が過熱している[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。翌年には日本でも公開された。
  • 松岡圭祐の小説「ブラッドタイプ」は血液型性格分類のブームが過熱しすぎた日本を描き、白血病の女性が骨髄移植により血液型がB型に変わるのを嫌い(骨髄移植は白血球抗原(HLA)型の一致が必要とされるため、赤血球の型であるABO式の血液型より優先される)、輸血を拒否し生命の危機に陥るなど、迷信に基づく騒動が頻出、臨床心理士らがその非科学性をどう証明し混乱を鎮めるかという内容。
    • この小説を執筆する前に、究極の血液型心理診査という血液型性格診断を行うウェブサイトを立ち上げて、それをのべ450万人が利用し、診断後にこのサイトの血液型診断が当たっているのかという問いに対して、9割以上の利用者が「この血液型性格診断は当たっている」と答えた。だが、後に松岡がこのウェブサイトについての仕掛けを公表し、この血液型性格診断のサイトは心理診断は行っているものの血液型の問いに関する分析はプログラム上で全く行っていないことを明らかにした。

その他

近年の文献

発表年順

  • 大村政男 - 『血液型と性格』松籟社、1990/10 、ISBN 457124021X。(1998/04、ISBN 4571240341
  • 松田薫 - 『「血液型と性格」の社会史―血液型人類学の起源と展開』河出書房新社、1991/05、ISBN 4309241247 (1994/07 改訂第2版 ISBN 430924145X
  • 山崎賢治&坂元章 - 『血液型ステレオタイプによる自己成就現象~全国調査の時系列分析~』(日本社会心理学会第33回大会発表論文集)、1992年、(心理学者による肯定的な結果)
  • 白佐俊憲&井口拓自 - 『血液型性格研究入門―血液型と性格は関係ないと言えるか』川島書店、1993/05、ISBN 4761005076(二人の心理学者による検討)
  • 前川輝光 - 『血液型人間学―運命との対話』松籟社、1998/07、ISBN 4879841951 - 肯定的な見解
  • 詫摩武俊&佐藤達哉編 - 『現代のエスプリ 血液型と性格―その史的展開と現在の問題点』至文堂、1999/07、ISBN 4784353240(海外の学術文献リスト他)
  • 村上 宣寛 - 『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  • WU Kunher, LINDSTED Kristian D., LEE Jerry W., 2005, Blood type and the five factors of personality in Asia, (Personality and individual differences) , ISSN 0191-8869 CODEN PEIDD9[18]

脚注 / 出典

  1. ^ 村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  2. ^ 血液型性格判断の謎
  3. ^ 能見正比古: 血液型でわかる相性. 青春出版社, 1971, 283p. ISBN 4413011015
  4. ^ 村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  5. ^ O・プロコプ、W・ゲーラー著。石山昱夫訳『遺伝血清学』(学会出版センター)
  6. ^ 村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  7. ^ Beitchman J, Mik H, Ehtesham S, Douglas L, Kennedy J (2004). “MAOA and persistent, pervasive childhood aggression.”. Mol Psychiatry 9 (6): 546-7. doi:10.1038/sj.mp.4001492. PMID 15024395. 
  8. ^ 血液型-性格関連説について
  9. ^ 血液型性格判断をやめよう - 広島修道大学人文学部助教授 中西大輔氏のページ。血液型性格判断の持つ問題点や差別性が心理学者の立場から詳説されている。
  10. ^ 血液型と気質の関連性の否定を実証している論文の1つ
  11. ^ 村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  12. ^ 究極の血液型心理検査 - じつは判断結果はランダム表示されるだけのものだが、常時9割前後の人々が「当たっている」と回答している。バーナム効果実証サイト。
  13. ^ 血液型性格判断に対する反論
  14. ^ 遺伝学からみた血液型性格判断
  15. ^ 村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  16. ^ 血液型性格判断をやめよう
  17. ^ 血液型-性格関連説について
  18. ^ Blood type and the five factors of personality in Asiaのアブストラクト - 台湾の論文。この調査では、血液型と外向性の関連性を否定する結果が出た。そのかわり、女性のBMI(=肥満度)と外向性の間に関連性あり、との結果が出た。

関連項目

外部リンク