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難波成任

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難波 成任(なんば しげとう)
生誕 1951年
日本の旗 日本 東京都千代田区
研究分野 植物病理学
研究機関 東京大学
出身校 東京大学
主な業績 ファイトプラズマおよび植物ウイルスの統合生物学的研究とその臨床展開
プロジェクト:人物伝
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難波 成任 (なんば しげとう、1951年[1] - )は、日本植物病理学者。

専門は植物ウイルス学、植物細菌学微生物学分子生物学感染生理学植物医科学農学博士 (1982)。東京都千代田区出身[2]東京大学植物病理学研究室教授

最小生命体であるファイトプラズマや無生物である植物ウイルスについて、その全ゲノム解読や病原性遺伝子抵抗性遺伝子宿主特異性決定機構などの解明に世界に先駆け成功するなどの研究成果を挙げ、これらナノ病原体に普遍的な知見をもたらし、さらに最先端の研究成果を臨床現場に生かす先端技術を確立し、初めて植物病院を開設するなど臨床植物医科学を展開した。

略歴

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学歴

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東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)、東京大学農学部農業生物学科卒業、東京大学大学院農学系研究科修士課程修了、同博士課程修了、博士(農学)

職歴

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日本学術振興会奨励研究員、東京大学農学部助手植物病理学研究室)、同大学農学部助教授、同大学農学部教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て現在、東京大学大学院農学生命科学研究科教授(植物病理学研究室

この間、米国コーネル大学客員研究員(併任)、農林水産省招聘研究員(併任)、文部省学術国際局学術調査官(併任)、東京大学大学院農学生命科学研究科教授(植物医科学研究室)(兼務)、東京大学総長補佐(兼務)、法政大学企画・戦略本部特任教授(併任)を歴任。

現在、東京大学総長特任補佐(兼務)、(独)科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター上席研究員を兼務。

業績

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ファイトプラズマに関する研究
  • マイコプラズマ様微生物 (MLO) の分類に世界で初めてリボソーム遺伝子の塩基配列による系統解析を導入し、それまで世界で1,000種類以上、国内で約40種類あったMLOをそれぞれ約30種と4種に整理分類した。またMLOとマイコプラズマの系統関係と翻訳システムの相違を発見し、MLOを「ファイトプラズマ」と改称し、プラスミドの昆虫伝搬能に関わる機能を解明するなど、ファイトプラズマ学創成に大きく貢献した。
これにより、日本植物病理学会賞を受賞した。
  • 世界で初めてファイトプラズマの全ゲノム解読に成功した。ファイトプラズマが寄生宿主に大きく依存し、ゲノム縮小の方向に退行的に進化し、代謝系を極限まで切り詰めたため、核酸タンパク質合成のみならず、エネルギー合成装置まで失っていることを明らかにした。
この成果とそれまでの業績により、日本マイコプラズマ学会賞を受賞した。
  • ファイトプラズマの遺伝子発現を網羅的に解析するマイクロアレイを世界で初めて開発し、遺伝子機能を解明した。具体的には、微生物が特定の昆虫により伝搬される仕組みが、菌体表面を覆う膜タンパク質と昆虫の細胞骨格タンパク質アクチンとの結合の可否で決まることをファイトプラズマをモデルに世界で初めて発見した。また、ファイトプラズマが植物に引き起こす特徴的な天狗巣症状の原因因子(TENGUと命名)とその機能メカニズムを世界で初めて解明した(2003年 - 現在)。
この成果とそれまでの業績により、2010年度国際マイコプラズマ学会エミー・クラインバーガー・ノーベル賞を日本人ならびにファイトプラズマ研究者で初めて受賞した。
植物ウイルスに対する植物の抵抗性に関する発現・抑制機構と抵抗性遺伝子に関する研究
植物レクチンによる新規な広域ウイルス抵抗性機構(レクチン抵抗性)を発見し、作物化の過程でこの遺伝子が捨て去られたことを示した。また、植物の全身壊死症状がウイルスに対する抵抗性の一種であり、植物ウイルスの複製酵素がその引き金となっていることを明らかにした。さらに、植物のRNA干渉によるウイルス抵抗性機構をウイルスが1つの抑制タンパク質で回避すると言う従来の説を覆し、複数のタンパク質が機能を分散し多段階で抑制するメカニズムを発見した。この知見はいずれも世界で初めての発見であり、ウイルス抵抗性抑制機構のダイナミズムの統合的理解に大きく貢献した。
植物医科学分野の創設とその社会展開
  • これらの先端的成果に基づいて、植物病治療や予防など、臨床技術開発と社会展開を目指す新たな学術領域「植物医科学」を提唱し、教科書を著した。植物医科学寄付講座の開設により植物医師を養成し、日本で初めての植物病院を東京大学に設置した。また、植物医科学の社会展開に向けた実証実験を進め、他大学に植物医師養成学科を設置し、自治体で1,000人規模の市民植物医師を養成した。
  • 国内各地より植物病院に持ち込まれる検体から、国により特定重要病害に指定されているプラムポックスウイルス(和名:ウメ輪紋ウイルス)の国内侵入を初めて発見し、国によるウイルスの封じ込め事業に携わり、先端技術を応用した世界初の診断キットを開発・製品化した。なお、プラムポックスウイルスのウメにおける発生の確認は世界で初めてである。さらに、微生物のゲノム情報に基づき特定の微生物のみを生育させる選択培地設計システム「SMART法」を考案し、新たな病害診断手法の基盤を築いた。
その他の研究業績
東京大学・植物医科学研究室植物病理学研究室のホームページで参照できる。

受賞歴

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著作

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主なもの

論文

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東京大学・植物医科学研究室植物病理学研究室、のホームページで参照できる。

脚注

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  1. ^ Webcat Plus
  2. ^ 日本学士院賞授賞の決定について
  3. ^ 平成25年秋の褒章受章者(東京都)” (PDF). 内閣府. p. 3 (2013年11月3日). 2014年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月28日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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