集団安全保障
集団安全保障(しゅうだんあんぜんほしょう、英: collective security)とは潜在的な敵国も含めた国際的な集団を構築し、不当に平和を破壊した国に対してはその他の国々が集団で制裁するという国際安全保障体制の一種である。
同盟国への攻撃をも自国への攻撃と見做し攻撃者に宣戦する集団的自衛権とは異なる。
概説
集団安全保障とは地域的または全世界的な国家集合を組織し、第一に紛争を平和的に解決すること、第二に武力行使した国に対して他の国家が集合的に強制措置を行うことによって、侵略を阻止し、国際的な安全を確保する国際安全保障体制をいう。これが現実的に実現するためには以下の条件が必要であると考えられている。
- 集団安全保障機構が構成国よりも優れた軍事力を有すること。
- 構成国、特に先進国が、自国の国益よりも国際社会の利益を重視して、機構の強制措置に協力すること。
- 維持すべき現状(どのような平和を維持すべきか)について、また平和を破壊する行為をどのように認定するのかについて、構成国、特に先進国が共通認識を持つこと。
歴史
第一次世界大戦後
第一次世界大戦の戦禍から紛争の平和的解決の必要性が認識され、アメリカ合衆国大統領ウッドロウ・ウィルソンが新たな国際安全保障モデルとして提唱したのが集団安全保障であった。1919年に結成された国際連盟においては、連盟国に紛争の平和的解決の義務が連盟規約によって定められ、戦争禁止規定を違反した国家はその他の連盟国によって金融・通商の封鎖が行われ、厳しい制裁が行われることも定められていた。
第二次世界大戦後
国際連盟の失敗を踏まえて第二次世界大戦後により強力な集団安全保障を実践しようとしたものが国際連合である。武力による威嚇・武力の行使が禁止され、平和破壊行為・侵略行為が国連安全保障理事会で認定されれば、必要に応じて非軍事的措置、非軍事的措置が行き詰れば軍事的措置でこれを排除する体制が整備された。
しかし軍事的措置において主体となる国連軍が編成されることは冷戦が原因で滞り、構想通りに機能してはいない。
冷戦後
冷戦の開始によって常任理事国が政治的な考慮から拒否権をしばしば行使し、安全保障理事会の機能が阻害された。冷戦後には国際連合の機能が回復することが期待され、1990年の湾岸戦争においては安全保障理事会の決議に基づいて多国籍軍が編成されて強制措置を行うことができ、また国連平和維持活動などが活発化されて国連の体制が再評価されることになった。
参考文献
- 防衛大学校・安全保障学研究会 責任編集 武田康裕、神谷万丈 『最新版 安全保障学入門』 亜紀書房
- 久米郁夫、川出良枝、古城佳子、田中愛治、馬渕勝『政治学 Political Science : Scope and Theory』 有斐閣、2006年。