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遷延性意識障害

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遷延性意識障害
概要
診療科 神経学
分類および外部参照情報
ICD-9-CM 780.03
Patient UK 遷延性意識障害

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは、重度の昏睡状態を指す病状。俗にいう植物状態(しょくぶつじょうたい、Persistent vegetative state)についても記述する。

定義

日本脳神経外科学会による定義(1976年)。

  1. 自力移動が不可能である。
  2. 自力摂食が不可能である。
  3. 糞・尿失禁がある。
  4. 声を出しても意味のある発語が全く不可能である。
  5. 簡単な命令には辛うじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である。
  6. 眼球は動いていても認識することは出来ない。

以上6項目が、治療にもかかわらず3ヶ月以上続いた場合を「植物状態」とみなす。

回復の見込み

1994年の米国の遅延性植物状態に関する多学会特別委員会では、「脳外傷後1年又は酸素欠乏後3ヶ月(のちに6ヶ月に修正)を経過しても意識の兆候がまったく見られない患者は回復の見込みがゼロに近い。」とした。こういった患者を「永続的植物状態」と呼んだ。


[1]

脳死との比較

「植物状態」は、一般的にはの広範囲が活動出来ない状態にあるが、辛うじて生命維持に必要な脳幹部分は生きている状態を指す。一方脳死は生命維持に必要な脳幹機能が不可逆的に停止している状態を指す。植物状態では自発呼吸があり、脳波も見られる。植物状態の場合はまれに回復することがあるが、脳死の場合は回復しない。

[1]

治療などの支援

交通事故の場合には被害者が脳に激しい衝撃を受けて遷延性意識障害になる例が多いことから、事故被害者の支援業務を行う独立行政法人自動車事故対策機構 (NASVA)では、交通事故による遷延性意識障害者専門の療護センター(病院)を設置・運営し、植物状態からの脱却を目指した治療・看護を行っている。また、NASVAでは、遷延性意識障害者を始めとして、重度後遺障害となった事故被害者のために介護料を支給している。

また、睡眠導入薬として処方されることの多いゾルピデムにより昏睡状態から回復する報告[2]があったことから現在臨床試験が行われている[3]

意識とコミュニケーション

英ケンブリッジ大のエードリアン・オーウェン博士によると、正常な意識があり、脳スキャナーによって思考の伝達が可能な植物状態の患者もいる[4][5]。ただし、この場合でも今の所、こちらが出す質問に「はい/いいえ」と回答してもらうのが限界であり、複雑な会話はできない。

出典

  1. ^ a b S. ローリーズ(Steven Laureys)著 古川奈々子訳 『植物状態の意識を探る』 日経サイエンス別冊「脳から見た心の世界」 p.94-p.100 2007年12月10日発行 1版1刷 ISBN 978-4-532-51159-3
  2. ^ http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/1567880/Sleeping-pill-Zolpidem-awakens-girl-from-coma.html
  3. ^ http://sites.google.com/site/zolpidemtherapy/brain-damage-trial
  4. ^ 植物状態でも思考しコミュニケーションすることができる
  5. ^ 植物状態でも科学者に話すことができる

関連項目

外部リンク