補助金
補助金(ほじょきん)とは、政府が私企業や個人などの民間部門に対して行う一方的な貨幣の給付[1]。
なお、経済学上はより広義に補助政策全体(特別減税や公共事業・公共サービスなどを含む)を指すこともあるが、一般には一方的な貨幣の給付のみを補助金という[1]。
日本における補助金
法令上の補助金の定義は必ずしも明確でなく、補助金適正化法(後述)も明確な定義を与えていない。民間が政府に、もしくは下位の政府が上位または等格の政府に対して、両者の同意を経て移譲する金銭は負担金と称されることが多いが、以下ではこれについてもまとめて取り扱う。補助金、負担金に類するものとして、給付金、助成金などがあるが、中には実質的に補助金同様の性格を持つものも少なくなく、それらについては政令指定により補助金適正化法の対象とされている。
補助金には憲法上の制約があり、日本国憲法第89条で公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならないとされている。
国が交付する補助金等
国の補助金等の手続きについては補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)によって処理が行われている。また、国が地方公共団体に交付する補助金等については、地方財政法に規定がある。
補助金適正化法
補助金を支払う者の責務として、各省庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従つて公正かつ効率的に使用されるように努めなければならないとしており、補助金を受けるものとしては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し、法令の定及び補助金等の交付の目的又は間接補助金等の交付若しくは融通の目的に従つて誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うように努めなければならないとしている。(補助金適正化法第3条第1項、第2項)
補助金を受けたものは、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用(利子補給金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより、補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいう。)をしてはならないとされている。(同法第11条)
補助を受けたものは各省庁の長に遂行状況を報告しなければならないが、各省庁の長は、この報告等により、その者の補助事業等が補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件に従つて遂行されていないと認めるときは、その者に対し、これらに従つて当該補助事業等を遂行すべきことを命ずることができ、この命令に違反したときは、その者に対し、当該補助事業等の遂行の一時停止を命ずることができる。(同法第12条、第13条第1項、第2項)
各省庁の長は、補助を受けた者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができるとし、場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。(同法第1項、第18条第1項)
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第11条の規定に違反して補助金等の他の用途への使用又は間接補助金等の他の用途への使用をした者は、3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(同法第30条)
地方財政法
国が地方公共団体に交付している補助金、負担金等の特定財源を総称して国庫支出金といい、地方財政法はこれを国庫負担金、国庫補助金、国庫委託金に分類したうえで、国の責務、額の算定にあたっての原則等を定める。
地方公共団体が交付する補助金等
根拠
地方公共団体については、地方自治法において「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」(第232条の2)とされており、これを根拠に他の地方公共団体又は民間等への補助が行われている。支出については補助金適正化法の規定に準じた各地方公共団体の規則・要綱などによっている。
産業の振興を目的として、他所の企業を呼び入れるための制度などが存在している。 助成金額は設備や建物、土地などの購入額の何%と決められ、申請内容を評価後、認可されれば支給される。 評価においては、発注から納品、請求書を元にした支払い、その後の領収まで一連の購入の流れを確認され、実際に事業用に供されているかどうかの現物確認までが行われる。
監査委員による監査
監査委員は、必要があると認めるとき、又は普通地方公共団体の長の要求があるときは、当該普通地方公共団体が補助金、交付金、負担金、貸付金、損失補償、利子補給その他の財政的援助を与えているものの出納その他の事務の執行で当該財政的援助に係るものを監査することができる。当該普通地方公共団体が出資しているもので政令で定めるもの、当該普通地方公共団体が借入金の元金又は利子の支払を保証しているもの、当該普通地方公共団体が受益権を有する信託で政令で定めるものの受託者及び当該普通地方公共団体が第244条の2第3項の規定に基づき公の施設の管理を行わせているものについても、また、同様とするとしている。(地方自治法第199条7項)
イギリスにおける補助金
イギリスの国の補助金は1825年に創設されたexchequer grantに始まるといわれている[2]。産業革命以後、国が地方自治体に対して労働者の公衆衛生や公害対策を強化し、労働者向け住宅の建設を強制するために制度化された[2]。
アメリカにおける補助金
アメリカは連邦制国家であり州が相対的に自立しており、市町村間の財政上の調整も州が主体となって行ってきた[3]。19世紀には州立大学の用地とするための国有地の付与などを除き特筆すべきものはない[3]。連邦政府が地方行政に積極的に介入するようになったのは1930年代の不況以後のことで、公共事業の代行などを通じて景気政策の促進を図るようになった[3]。補助金は臨時的なものから恒久的なものとなりナショナルミニマム(国家的必要行政水準)の維持という性格をもつようになった[3]。1964年にリンドン・ジョンソン大統領が貧困との戦いを宣言すると連邦補助金は急拡大した[3]。
補助金の効率的配分
公共経済学などにおいて、補助金が恣意的に配分されることの経済的不合理性に付いての指摘がある。しかし、新エネルギーや省エネルギー設備の普及のための補助金など、「CO2削減効果」などの数値判断基準が作れる場合、最も基準達成の費用対効果の高いものから補助金を配分する制度とすることでこの問題は回避が可能である。
脚注
関連項目
- 住民監査請求
- 私学助成金
- アメリカ合衆国憲法修正第16条
- 希少疾病用医薬品助成金支給補助事業 ...地方公共団体や財団などが補助金や事業助成金を行う行為に際しても同様の用語を使用している
- 海外移住組合法...海外移民を助成する目的で組織される組合に関する法
- Vergatario...ベネズエラ政府の助成
- 日本防災士会湘南支部 ...組合員も選考補助委員として参加し助成を受ける
- 公共測量 ...国又は公共団体の負担又は補助、貸付けその他の助成を受けて行われる事業