脾臓
脾臓 | |
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脾臓 | |
ラテン語 | lien, (ancient Greek語: splen) |
英語 | Spleen |
動脈 | 脾動脈 |
静脈 | 脾静脈 |
神経 | 脾神経叢 |
脾臓(ひぞう)は脾動脈および脾静脈に介在する臓器である。以下の記述は特に断りがない限りヒトの脾臓についての記述である。
左の上腹部にあり、上方は横隔膜に接し内側は左の腎臓と接している。前方には胃が存在する。肋骨の下に隠れており通常は体表からは触れない。
なお、東洋医学でいう五臓六腑(五臓:肝・心・脾・肺・腎)の一つである「脾」は「脾臓」とは異なっている。五臓の脾は主に消化吸収などを担っており、解剖学的に対応する臓器はむしろ「膵臓(すいぞう)」である。これは脾臓と膵臓を別の臓とは考えず、ひとつの臓(脾臓+膵臓=脾)と考えられていたのではないかという説もあるが、正確な理由は現在もわかっていない。膵臓は黄色い組織であるため、脂肪と考えられて脾臓に膵臓の機能が割り当てられた可能性もある。また、横っ腹が痛くなる原因は脾臓が急激な動作によってだんだん縮んで痛みが起こると考えられている。
脾臓の解剖
脾臓の大きさは、長さ12cm、幅7.5cm、厚さ5cm程度である。重量は内部の血液量で変化するが100~200g程度である。柔らかく色は赤紫色である。
脾臓の組織・構造
脾臓の表面は白く厚い被膜で覆われている。一部は動脈を伴い脾臓の内部へと入り込んでいる。この構造を脾柱という。脾柱は脾臓の内部で複雑に絡み合い網目状となる。網目は柱網と呼ばれ脾臓の形態構築にかかわっている。網目の内部は白い斑状の組織である白脾髄と赤い組織の赤脾髄で埋められている。白脾髄はリンパ球の集まりであり免疫機能を担っている。赤脾髄には毛細血管が豊富に存在し赤血球に富んだ組織である。
脾臓の機能
- 免疫機能:白脾髄でB細胞(Bリンパ球)、Tリンパ球、形質細胞を成熟させ、血液を増殖の場とする病原体に対する免疫応答の場となる。脾摘された人がマラリアなどに感染すると重症化しやすい。
- 造血機能:骨髄で造血が始まるまでの胎生期には、脾臓で赤血球が作られている。生後はその機能は失われるが、大量出血や骨髄の機能が抑制された状態では再び脾臓での造血が行われることがある(髄外造血)。ラットやマウスでは出生後も造血が行われる。
- 血球の破壊:古くなった赤血球の破壊を行う。赤血球中のヘモグロビンを破壊し鉄を回収する働きもある。摘出により溶血性貧血が改善された例がある。
- 血液の貯蔵機能:血液を蓄える機能がある。人間ではそれほど多くの血液の貯留はされないが、犬や馬などの動物では大量の血液が貯留されている。筋肉が大量の酸素を必要とするような運動時には、脾臓から貯蔵されていた血液を駆出することで充分な酸素を筋肉へ送り届けることが出来る。急激な有酸素運動を行った際に起こる、胸部を締め付けられるような痛みはこの働きによるものである。
脾臓の病気
脾腫
脾臓が何らかの原因で大きくなってしまった状態を脾腫という。原因としては、肝硬変などによる門脈圧亢進症、白血病・骨髄増殖性疾患・感染症などの浸潤性疾患の2種がある。脾腫が著明になると、脾臓の機能が亢進した状態になり、血球の破壊がどんどん進むため貧血や出血傾向などが出現する。このような状態では対処法として手術によって脾臓を摘出することがある。
- 脾臓摘出術(脾摘)が適応となる疾患
- 遺伝性球状赤血球症、不安定ヘモグロビン症、温式自己免疫性溶血症(温式AIHA)、サラセミア、PK欠損症(pyruvate kinase deficiency)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP;idiopathic thrombocytopenic purpura)etc.