胃石

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首長竜の胃石。ユタ州の頁岩から発見されたもの。

胃石(いせき、Gastrolith)とは、動物が消化器内に持つ岩石のことである。現生の脊椎動物では、胃石はアザラシアシカワニ類、草食性の鳥類に広く見られる。食物をすり潰すのに適した歯を持たない動物において、胃石は砂嚢の中に保持され咀嚼を助ける。胃石の大きさはそれを持つ動物の大きさによって、またその食性によって異なる。小は程度のものから大は大礫以上のものまでが発見されている。Gastrolith という言葉の語源は、ギリシア語の gastro(胃)と lith(石)。

絶滅動物、例えば竜脚下目恐竜も、硬い植物をすり潰すため胃石を持っていたことが判明している。獣脚類の化石と共に胃石が発見されることは希であり、肉食恐竜が食物の粉砕に胃石を用いたとは考えづらい。首長竜など水棲の絶滅動物は、現生のワニと同様、浮力を調整する重りとして石を飲み込んでいたようである[1]。化石の胃石は磨かれて丸くなっている場合がある一方、現生の鳥類の胃石は全く擦られていない。恐竜の化石における胃石は、合計数kgにも及ぶことがある。またダチョウが飲み込む石は、時に長さ10cmを越える。

ディプロドクス。胃石を持つ動物である。

ふつう地質学の分野では、複数の根拠が無い限り、恐竜化石と共に見つかる岩石が消化を助けるためのものだとは認められない。第一に、その岩石は周辺の地質と相容れないものである必要がある。第二に、その岩石は擦られて丸くなっていなくてはならない。第三に、その岩石の見つかる場所が恐竜の消化器(のあった所)でなくてはならない。ただしホイットル(C. Whittle)は走査型電子顕微鏡を用いて胃石の表面パターンを分析する手法を開発している(1988、9年)。

ユタ州中部の白亜紀初期の地層には、丸くなった赤や黒のチャートが極めてよく見られるが、その一部は胃石なのであろう。胃石は、英語ではしばしば Morrison stones(モリスンの石)と呼ばれるが、これは胃石がモリスン群層(Morrison Formation;コロラド州の町モリスンに因む。ジュラ紀後期の地層)からよく見つかることが理由である。珪化木で出来た胃石も存在する。

関連項目

出典

  1. ^ Darby, D.G. and Ojakangas, J. (1980).

参考資料

  • Whittle, C. (1989). On the Origins of Gastroliths: Determining the Weathering Environment of Rounded and Polished Stones by Scanning Electron Microscope Analysis. Geological Society of America Bulletin 51:5.
  • Whittle, C. (1988). On the Origins of Gastroliths. Journal of Vertebrate Paleontology, Supplement to 3:28.
  • Wings, Oliver (2003): Observations on the Release of Gastroliths from Ostrich Chick Carcasses in Terrestrial and Aquatic Environments. Journal of Taphonomy 1(2): 97-103. PDF fulltext
  • Darby, D.G. and Ojakangas, J. (1980). Gastroliths from an Upper Cretaceous Plesiosaur. J. of Paleontology 54:3