新戦略兵器削減条約
第四次戦略兵器削減条約(新START)(だいよじせんりゃくへいきさくげんじょうやく、New START、New Strategic Arms Reduction Treaty)は、2011年2月5日にアメリカ合衆国政府とロシア政府の間で発効した核兵器の軍縮条約の1つである。
概要
第一次戦略兵器削減条約は2009年12月5日に次の条約を締結することなく失効した。そのため後継条約の締結を決議していたが、2010年3月26日、アメリカ合衆国のバラク・オバマ大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領が電話会談し最終合意に達したと発表した。新条約は4月8日にチェコのプラハで署名式が行われ調印された。この条約はアメリカ合衆国上院とロシア議会の批准により発効となる。この条約は米ロ両国に対して条約発効後の7年以内の履行を規定し、発効後の有効期限は10年間で最大5年の延長を可能とする。条約の履行の検証については、米ロ両国政府による相互査察により確認する。
この条約の発効や履行の障害となる要素として、ミサイル防衛についての米ロ両国政府の認識の差異や主張の対立がある。第二次戦略兵器削減条約はアメリカ合衆国上院が批准したがロシア議会が批准せず、履行時期の2007年までの延期とミサイル防衛の制限を規定した追加議定書はロシア議会が批准したがアメリカ合衆国上院が批准せず、結果として発効しなかったが、ミサイル防衛についての米ロ両国政府の認識の差異や主張の対立は第四次戦略兵器削減条約の交渉や署名においても解消されていない。この条約は前文と16の条文と154ページの議定書で構成されるが、ロシア側が求めていたアメリカのミサイル防衛計画の制限には規定していない。ロシア政府は米ロ両国政府間でミサイル防衛について合意できていない部分がある、アメリカ合衆国のミサイル防衛システムの配備により、ロシアの戦略核戦力が減少または無力化される場合はロシアは条約を破棄する権利を持つと表明した[1]。
2010年9月17日に、アメリカ上院外交委員会は批准承認を決議し、さらに2010年12月22日には、米上院は条約を批准した。2011年1月25日にはロシアの下院が批准、2011年1月26日にはロシアの上院が批准した。 アメリカ合衆国の上院が批准した法案には、アメリカ合衆国のミサイル防衛(MD)システムの開発と配備はこの条約に規制されないとの付帯条項を含んでいる。ロシアの上院と下院が批准した法案には、アメリカ合衆国のミサイル防衛(MD)システムの配備が、ロシアの戦略核戦力を減少または無力化させ、アメリカ合衆国とロシアの戦略核兵器戦力のバランスを不均衡にして、ロシアの安全保障にとって脅威になる場合は、ロシアはこの条約を脱退できるとの付帯条項を含んでいる[2]。 2011年2月5日開催中のミュンヘン安全保障会議において米ロ間で批准書の交換が行われ条約は発効した。
2011年11月23日、メドベージェフ大統領は、テレビ演説で、米国などが進める欧州ミサイル防衛(MD)計画への対抗措置としてカリーニングラード州(ロシアの飛び地)に新型ミサイルシステム「イスカンデル」を配備すると警告した。一方、アメリカ国務省は、アメリカの欧州MD計画に反発して、ロシア大統領が「新START」からの離脱を警告したことについて、離脱する根拠はなく、計画を見直す考えがないことを明らかにした[3]。
例 | 旧条約 (START1) 1991年 |
新条約 (新START) | |||
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アメリカ | ロシア | ||||
戦略核弾頭 | 大型 | 配備数 | 6000発 | 1550発 | 1550発 |
未配備数(備蓄) | 数量制限なしに備蓄可能 | 数量制限なしに備蓄可能 | |||
戦術核弾頭 | 小型 | 配備数 | |||
未配備数(備蓄) | |||||
運搬手段 | 短距離核ミサイルなど (射程500km以下) |
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大陸間弾道ミサイル 潜水艦発射の弾道ミサイル 戦略爆撃機など |
保有数(未配備分を含む) | 1600基機 | 800基機 | 800基機 | |
配備数 | 700基機 | 700基機 | |||
ミサイル防衛 | 対露MD網の構築を制限しない | 対露MD網配備時には破棄する |
脚注
- ^ a b 読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞、産経新聞 2010年4月9日
- ^ 読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞、産経新聞 2011年1月27日
- ^ ロシア、米の欧州MDに警告 対抗措置に言及 朝日新聞 2011年11月24日
- ^ 日本経済新聞 2010年3月27日 米ロ、新核軍縮条約で合意 戦略核配備は最低水準に
- ^ 核の減らぬマジック(高畑昭男・産経新聞論説委員)