島原鉄道トラ700形客車

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国鉄トラ70000形貨車 > 島原鉄道トラ700形客車
島原鉄道トラ700形客車
キハ2500形に牽引されるトラ700形
基本情報
運用者 島原鉄道[1]
種車 国鉄トラ70000形貨車[1]
製造年 1967年[2]
改造所 西鉄産業[1]
導入年 1997年[1]
運用開始 1997年4月1日[3]
引退 2008年3月30日[4]
廃車 2008年10月31日[5]
投入先 島原鉄道線[3]
主要諸元
軌間 1,067 mm[1] mm
車両定員 48人[6]
自重 13.6 t[6]
全長 9,456[1] mm
車体長 8,656[1] mm
全幅 2,605[1] mm
車体幅 2,505[1] mm
全高 3,840[1] mm
車体高 3,840[1] mm
床面高さ 1,250 mm[1]
台車 2段リンク式[2]
固定軸距 5,000 mm[2]
制動装置 自動空気ブレーキ[6]
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島原鉄道トラ700形客車(しまばらてつどうとら700がたきゃくしゃ)は、1997年平成9年)に日本国有鉄道(国鉄)トラ70000形貨車から2両が改造され、2008年(平成20年)まで使用された島原鉄道トロッコ列車用の客車である[1][4]。島原鉄道での廃車後、2両とも平成筑豊鉄道に譲渡され、改造の上門司港レトロ観光線で使用されている[7]

概要

島原駅に停車する「島鉄ハッピートレイン号」
牽引車がキハ20だった時代。(1998年撮影)

1990年(平成2年)11月に発生した雲仙普賢岳土石流災害により島原鉄道線は島原外港駅 - 深江駅間が長期運休となっていたが、1997年(平成9年)4月に新線経由で運転が再開できる見通しとなったことから、再開を記念し、島原復興の願いも込めたトロッコ列車の運転が計画された[1]。国鉄トラ70000形貨車を改造したトラ700形客車2両を、気動車2両の間に連結する形態でトロッコ列車は運転され、牽引するキハ20形の車体外部塗装がトロッコ列車用として変更された[3]。トラ700形は、車体全般を新製し、825 mm高さの壁と転落防止用の保護棒、屋根、車両間の行き来ができるよう両側妻に貫通路と1両に1箇所業務用扉を備える[1]。車内にはテーブル付4人掛ボックスシート10組と、2人掛席4組があった[1]。車体は黄色に塗装され、気動車と編成を組めるよう引き通し線が設置された[1]。島原鉄道線全線で「島鉄ハッピートレイン号」として運転されたが、島原外港駅 - 加津佐駅間が2008年(平成20年)3月末で廃止された際に運転が取りやめられ[4]、同年10月に廃車された[8]。2両とも平成筑豊鉄道に譲渡され、改造の上門司港レトロ観光線で使用されている[7]

車体

トラ700形では車体全般が新製された[1]。高さ825 mmの壁が4面に設けられ、12本の柱で製の屋根を支えている[1]。壁の上部には転落防止のため床面から1,060 mmと1,335 mmの位置に保護棒が設置された[1]。妻部には他車両と行き来するための貫通路が設けられ、各車両1箇所に業務用の扉が設けられた[1]。車体外部は黄色に塗装され、天草四郎多比良ガネフグコイ島原城などのイラストが描かれた[1]

車内には4人掛、幅260 mmのテーブル付ボックスシート10組と2人掛席4組が設置された[1]。この種の車両としては初めて扇風機3台が天井に取り付けられた[1]。放送用のマイクスピーカーが設けられ、牽引用の気動車との間で相互に放送を行うことができる[1]。各車1箇所避難用の梯子、非常通報装置、消火器を備える[1]。乗客が偏って乗車しても軸重のバランスが崩れないよう、約3 t死重が積まれた[1]。2両の車内は点対称に座席が設置されている[1]

気動車2両に挟まれて運転されるため、気動車と同等のジャンパ連結器、元空気溜引き通しが追設された[1]

車歴

トラ700形車歴
形式 車両番号 製造 国鉄車番 島原入籍 廃車
トラ700 701[9] 1967年 トラ70942[1] 1997年3月[9] 2008年10月[5]
トラ700 702[9] 1967年 トラ73938[1] 1997年3月[9] 2008年10月[5]

運用

2011を先頭にした「島鉄ハッピートレイン号」
2011年6月島原駅にて
平成筑豊鉄道に譲渡された後の姿

1990年(平成2年)11月に発生した雲仙普賢岳の土石流災害により島原鉄道線は島原外港駅 - 深江駅間が長期運休となっていたが、1997年(平成9年)4月に新線経由で運転が再開できる見通しとなったことから、再開を記念し、島原復興の願いも込めた観光トロッコ列車が運転されることになった[1]。客車は国鉄トラ70000形2両を改造して準備され、気動車2両の間に挟む運転形態が採られた[3]。キハ20形2002・2017が牽引車となり、トロッコ列車運転開始に先立って客車にあわせて黄色系に車体塗装を変更している[3]2001年(平成13年)には2002・2017が廃車になったため[10]、2011とキハ2500形が牽引車となった[11]。2011はトロッコ列車用となるのに先立って2000年(平成12年)10月に2002・2017と同様の塗装に変更されている[11]。「島鉄ハッピートレイン号」として運転されたが、2008年(平成20年)3月31日に島原外港駅 - 加津佐駅が廃止されるのにあわせて運転が取りやめられ[4]、同年10月31日付で2両とも廃車された[5]。廃車後、平成筑豊鉄道に譲渡され、改造の上、南阿蘇鉄道から譲渡されたDB10形機関車とともに門司港レトロ観光線で同社のトラ70000形として2009年(平成21年)4月から運転されている[7]

出典

参考文献

書籍

  • 『国鉄車両一覧』ジェイティービー、1986年。ISBN 4533044468 

雑誌記事

  • 鉄道ピクトリアル』通巻644号「新車年鑑1997年版」(1997年10月・電気車研究会
    • 藤井 信夫、大幡 哲海、岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 86-101
    • 島原鉄道(株)鉄道部鉄道課 堀 安浩、飯塚 克巳「島原鉄道 トラ700形「島鉄ハッピートレイン号」」 pp. 137
    • 「民鉄車両諸元表」 pp. 174-176
    • 「1996年度車両動向」 pp. 176-186
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻708号「新車年鑑2001年版」(2001年10月・電気車研究会)
    • 藤井 信夫、大幡 哲海、岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 93-109
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻723号「鉄道車両年鑑2002年版」(2002年10月・電気車研究会)
    • 「2001年度 民鉄車両動向」 pp. 104-120
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻810号「鉄道車両年鑑2008年版」(2008年10月・電気車研究会)
    • 岸上 明彦「2007年度民鉄車両動向」 pp. 122-151
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻825号「鉄道車両年鑑2009年版」(2009年10月・電気車研究会)
    • 岸上 明彦「2008年度民鉄車両動向」 pp. 108-134
    • 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 222-235
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻840号「鉄道車両年鑑2010年版」(2010年10月・電気車研究会)
    • 「注目のNew Face 2009年度 民鉄車両編」 pp. 15-20