対立遺伝子

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対立遺伝子(たいりついでんし、アレル(allele))とは、相同遺伝子座を占める遺伝子のこと。

有性生殖をする動物の多くは、両親から配偶子を通してそれぞれ 1 セットのゲノムを受け取り、計 2 セットのゲノムを持つ2倍体(ヒト, 2n = 46 など)である。ヒトをはじめ2倍体の生物は、それぞれの遺伝子座について父母それぞれから由来した2つの対立遺伝子を持つ。両親から同じ種類の遺伝子を引き継いでいる(両方の対立遺伝子に変異がないか、対立遺伝子が両方とも同じように変異している)場合、ホモ接合と呼ばれ、異なる種類の遺伝子を引き継いでいる(片方の対立遺伝子が変異している)場合、ヘテロ接合と呼ばれる。

対立遺伝子の内、正常な(本来の)機能を有するものを野生型 (wild type) という。変異を二種類にわけると、機能欠失型変異型 (loss of function) と機能獲得型 (gain of function) がある。前者には完全に機能を失った 無形質アレル(amorph) と、部分的に機能を失った 低形質アレル(hypomorph) がある。後者には野生型の機能を妨げるように働く アンチモルフ(antimorph) と、全く新たな機能を獲得した ネオモルフ(neomorph) がある。また、対立遺伝子が変異を起こしていても、表現型には影響が出ないこともある(例:サイレント変異)

遺伝子型と表現型

個体がもつ遺伝子の組合せを遺伝子型(いでんしけい, genotype; ジェノタイプ)と呼ぶ。これに対して、見かけ上現れる形質を表現型(ひょうげんけい, phenotype; フェノタイプ)と呼ぶ。 対立遺伝子には優性遺伝子・劣性遺伝子の区別をつけることができる場合が多い。この場合、優性の形質を持つものを大文字A, 劣性の形質を持つものを小文字aなどの英字で表す。優性遺伝子と劣性遺伝子がヘテロ接合している場合、優性遺伝子支配の形質が表現型となり、優性遺伝子のホモ接合の場合と同様となる(優性の法則)。

メンデルによる雑種植物の研究に登場するエンドウマメを例にとれば、マメの色、つるの長さ、しわの有無、といった形質に対応する遺伝子座が存在し、最後のものに関しては「しわが有る」あるいは「しわが無い」に対応する遺伝子が存在する。この二つの遺伝子は対立遺伝子の関係にあるといえる。

ヒトアルコール代謝経路ではALDH2というアルデヒドデヒドロゲナーゼが重要な働きをしている。 ALDH2にはALDH2*1とALDH2*2が存在することが知られており、その違いは第12染色体にあるALDH2遺伝子のエクソン12の変異に由来している。487番目のアミノ酸コドンがGAA(グルタミン酸)ならALDH2*1ができ、AAA(リシン)ではALDH2*2が作られる。 このときALDH2遺伝子にはALDH2*1とALDH2*2の2種類の対立遺伝子があるという。 ALDH2*1対立遺伝子から作られる酵素は活性が高く、俗にに強い遺伝子と呼ばれている。 ALDH2*2は活性が弱いため、この対立遺伝子を両親から受け継いだ人(ALDH2*2のホモ接合型)は非常にアルコールに弱くなる。

一方、ヒトのアルデヒド脱水素酵素としてはALDH1も知られているが、ALDH1は第9染色体にあり、第12染色体にあるALDH2とは遺伝子座が異なっている。このため、ALDH1とALDH2との関係は対立遺伝子とは呼ばれない。


関連項目