対立遺伝子

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対立遺伝子(たいりついでんし、アレル(アリル、アリールも可)、: allele[1])とは、ある1つの遺伝子座を占め得る複数の塩基配列のこと。

概要[編集]

有性生殖をする動物の多くは、両親から配偶子を通してそれぞれ 1 セットのゲノムを受け取り、計 2 セットのゲノムを持つ2倍体ヒト、2n = 46 など)である。ヒトをはじめ2倍体の生物は、それぞれの遺伝子座について父母それぞれから由来した2つの対立遺伝子を持つ。両親から同じ種類の遺伝子を引き継いでいる(両方の対立遺伝子に変異がないか、対立遺伝子が両方とも同じように変異している)場合、ホモ接合と呼ばれ、異なる種類の遺伝子を引き継いでいる(片方の対立遺伝子が変異している)場合、ヘテロ接合と呼ばれる。

対立遺伝子の内、正常な(本来の)機能を有するものを野生型 (wild type) という。変異を二種類にわけると、機能欠失型変異型 (loss of function) と機能獲得型 (gain of function) がある。前者には完全に機能を失った 無形質アレル (amorph) と、部分的に機能を失った 低形質アレル (hypomorph) がある。後者には野生型の機能を妨げるように働く アンチモルフ (antimorph) と、全く新たな機能を獲得した ネオモルフ (neomorph) がある。また、対立遺伝子が変異を起こしていても、表現型には影響が出ないこともある(例:サイレント変異)。

遺伝子型と表現型[編集]

個体がもつ遺伝子の組合せを遺伝子型(ジェノタイプ)と呼ぶ。これに対して、見かけ上現れる形質を表現型(フェノタイプ)と呼ぶ。対立遺伝子には優性遺伝子・劣性遺伝子の区別をつけることができる場合が多い。この場合、優性の形質を持つものを大文字 A、劣性の形質を持つものを小文字 a などの英字で表す。優性遺伝子と劣性遺伝子がヘテロ接合している場合、優性遺伝子支配の形質が表現型となり、優性遺伝子のホモ接合の場合と同様となる(優性の法則)。

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メンデルによる『雑種植物の研究』に登場するエンドウマメを例にとれば、マメつる長さしわの有無、といった形質に対応する遺伝子座が存在し、最後のものに関しては「しわが有る」あるいは「しわが無い」に対応する遺伝子が存在する。この二つの遺伝子は対立遺伝子の関係にあるといえる。

ヒトのアルコール代謝経路ではALDH2というアルデヒドデヒドロゲナーゼが重要な働きをしている。ALDH2にはALDH2*1とALDH2*2が存在することが知られており、その違いは第12染色体にあるALDH2遺伝子のエクソン12の変異に由来している。487番目のアミノ酸コドンがGAA(グルタミン酸)ならALDH2*1ができ、AAA(リシン)ではALDH2*2が作られる。 このとき、ALDH2遺伝子にはALDH2*1とALDH2*2の2種類の対立遺伝子があるという。ALDH2*1対立遺伝子から作られる酵素は活性が高く、俗にに強い遺伝子と呼ばれている。ALDH2*2は活性が弱いため、この対立遺伝子を両親から受け継いだ人(ALDH2*2のホモ接合型)は非常にアルコールに弱くなる。

一方、ヒトのアルデヒド脱水素酵素としてはALDH1も知られているが、ALDH1は第9染色体にあり、第12染色体にあるALDH2とは遺伝子座が異なっている。このため、ALDH1とALDH2との関係は対立遺伝子とは呼ばれない。

脚注[編集]

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  1. ^ 文部省日本遺伝学会学術用語集 遺伝学編』 丸善1993年、増訂版。ISBN 4-621-03805-2

関連項目[編集]