地下室
地下室(ちかしつ、英: basement)は、地面より低い場所、いわゆる地下空間に位置する人工構造物のうち、室内空間を保持していて部屋としての機能を有するものを指す。建築基準法上は、地盤面がその階の床よりも1m以上あがっていれば地階となる。ただ、城郭建築の穴蔵や天守台、札幌ドームのフィールドように地階の一部の室が完全に地上に現れていることもあるので、地下室という言葉の持つ一般的なイメージとは若干異なる。
概要
地下室は、家やビルなどの建物を建てる際、地上だけでは要求するスペースが足りない場合などに地下のスペースを有効活用するために作られることが多い。また、地上階では果たせない地下ならではの役割もある。暖かい空気は上へ昇るという性質から、地下室の内部は地上よりも温度や湿度が低い。そのためワインを保存するのに適している。ただし、木造家屋・壁が薄い場合・新築RC建築物・地下水の存在などの条件下では湿度が高くなり、完成から1年程度は様子を見ながら使用する必要がある。特に地下水の多い都市や川沿いの土地の場合、地下室は地下水の浸透による壁面のひび割れなどの恐れがある。
その他、オフィスビルの地下には駐車場や空調・上下水道・電気設備が、デパートの地下には食品売り場や地下街との連絡通路、さらにその下には商品搬入窓口・倉庫がある。欧米のオフィスやアパートには、天井に近い窓だけが地面に出ており部屋に光が入る半地下構造の地下階をそなえたビルも多く、日本でも戦前までのオフィスビルには多く見られる。また民家の地下室には、台所の床下を有効利用できるように物置となっていることが多い。ヨーロッパの家では食料の保管庫として地下に「セラー(cellar)」と呼ばれる部屋を設けている。
地下室に自然光を導入する方法として、ドライエリア (からぼり)を設ける・トップライトを設けるなどがある。ドライエリアとは、地下室の周囲を掘り下げた空間のことであり、採光のほかにも、閉塞感の解消、避難経路の確保、通風の確保などの機能がある。
地下の階数の数え方は地上のとは逆で、地面を基準に下に向かっていく度に地下何階という数字が増えていく。略式表示は地上の場合1階であれば「1F」(F = Floor)と表示されるが、地下1階の場合「B1」(B = Basement)と表示される。
シェルターとしての利用
また、地下シェルターなどの防空壕として地下空間を開発しておくと戦争状態や自然災害のときに安全である。実際に、ヨーロッパの家屋の地下室・食料庫は、第二次世界大戦時の空襲からの避難場所や敵軍からの逃げ場所として活用された。スイスでは、かつては各家庭に核シェルターを設置することが義務付けられていた。現在も公共施設等には核シェルターの設置が義務付けられており、『民間防衛』の中では地下室を有事の際に防護設備として使えるよう解説がなされている。永世中立国であるスイスが防衛のためにそうした制度を採用したのは納得のいくところだが、地下シェルターの普及率が人口に対して100%を超えてきたことや冷戦の終結などを受けて、そうした制度に疑問を抱く風潮も生まれてきているのが実情のようである。
19世紀までのアメリカ中西部では、竜巻に備えて住宅に「ストームセラー」と呼ばれる地下シェルターを作る奇習があった。ボームの児童小説『オズの魔法使い』の冒頭シーンでは、ストームセラーに逃げ込み遅れたヒロインが家ごと竜巻に飛ばされる描写がある。
災害時の対応
地震などの災害時には、地下室に閉じこめられた人間がいる可能性を考慮する必要がある。上屋が潰れている場合には、重みで天井が崩落する恐れがあるので、柱の破片などを利用して支柱とすることが安全である。
また捜索側も、その家庭に地下室があるか、ある場合はどのようにすれば安全に進路を確保できるかを検討する必要がある。
ビル火災においては、特に駐車場火災の際の漏電対策として、ハロゲンガスや二酸化炭素ガスを充満させ消火させる装置が設置してある場合がある。火災警報が発令された際には、窒息死しないために、可及的速やかに退去しなければならない。日本においても、この設備が誤作動した地下駐車場内に立ち入った警備員2名が酸欠死した事故などが発生している。
参考文献
- スイス政府編, 民間防衛 新装版, 原書房(1995) ISBN 4-562-03667-2
- H.Keith Melton著, 水野純訳, 米政府公認 対テロ危機管理完全白書, アーティストハウスパブリッシャーズ(2004) ISBN 4-04-898176-5
関連事項
地下室の用途
地下室を含むまたは関連するもの