ペモリン

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ペモリン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
投与経路 経口
薬物動態データ
代謝肝臓
識別
CAS番号
2152-34-3
ATCコード N06BA05 (WHO)
PubChem CID: 4723
DrugBank DB01230
KEGG D00744
化学的データ
化学式C9H8N2O2
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ペモリン(Pemoline) は、アンフェタミン類とは化学構造が異なる精神刺激薬である。日本では商品名ベタナミンで販売される。

アメリカでは肝臓障害による死亡を受け、2005年に販売を停止した[1]。いくつかの国で販売を中止した。

向精神薬に関する条約のスケジュールIVに指定されている。麻薬及び向精神薬取締法の第三種向精神薬である。

薬理

ペモリンは、アンフェタミン類とは化学構造が異なる精神刺激薬で、ドーパミンの放出を促進し再取り込みを阻害する[2]。他の精神刺激薬とは異なり、交感神経への賦活作用は少ない[2]。ナルコレプシーなどには効果まで3~4週間かかる[2]。ペモリンでは多幸感が少ないため乱用は少ない[2]。同種の他の物質と違って、ペモリンには食欲抑制作用は無い。

ペモリンはカフェインよりも強力な中枢神経刺激薬であるが、アンフェタミンメチルフェニデートよりも強力ではない。

医療用途

覚醒作用、精神賦活作用、大脳皮質の賦活作用と脳幹の鎮静作用を示し、ナルコレプシーおよび近縁傾眠疾患の傾眠傾向、精神的弛緩の改善に使用されている。

適応・用量

日本での適応と用法用量は、軽症うつ病抑うつ神経症の1日10~30mg朝食後、ナルコレプシーおよび近縁傾眠疾患には、1日20~200mg朝・昼食後2回である。

スペインにおいては、処方時の最小有効量は、約25mgである。治療量レベルは75mgから100mgの範囲であり、最大推奨投与量は通常150mgである。

剤型

ベタナミン錠(10mg)

日本では、三和化学研究所からベタナミン錠が10mg、25mg、50mgの3種類の剤形で発売されている。かつては、セントラミン(武田)、マイアミン(大日本)も発売されていた。

アメリカではかつてCylertの商品名で販売された。ドイツではTradonである。スペイン語圏で一般的なものとして、Magnesium Pemoline 50mg錠がある。

診療ガイドライン

日本うつ病学会のうつ病の診療ガイドラインでは、軽症のうつ病では安易な薬物療法は推奨されておらず、また用いるとしても精神刺激薬ではなく、抗うつ薬が選択される[3]

有効性

近年まで、ADHDの治療において第2選択薬とされ、メチルフェニデートに対する反応やメチルフェニデートの効き目が思わしくない場合に使用されてきた。ADHDの治療において、ペモリンによる治療の成功率はメチルフェニデートよりも大幅に低いが、一定の特質を有するため、処方においてはペモリンが優位に立っている。また、そのような特質のため、法的規制においても副作用の面でもペモリンは優位に立ち、中毒の可能性も少なく、消失半減期もより長くなっている。しかしながら、アメリカ食品医薬品局が、近年になってペモリンに肝毒性のリスクの可能性があることについて根拠を提示し、ペモリンを使用しないよう勧告した。このため、英国など数ヶ国でペモリンは市場から引き上げられることになった。ペモリンの商業取引が依然として行われている国や地域ではADHDを治療する薬理学的枠組み内にペモリンが含まれることがある。

ADHDほどではないが、ナルコレプシーおよび原発性過眠症の治療においてもペモリンが含まれることがある。

代謝

ペモリンは、で急速に吸収され、肝臓に運ばれる。生体内での消失半減期は、約12時間と長いため(比較としてメチルフェニデートの半減期は約3時間)、服用を1日当たり1回として投与することが可能である。

副作用

乱用は少ないとされるが妄想出現の報告はある[2]

離脱時には、大半の精神刺激薬において抑うつや消耗がみられ、こうした現象はカフェインでも見られる[2]

ドイツにおいては、2000年にペモリンの使用により肝酵素値の上昇と肝毒性反応が認められたことから、ドイツ医師医薬品委員会(Arzneimittelkommission der Deutschen Ärzteschaft <de:Arzneimittelkommission>)は処方制限に踏み切った。ペモリンは、他の治療措置(メチルフェニデートやアンフェタミンといった中枢神経刺激薬を用いた治療)では効果がみられない場合や、それだけでは十分でない場合にのみ、肝機能に十分注意した上で処方が認められた。[4]

アメリカではペモリンの使用に伴う肝臓障害による13名の死亡を受け、注意欠陥・多動性障害の治療に際し、薬剤の利益を上回る危険性と位置づけ、2005年にはアボット・ラボラトリーズや後発医薬品の製造企業は販売を停止することで合意した[1]

規制

向精神薬に関する条約のスケジュールIVに指定されている。

麻薬及び向精神薬取締法の第三種向精神薬である。

関連項目

出典

  1. ^ a b 世界保健機関 (2005). WHO Pharmaceuticals Newsletter 5. p. 13. http://apps.who.int/medicinedocs/en/d/Js8120e/1.3.html#Js8120e.1.3 
  2. ^ a b c d e f 中嶋亨 2009.
  3. ^ 日本うつ病学会 (26 July 2012). 日本うつ病学会治療ガイドライン (pdf) (Report) (2012 Ver.1 ed.). pp. 23–24. {{cite report}}: 不明な引数|coauthor=は無視されます。(もしかして:|author=) (説明)
  4. ^ Arzneimittelkommission der deutschen Ärzteschaft: Verordnungseinschränkungen für Pemolin (Tradon®) wegen des Risikos von LeberschädigungenDeutsches Ärzteblatt 97, Heft 6, 11. Februar 2000 (PDF)

参考文献

  • 中嶋亨、日本睡眠学会編集「精神刺激薬」『睡眠学』朝倉書店、2009年2月、651-657頁。ISBN 978-4254300901 
  • ドイツ語版[1]de:Pemolin)00:10, 20. Apr. 2010より翻訳 by 91.36.231.192,Inkogn!to,JWBE,Giftmischer,LaaknorBot etc...、
  • スペイン語版[2]es:Pemolina) 00:54 3 dic 2009より翻訳 by TXiKiBoT,Luckas-bot,Jü,Mikuna,Miguel A. Ortiz Arjona etc...