テレビン油

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テレビン油
別名松精油
分子式およそ C10H16
分子量およそ 136
CAS登録番号8006-64-2
形状無色液体
密度0.9 g/cm3,
融点-50 - -60 °C
沸点149 - 180 °C
出典ICSC

テレビン油(テレビンゆ、: turpentine)は、マツ科樹木チップ、あるいはそれらの樹木から得られた松脂水蒸気蒸留することによって得られる精油のこと。松精油テレピン油、ターペンタインともいう。

分類

テレピン油は製法によっていくつかに分類されている。

  • ガム・テレピン油 - 松脂の水蒸気蒸留によって得られたもの。
  • ウッド・テレピン油 - マツ科の樹木のチップを水蒸気蒸留あるいは乾留することで得られたもの。
  • 硫酸テレピン油 - 硫酸塩パルプ製造時にチップを加熱処理した時に留出して得られたもの。
  • 亜硫酸テレピン油 - 亜硫酸パルプ製造時にチップを加熱処理した時に留出して得られたもの。

品質的にはガム・テレピン油が最上とされているが、生産量が多いのは硫酸テレビン油である。

元々は地中海に生えるピスタチオの仲間、テレビンノキPistacia terebinthus樹液を指していた。現在ではこれをマツ科の植物から採取するものと区別するために、サイプリアン・ターペンタイン等と呼ぶ。

性状・成分

ほぼ無色から淡黄色の液体で、亜硫酸テレピン油以外は主にα-ピネンとβ-ピネンを成分とする。この2つの成分の比率や光学純度は原木の種類によって違いがある。亜硫酸テレピン油は、他のテレピン油と異なりp-シメンを主成分としている。空気中で徐々に酸化されて粘性が高くなり、やがて樹脂状となる。

用途

塗料ワニスなどの溶剤として利用されるほか、医薬品の成分としても用いられている。化学工業においては、リナロールなど他のモノテルペン化合物の原料として使用されている。美術の分野では、油絵具の薄め液・画用液として用いられる。珍しいところではフランスが開発したロケットであるディアマンAの第一段エンジン用ロケット燃料として用いられた。

江戸末期に制作された石橋の傑作・「通潤橋」には、松の葉や枝を煮立てて抽出した松汁が、水道石管の継ぎ目の水漏れを防ぐ補修用「漆喰」の材料として使われた。これは、松の油が、水をはじき、まだ固まっていない漆喰が溶け出さないよう保護するためだと考えられている。


関連項目