テイラー展開

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。F-mikanBot (会話 | 投稿記録) による 2012年5月25日 (金) 21:08個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (ロボットによる: 良質な記事へのリンク en:Taylor series)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

テイラー展開(テイラーてんかい: Taylor expansion)とは、無限回微分可能な関数 f(x) から、テイラー級数(テイラーきゅうすう、Taylor series)と呼ばれる、負冪の項を持たない冪級数を得ることを言う。名称は数学者ブルック・テイラーに由来する。冪級数展開(べききゅうすうてんかい)とも呼ばれる。

実数または複素数関数の f(x) が 1 変数関数の場合には

ここで n! は n階乗で、ƒ(n)(a) は ƒx = a における n 次導関数、ƒ の 0 次導関数は ƒ 自身である。また、(xa)0 と 0! は 1 と定義されている。この冪級数がもとの関数 f(x) に一致するとき、f(x) はテイラー展開可能であるという。

多変数関数の場合にも同様の展開法が考えられ、それもテイラー展開という。

厳密にはこの展開は x = a の近傍でのみ考えるものであり、x = a におけるテイラー展開、またはx = a のまわりでのテイラー展開という。a = 0 のとき

を特にマクローリン展開(マクローリンてんかい: Maclaurin expansion - 名称は数学者コリン・マクローリンに由来する。)と呼ぶ。テイラー展開がある大域的な領域の各点で可能な関数は、その領域において解析的である、またはその領域上の解析関数であるという。

関数が無限回微分可能であっても、テイラー級数が元の関数とすべての x で一致するとは限らない。一致するかどうかは、テイラーの定理における剰余項 Rn が 0 に収束するかどうかによって判定できる;ここで Rn
ある c ∈ (a, x) が存在して、

と書ける。または積分を用いて、次のように表せる;

いくつかの重要な関数のテイラー展開を以下に示す。これらはすべて複素解析的な関数であり、複素変数であると考えても成り立つ。

多項式
多項式をマクローリン展開したものは元の多項式自身である。
指数関数自然対数
幾何級数
二項定理
三角関数
双曲線関数
ランベルトの W 関数

tan(x)、csc(x)、cot(x)、tanh(x) の展開に現われる数 Bkベルヌーイ数である。 二項展開の C(α,n) は二項係数である。sec(x) の展開に現われる Ekオイラー数である。

和算におけるテイラー展開

同時期の鎖国下の日本において、1720年頃に、和算建部賢弘によってテイラー級数が使用されている。建部自身が、何らかの公式であるとは認識していなかっただろうが、正 1024 角形のみを用いた 40 桁程度の円周率を導き出している。実質は の級数に x = 1/2 を代入したものである。

後に松永良弼はこれをさらに 70 桁台まで飛躍させた。実質は sin-1 x の級数に x = 1/2 を代入したもの。

実のところは公式という認識にはいたっていなかっただろうが、和算の功績のひとつである。

分数次のテイラー展開

分数階微積分学の進展にともない「分数次のテイラー展開はどんなものになるのか?」という問が提起され、2007年Odibat と Shawagfehがこの問いに答えを出している。 [1] これによると、分数次のテイラー展開は以下のように書ける。

ここで、

は分数の次数α
へ右側から近づいた時の極限を表す。

脚注

  1. ^ Odibat, ZM., Shawagfeh, NT., 2007. "Generalized Taylor's formula." Applied Mathematics and Computation 186, 286-293.

関連項目

Template:Link GA