ダドリー男爵

ダドリー城跡。

ダドリー男爵は、イングランド王国の百年戦争中に創設されたイングランド貴族の爵位の一つであり、鉄鋼業に関わった氏族。15、16世紀にはノーサンバーランド伯爵、レスター伯爵など政治家を多く輩出した。称号は1440年頃にアイルランド総督のジョン・サットンに授与されたのが始まりで、1757年に一度廃止されたが、1916年に廃止が解除された。

沿革

第5代ダドリー男爵エドワード・サットン。

氏族の名前は公文書では常に「ダドリー」か、「サットンまたはダドリー」と記載されている。代の数は、初代ジョン・サットンより4代前のジョン・サットン2世を初代とする数え方もある。

初代のジョン・サットンは、曽孫にあたるジョン・ダドリーが1550年にテューダー朝のエドワード6世の枢密院の議長、次いで初代ノーサンバランド公爵に叙位され、その息子（初代からみて玄孫）のギルフォード・ダドリーは、のちの1553年7月10日から9日間イングランド女王となったジェーン・グレイと結婚した。これはテューダー朝のなかでもカトリックを信仰するメアリー1世の王位承継を妨げるための計画であったが、メアリーの蜂起により失敗して3名は処刑され、同年には第3代ダドリー男爵ジョン・サットンも没した。

その直後の1556年、第3代の息子で軍人のヘンリー・ダドリーは、メアリー1世をその夫であるフェリペ2世の国スペインに追放し、エリザベス1世を即位させる陰謀を企んだが、計画が発覚しフランスに亡命した。1558年のメアリー1世の崩御ののちエリザベス1世が即位し、ジョン・ダドリーの五男であるロバート・ダドリーはその寵愛を受けて、1564年に初代レスター伯爵に叙位された。

第5代のエドワード・サットンは非摘出子を多く持ち、ダドリー、セジリー、キングスウィンフォードの相当の地所を相続して鉱業を始め、ウスターシャーのペンズネットで製鉄所を経営した。所長でありエドワードの非嫡出子のダッド・ダドリーは1665 年に製鉄法に関する論文（Metallum Martis）を出版したが、地元に紛争が起きて事業は成功せず、イングランド内戦ではチャールズ1世軍の大佐として従軍した。

同じく第5代の非嫡出子のジェーンは、玄孫のエイブラハム・ダービー1世が、イギリスの製鉄を牽引したアイアンマスターの一族の一つであるエイブラハム・ダービー家の祖となった。

一方、第5代には嫡出子男子がいなかったため女孫のフランシス・サットンが爵位を継ぎ、貴金属商ハンブル・ウォード男爵が婿となり、特許状により、ウォーリックシャーのバーミンガムの地所を得た。

イングランドの古い男爵位は議会召集令状によって創設された世襲貴族であるが、継承方法は定められていないため、時のイングランド相続法に従い男子なき場合に女子が継承できる場合があり、第14代も女男爵バーバラ・ハミルトンである。

先祖

ダドリー城跡の要塞。

ダドリー城跡中庭（1990年代）。

• ジョン・サットン2世（1310年 - 1359年） - 1342年の議会に招集され初代のダドリーのサットン男爵となる。スタッフォードシャーのダドリー城に居住
• ジョン・サットン3世（1338年 – c. 1370年）
• ジョン・サットン4世（1361年 - 1396年）
• ジョン・サットン5世（1380年 - 1406年）

ダドリー男爵 （1440年）

• 初代ダドリー男爵ジョン・サットン（1400年 - 1487年） - 外交官、軍人、アイルランド総督
• 第2代ダドリー男爵エドワード・サットン（1459年 - 1532年）
• 第3代ダドリー男爵ジョン・サットン（1495年頃 - 1543年）
• 第4代ダドリー男爵エドワード・サットン（1583年没）
• 第5代ダドリー男爵エドワード・サットン（1567年 - 1643年） - 息子にあたるダッド・ダドリー運営の製鉄所に溶鉱炉5基を設置
• 第6代ダドリー女男爵フランシス・サットン（1611年 - 1697年） - ロンドンの貴金属商のウォード男爵と結婚し、製鉄所の負債を返済
• 第7代ダドリー男爵エドワード・ウォード （1631年 - 1701年） - ダドリー男爵、ウォード男爵の双方を相続
• 第8代ダドリー男爵エドワード・ウォード（1683年 - 1704年）
• 第9代ダドリー男爵エドワード・ウォード（1704年 - 1731年）
• 第10代ダドリー男爵ウィリアム・ウォード（1685年 - 1740年）
• 第11代ダドリー男爵ファーディナンド・ダドリー・リー （1710年 - 1757年） - 死去と同時に称号廃止

（廃止解除後）

• 第12代ダドリー男爵フェルディナンド・ダドリー・ウィリアム・リー・スミス（1872年 - 1936年） - 1916年に称号廃止が解除
• 第13代ダドリー男爵フェルディナンド・ダドリー・ヘンリー・リー・スミス（1910年 - 1972年）
• 第14代ダドリー女男爵バーバラ・ハミルトン（1907年 - 2002年）
• 第15代ダドリー男爵ジム・アンソニー・ヒル・ウォレス（1930年生）
  • 息子にジェレミー・ウィリアム・ギルフォード・ウォレス（1964年生）。

脚注

注釈

出典

関連項目

• ダドリー伯爵
• ノーサンバーランド伯爵
• ノーサンバーランド公爵
• アイアンブリッジ (橋)

参考文献

• Hesilrige, Arthur G. M. (1921). Debrett's Peerage and Titles of courtesy. London: Dean & Son. p. 312. https://archive.org/details/debrettspeeraget00unse/page/312 
• Kidd, Charles, Williamson, David (editors). Debrett's Peerage and Baronetage (1990 edition). New York: St Martin's Press, 1990.
• Grazebrooke, H. S. 'The Barons of Dudley' Staffs. Hist. Coll. IX(2).
• Hemingway, John. An illustrated chronicle of the castle and barony of Dudley. (2006) Friends of Dudley Castle. ISBN 978-0-9553438-0-3
• Wilson, Derek A. The Uncrowned Kings of England: The Black History of the Dudleys and the Tudor Throne. Carroll & Graf, 2005.
• Laigh Rayment's Peerage Page, 2019.